ビリー家の事情
私の名はデリー。
エリディス王国クロード公爵の領地に住む一平民だ。
鍛治職人として働いており妻と息子、父と母と三世代で暮らす家を支えている。
幼い頃から私の職場に遊びにきていた影響だろうか?
息子のビリーと幼馴染のパメラは武器に強い興味を惹かれていた。
私としては危険なことはせずに鍛治の技術を引き継いで欲しいところである。
ある日修道院が無料でやっている勉強会の範囲が広がり、我が家も対象となっていた。
妻の勧めもありビリーとパメラを修道院に通わせることにした。
これで勉強してくれれば将来の道も広がることであろう。
兵士などになりたいという事も言わなくなるかもしれない。
そう思っていた私達の期待は裏切られることになる。
まさか修道院で武術も教えていたとは。
この頃からビリーは必死に勉強するようになっていた。
特待生として貴族学校に入れば平民でも騎士の道が拓けるかもしれないと話していた。
そう簡単に上手く事は運ばないだろうが挫折を覚えるなら早い方がいい。
私はそう思いビリーのやることに口を出さなかった。
なんとビリーは特待生として選ばれてしまった。
そしてパメラと修道院の友人2人と共に王都に旅立っていた。
子供の成長は早いというが予想外なスピードである。
偶に来る手紙では貴族の中でも問題なく過ごせているそうだ。
平民だからと馬鹿にされるのではと心配していたが息子は思いの外上手くやっているらしい。
長期の休みに入り戻ってきたビリーだが早々に家を飛び出していった。
何でもクロード公爵家の騎士団で訓練を受けることが許されたらしい。
息子は知らぬ間にどんどん成長していっている。
このままなら本当に騎士になる夢を叶えてしまうかもしれないな。
再び王都に旅立っていった息子を応援することにした。
暫くすると街にある噂が流れていた。
帝国との戦争になる所だったが、クロード公爵の娘であるエリカ様が神様を通じて戦争を回避し聖女の称号を与えられたそうだ。
更にエリカ様をその身を呈して守り続けた平民の男性を認め、神様直々に2人の婚約を認めたそうだ。
何というスケールの大きな話なのだろうか。
どうせなら息子もそれくらいのことをやってほしいものである。
実際にそんなことをされて紹介されたら気絶する自信があるが。
息子がまた長期休みで帰ってきたがすぐに出ていった。
何でも大事な話があるが、その話をするには準備が必要だという。
妻と何の話だろうか?
実は大したことはないのでは無いか?
などと話していると玄関の扉をノックする音が聞こえた。
扉を開くとそこにはパメラと金髪の短く整えられた髪をしている美しい女性がいた。
パメラに話を聞くと、何とこの美しい女性はビリーとお付き合いしている恋人だそうだ。
あいつも隅に置けない奴だ。
いつの間にこんな美人を彼女にしたのだろうか。
女性の名前はエリカと言うらしい。
最近聞いた名前ではあるが、公爵家に習って親がそんな名前を付けてしまったのだろう。
エリカさんはとても気立てが良く気の利く娘であった。
私の父と母とも楽しそうに会話をしており今もパメラを交えて4人で談笑している。
「良い子じゃないか。
まだまだ子供だと思っていたが、あんな娘さんを射止めるなんて息子も成長したもんだ」
「あの娘さんがビリーを支えてくれるなら私達の力はいらないかもしれないわね。
ビリーの人生はあの子のもの、余計な口出しはせずに好きにさせましょう」
そんな事を玄関の前で妻と話しているとまた扉がノックされ、ビリーが帰ってきた。
私達は早速、女性のことを問い詰めると顔色を変えて居間に向かう。
そして4人が談笑している姿を見て膝から崩れ落ちていた。
私は妻と顔を見合わせ首を傾げる。
私の名前はデリー。
エリディス王国のクロード公爵家の領地に住む極、一般的な、どこにでもいる平民だ。
そんな平民が耐えられないビッグニュースを知らされる少し前の出来事であった。




