デリーとビリー 会話のすれ違い
息子のビリーと恋人のエリカさんを交えて談笑していた。
何故かビリーの幼馴染であるパメラもずっと居るのだが2人が何も言わないので問題はないのだろう。
エリカさんは話の間も私たちのカップが空になるのを見越してお茶を注いでくれたりと忙しなく動いている。
実によく出来た娘さんだ。
だが、そんな中でビリーは1人浮かない顔をしている。
「ビリーはさっきから顔色が悪いがどうしたんだ?」
「そうよ、せっかくエリカちゃんが挨拶に来てくれたというのに」
私と妻が問いかけるがビリーは
「ああ、すまない」
と答えるばかりで上の空だった。
そんな息子に対して
「ビリーが伝える事が難しいのであれば私から伝えるけど、それでいいの?」
と問いかけていた。
一体なんの話だろうか・・・はっ!?
親に打ち明けられずに悩む息子。
恋人が代わりにその話を打ち明けようとしている状況。
なるほど、分かったぞ息子よ。
確かにそれは話しづらい事であろう。
私たち家族もエリカさんの家族も大騒ぎになること間違いなしだ。
だが、この父親をもっと信じてくれていいんじゃないのか?
わたしはそう思い自分の方からビリーに話を振る事にした。
「ビリー、お前の態度で理解したぞ。
それは話しにくい事だろう」
私がそう言うとビリーは驚いて顔を上げた。
「親父!?分かってくれたのか?」
そんなビリーに対して少しでも安心させてやろうと自信満々に頷いた。
「もちろんだとも。
確かにそれは話しづらい事だろう。
エリカさんのご家族に挨拶に行くにも厳しい状況になるだろうしな」
「そうなんだよ。
親父たちがエリカの家と顔合わせしたらマトモに喋れないだろうしな」
息子よ・・・そんなに父に対して信用がないか?
確かに向こうの家族に申し訳ないと言う気持ちはあるがマトモに喋れないほどに縮こまるとでも?
「ビリー、父を甘く見るんじゃない。
こう見えて父さんは仕事で何度も修羅場を潜り抜けてきた。
しっかりと挨拶してあげるから安心しなさい」
この父が3人の幸せを祈らなくてどうするのだ。
私がそういう思いを込めてビリーに話をすると、息子は心から安堵した表情に変わった。
「いや〜親父がそんなに度胸があるなんて思わなかったから安心したよ。
それに話しづらかったのに気付いてくれたのもありがたかったよ。
公爵令嬢と婚約したなんて親父たちが聞いたら絶対気絶すると思ってたからな」
まったく・・・父を甘く見るんじゃない。
息子が公爵令嬢と婚約したくらいで動じる父では・・・うん?幻聴か?
いま有り得ない言葉が聞こえたような気がしたんだが。
周りを見ると父、母、妻の顔色も変わってきている。
そして全員が自分の耳をポンポンと叩いていた。
私も同じように叩く。
うん、しっかり聞こえる。
聞こえた上でもう一度聞こう。
「こ、こ、こ、公爵令嬢がどうとか聞こえたがき、き、気のせいかな?」
私としては落ち着いて話をしたつもりだった。
しかし、カップを持つ手が震えてカチャカチャと音がしていた。
するとエリカさんはスッと立ち上がりスカートの端を摘んで軽くお辞儀をする。
あれは名前は知らないが貴族の女性がよくやっている挨拶のはずだ。
「ご挨拶が遅れた事申し訳ありません。
私はエリカ・クロード。
この地を治めるクロード公爵の娘ですわ」
今度はエリカさんからはっきりと挨拶をされた。
そうだ・・・息子を修道院に行かせる時の挨拶で聞いた事がある。
こうして多くの子供を預かる事が出来たのも、クロード公爵の娘、エリカ様のお陰なのです。
そのため私たちはエリカ様にもお祈りを捧げているのです・・・と。
そして少し前に入ってきた噂。
クロード公爵の娘が平民と婚約したという話。
あれは我が息子ビリーの事だったのか。
「ハハ、ハハハ、ハハハハ」
私は大声で笑う。
その声に釣られてやけくそになったのか家族も全員大声で笑っていた。
ビリー、エリカさん、パメラも釣られて笑っていた。
「ハハハハハハ!!」
そして私は笑いながら盛大に後ろにひっくり返りながら気絶した。
どうかこれが悪い夢でありますように。
そう思いながら意識を手放したのだが直前に
「お父様ーーー!!」
という叫び声が聞こえたのできっと起きても悪い夢は続くのだろうと言う事は理解していた。
ちなみにデリーは結婚前に妊娠させてしまったと勘違いしていました。
それは親に報告しづらい事ですね。




