ボランティアという依頼2 鷹仁
乗ってきた車に乗り、農道を少し走ると普通の道路に出た。
今日泊まる所を僕は考えていなかった。
困った顔を見られたのか、どうしたか聞いてきたので、素直に泊まる所が無いと告げると、自分の家に泊まらないかという。
食事と寝れる所があれば問題なく了承する。
携帯で連絡を取り始めたのだが、少し揉めてるようだ。大丈夫何だろうか?。
暫くして、推しきるようにして携帯を仕舞うと、僕に「行きましょう」とだけいい、車は再び走り出した。
一抹の不安とは、こういうのを言うのだろう。
着いた家は一軒家だ。普通の。
のはずなのだが、家に入るなり唖然とする。ボロボロなのだ。
いやボコボコという表現があってるな。
壁は穴が開いてるし、床も傷んでいる。
明らかに人為的な圧力がかかっている穴だ。
「まー入ってくれ」と言われれば入るしかないだろう。
キッチンにテーブルがあり、作られたのか食べ掛けのような食事は見事ひっくり返っていて、壁にまで汚れが飛び散ってる始末であった。
その隅に項垂れるようにしゃがんでた女性が「おかえりなさい。あの子ならさっき出掛けてしまいました。食事は冷蔵庫にありますから。ごゆっくり」というと立ち上がり「先に寝かせていただきます」と横を通りすぎる。
擦り傷のある手や、腫れた顔、困憊疲労とはこういう女性を差すのだろうか。
咄嗟に僕は、薬アイテムであるポーションとMpポーションそれに精神安定剤を取り出すと、思いっきり優しくぶっかけた。そして女性は倒れかけた。
気を失ってしまった女性を抱え、男性に渡す。「多分大丈夫ですので寝かしてやってください」と。
頷く男性が、二階へと消えていった。
僕は、倒れていた椅子を立てかけると、座り家全体をイメージすると必要な材料を浮かべ一気に加工する。汚れやごみは回収する。
正直こんなボコボコの家では落ち着かないし、一泊の恩だっけ?まあ人の家の冷蔵庫勝手に開けたくもないが、お腹減ったと思いっきり開けてみた。
おっきなエビフライに烏賊素麺、透明感あるやつ、他にもサラダや煮物があり、適当に出した。レンジで温めてると二階からキョロキョロしながら降りてきたので「先食べますよ」といい頂きますした。
「君は、何者なんだい?」「ただの高校生ですよ」
「そんなはずは」「ありませんよね。でもですよ。僕も説明できないんですよ」事実だ。ことの成り行きは出来てもそこに説明は出来ない。
「僕の、今回僕への依頼は何だったのですか?牧場の再建であってますよね。それ以上お望みですか?」「いや、しかしいやー」
「ん?」「混乱して」
「ご飯食べませんか。それからにしますか?」「そうしよう」
静かな食事を終えた。
「まずは、家を直してくれてありがとう」「一宿一飯でしたっけ」
「これはもう一飯千金と言った方がいいかな」「いっぱんせんきん、ですかそんな言葉があるんですね」
「う、うん」「家の事は良いですよ。依頼の事に移っても良いですか?」
「あっあーそうしよう」「では、此方をお読みください」ドサッと本のようなものを出す。
それには、牧場の使用方法が書いてある。
何処からか牛や羊、鶏を入れ飼育方法の全てと牛乳や卵、羽毛や羊毛の出し方など。
繁殖方法も書かれており、最悪放置しても問題ないことがかかれている。
しかし、放置より操作した方が断然良いものが出来ることも。
さらに、牧場内で畑も出来ることが書いてある。
牧草を育てるもよし、飼い葉でエサをまかない、牧場を畑に使ってもよし。
ただし、放し飼いと同じ空間で作るから、作物が家畜の被害に会う可能性は非常に高い。
それは、使う人の自由となる。
「これって、牧場を物語るゲームのようですが」「そのように作りました」
「それに」「秘密も多いですよ。人や物を疎外させるバリア、牛乳や卵、野菜を時間無効に出来る保存場所等ありますから」
「こんな、非常識な」「やるかやめるか、朝までに決めてください。寝て良いですか?」
「あーうん。こっちの部屋を、布団ひいてないな」「自前のがありますから。お休みなさい」僕は寝た。
日が替わり少したったころ、物音で目を覚ます。
廊下に出ると、1人の男の子がいた。僕と同じくらいの年齢だろう。
僕を見るなりビクッとしたが直ぐに立ち直る。
素早く僕と相手の男の子をバリアで包む。
「誰だ」「誰でも良いじゃん」
「ふざけるなここは」「俺の家だから壊して良いのか?」
「そっそれは、てっテメー」僕に殴りかかってくるので、暫く傍観する。
結局僕に殴るような事はせず、壁に殴りかけた。が、バリアで壁に届かない。
唖然と立ち尽くすので「何で暴れるようになった?」と聞いてみた。
沈黙の後「変な洞窟が近くに出来てな、俺が近付くと入るか?みたいに文字で聞いてくるんだ。しかし、俺にしか見えないのか周りが俺を馬鹿にして、クソ」。
大体わかった。
じゃ、その洞窟を見に行こう。というと恐いから嫌と言った。
ほっとけば。というと魔物が溢れたらどうするんだと言う。
どうしたい。というと俺が責任もって攻略するのだと言う。
中に入ってみたのか。というと1人じゃ、入れないと言う。
埒があかないとは、この事だ。
どうすれば、洞窟探検してくれるのかと聞いてみたところ、シルバーアーマーにソードをくれれば、何て言う。行く気無いだろ。
と言うわけで、加工で作ったよ。
装備させたら、ソードは投げ捨てるはシルバーアーマーは脱ごうとするは、挙げ句バリアをソードで斬り逃げようとする。
面倒になったので、そのままずりずりと外に出し、洞窟まで案内させた。最初は嘘付くから着くまでそこそこ時間喰った。
引きずるように洞窟へ入る。
「ここは!ゲームのダンジョンのようだ」「ゲームでなくリアルのダンジョンな。奥には魔物もいて、倒せばアイテムが出る」
「またまたー」「なに言っても無駄だよね。奥行くよ」
「ほら、雀じゃん。魔物なんていないじゃん。人懐っこいな」「人懐っこいなじゃなく、つつくという攻撃受けてるんだけど」
「痛くも痒くもない」「それは、装備が効果を出してるにすぎない。装備を取ると」
「ギャー手が」「陥没したね。はいポーション」
「つっ手の痛みが、治っていく」「装備の大事さと、相手が魔物だってわかった?」
「うんうん。本当にゲームみたいだ」「そうだね。リアルだけどね。じゃ、全て廻りますか。ちゃんと着いてきてね」
「マジ」「マジ、あーこれプレゼント。使い方はそのうちわかるでしょう」
加工能力付き収納ボックス、銅板造りバージョン使用人指定品をあげる。
ダンジョンを全て廻り、外に出ると少し明るかった。
「お父さん!!」「あっぶっ無事か」どうやら息子が心配で後を付けてきたようだ。
急に現れた僕達に近付こうとした瞬間、複数の車に囲まれ、「公安だ。ご同行願おう」。
ドナドナされる僕達。
僕は、簡単な説明を求められただけだ。
報酬は後で払うと言われたので、朝食を取り仮眠した後、飛行機に乗っている。
その後の家族が、牧場がどうなったかは知らない。
ただ、定期的に僕のマンションに肉や卵が届くようになった。