マルス・ハイド
僕の名前はマルス・ハイド。
エリディス王国4大貴族の一つ、ハイド家の三男に産まれた。
僕は幼い頃から身体が弱くいつも寝たきりの生活をしていた。
そんな僕に家族は優しく接してくれていたが、周りの兄弟達が貴族として華々しくデビューする中で自分だけが置いていかれていくのはとても悔しくて元気になったらあれをやりたい。
これをやりたいと妄想する日々を過ごしていた。
ある日僕は高熱を出してずっとベッドで寝る生活を余儀なくされた。
それまでは寝たきりとはいえ少しは動く事が出来た。
しかし、病で寝込んでからは身体を動かす事も不可能となってしまった。
日毎に弱っていく僕の身体。
ハッキリと近づいてくる死を自覚した。
目を瞑ると早くお迎えが来る気がする。
願うならば美しい女神様に迎えに来て欲しいと思う。
その日も僕は間近に迫った死を感じながらウトウトと寝ていた。
ふと身体に何か触れる感触がして目を開けると、そこには赤い髪の綺麗な女性がいて僕の腕や足をしきりに触っていた。
僕はこの時、女神様が自分を迎えに来たのだと思った。
思わずそう呟くと彼女はそれを否定し、自分を生かすと宣言した。
そんな事が出来るはずないと思ったが、女神様のような彼女がそう言うと何だか信じていい気がしてきた。
彼女はクロード家の侍女頭でモニカ・キャンベルという名前だそうだ。
かつてクロード家のご夫人も僕と同じ症状に見舞われ、回復させた経験があるというので今回父上に頼まれて僕のところに来てくれたらしい。
彼女の施術を受けると確かに身体が少しずつ回復していくのが感じた。
そして、今までは全く食欲が無かったものが段々と欲求が増えており、それに伴って僕の身体が蘇っていく気がした。
僕はモニカさんと過ごす時間が段々と楽しくなっていた。
彼女はとても賢く、真面目で努力家だ。
そしてこんな病弱でまともに動けない僕に真摯に接してくれた。
こんなにも心を奪われたの初めての経験だった。
僕は遂に自力で立つことに成功し歩行訓練に移った。
モニカさんと手を取り合って行う訓練は恥ずかしくもあり、嬉しくもある。
その日も訓練に付き合ってもらい僕はモニカさんに謝罪した。
しかし、彼女は謝罪ではお礼を言った方が良いとアドバイスをくれた上に貴族家としての付き合いを心配してくれた。
その時の僕はモニカさんが好きだという気持ちを知って欲しくて告白しようとしてしまった。
だけど、勢い余ってバランスを崩しモニカさんにの胸に飛び込んでしまった。
僕はものすごく慌ててしまったが、彼女は全く気にした様子はない。
その時に僕は全くそのような対象として見られていないと自覚した。
当然だ・・・こんな公爵家の三男というだけで病弱でまともに動けない男を誰が好きになってくれるというのだろう。
僕はいま彼女におんぶに抱っこ状態で甘えており(実際にお姫様抱っこされているが)彼女に対して何一つとして返せていない状態だ。
目が覚めた僕はまずは元気になることを改めて誓った。
そして、彼女にふさわしい男になるために今まで以上に努力をする決意を固めたのだった。




