薬ダンジョン 鷹仁
学校帰りに、正体の知れない組織の依頼をこなし、ダンジョンに潜り、畑の様子を見てから家に帰る。
少なくとも、高校生が行う事ではない。
学校が会社に変わったとしても、大人の出来ることでもない。
それが、昨日僕がしたことで今日もそうしようとしている。
つまり、日課になりそう・・・なるだろうな。
そう思いながら学校に向かっていた。
そして何ごともなく放課後を迎えると、部活に急ぐ生徒の中、帰路に着く僕がいる。
学校を出ると、帰路とは反対方向に進んでいき、依頼の中でも困難でめんどくさく人気のないドブ掃除を中心に、5つ依頼をこなすとダンジョンのある神社に向かう。
神社の近くまで来たが、神社による前に畑の様子を見にいくことにした。
照りつける太陽の下で、畑作業をする人が居ないのだろう、誰も居ない市民農園の中を親が借りた場所まで行く。
太陽の日差しが強いのか、気温が高いのか、畑の土は表面がひび割れのようになり乾燥していた。
表面は乾燥しているものの、土の保水力というものは優秀なのか、土の中はしっとりとしている。
僕は、今一度周りに人が居ないか確かめると、収納から水のアイテムを10個取り出すと同時に、水のアイテムに衝撃を与えた。
衝撃を受けた水のアイテムは形を崩し、アイテムとしての力を失うと畑の土の上に落ちる。
時間にして、1秒といったところか、水やり終了である。
他から見てみよう。
なにもない空間に、水の固まりが10個ほど現れて、落ちた。
便利だと思われるだろう。
ひび割れた土の表面を伝って、みるみると水が土に吸い込まれていった。
その様子を見ていたが、視線に気づき目線を上げると神社の脇で稲荷の神様がこちらを見ていた。
畑を離れ、神様に近づいていく。
神様は一瞬僕から目をそらし、慣れなそうな言葉使いこう言った。「この前は、ありがとう」
「えっと、写真撮ったことですか?」
「そっちじゃない!ポーションよポーション。あれ、高いものらしいから喜んでたよ。そのお礼に薬ダンジョンを教えるはずだったじゃない。それを誰かが余計なことするから、忘れちゃったじゃない」
「寝ぼけて・・・」
「うっ、うるさい。行くわよ!」そう言うと僕の袖を引っ張って神社の外に引っ張り出すのであった。
神社の外に出ると、大きな鎌を持った人とすれ違う。
よく見ると僕にレベルとスキルを強制的に教えてくれた死神だったので、声をかけてみる。
「こんにちは」
死神は自分に声をかけられたとは思わないので、返事が返ってこない。
「こんにちは、死神さん」
ようやく、声をかけられたことに気づき振り向く死神。
「こっこんにちは。元気してる?」死神とは思えないような返答である。
「えー。お陰さまで、変に元気です」
「いっいいことだと思うよ。ちょっと先急いでいるから」そう言うと死神は、スコスコと何処かに行ってしまった。
忙しそうに見えない死神を見送り、僕は稲荷の神様の後を追っていった。
商店街に入り、しばらくすると足を止める神様が指差した先はビルの一角でテナント募集の張り紙がある。
「この中に有るんですか?」
「そうよ。正確には2階だけどね。ちょっと動かないでね」
そう言うと、神様は僕の額に手をかざして目をつぶる。
僕も、目をつぶると映像が浮かび上がってきた。
僕と神様がいる映像の様だ。
頭の上から写されているその映像は、少しずつづれていきテナントの1階に入っていく。
ゆっくりと進んでいくと、正面扉から部屋全体を見渡せる映像に切り替わり、何も置かれていない部屋の左奥側に階段があり2階に上がれるようになっていた。
2階に上がると部屋全体が見えるように映像が切り替わる。
階段を上った先は2階の部屋の四隅の1つで1階の正面扉から左隅の真上にあたる。
そして、ダンジョンの入り口が、階段を上った反対側の隅にあった。
そこで、映像が途切れる。
「今のは?」
「いわゆる、神力通と言われるものよ。確かに場所は教えたわよ。では帰るね」そう言うと、神様は塵のようになって消えていった。
その光景に見とれていると、ドンと何かが僕にぶつかってきた。
ふと、我に返った僕が振り向くと商店街に買い物に来ていたオバチャンが、声をかけてくる。
「あら、ごめんなさい。大丈夫?いるの気付かなかったわ」
「大丈夫です。ボーッとしててすみません」と挨拶して頭を下げる。
通り過ぎていくオバチャンを見送り、テナント募集の張り紙を見て不動産屋とその事務所を確認する。
時間を確認すると、夕方4時になろうとしていた。
不動産屋が、何時まで開いているかわからないが、取り合えず遠くでもなさそうなので向かってみる。
不動産屋についた僕は、中に入る。
1人の女性定員が声をかけてきた。
「いらっしゃいませ。どういった要件でしょう?」
「あっはい。テナントを借りたくて」
「テナントですか?アパート等の部屋では?」
「いえ、テナントです。商店街の所にある」
「そうですか。私の担当ではないので、ちょっと待って下さいね」
そう言うと、店の奥に行き男性定員と話をして、今度は男性定員が此方に向かってきた。
「お客様は未成年でいらっしゃいますか?失礼ながらおいくつでしょうか?」
「17ですが」
「そうなると、親などの承認が必要です。さらに、保証人として誰かつけてほしいのですが?」
「保証人ですか?後、親には内緒にしていただけると嬉しいのですが」
「テナントを貸すにも色々とあり、法的にも条件みたいのがあるのでして」
「これで、何とかなりませんか?」そう言って僕は白色のカードを提出した。
ギルドカードともダンジョンライセンスとも言われる最高峰の身分証明書を出した。
男性定員が手にとって見てみたいと言うので、OK サインをだ出して見てもらう。
「このカードは何でしょう?まず、名前しか書いてありませんよね。さらに、口座のような番号裏面には何も書いていませんね。これでは、どうしようもないですよ」
「ですよね」と言って僕は笑ってしまう。
実際問題、このカードで世界が僕に融通を利かせてくれるなんて思えないからである。
そう思っているともう1人の男性が近づいてきて、「そのカード見せてくれ」と言った。
「社長、どうぞ」と言って社長と呼んだ男性に渡す。
社長さんは、まじまじとカードを見ると、時計を見てこう聞いてきた。
「時間は大丈夫です?」と。
僕は「後、1時間位なら。6時には家に帰りたいので」
「そうか」と一言呟くと、財布を取り出しお金を出すと、女性定員に近くの洋菓子屋で適当に見繕って買ってきてほしいと頼む。
女性定員が首をかしげながら風に外へ出ていくのを見て、「此処ではナンでしょうから奥へ案内します」と言い、奥の接客間に案内された。
接客間は小綺麗にされていて、先程の書類の山にか困れた事務所とは大違いだ。
上座に案内された僕が椅子に座ると、正面の椅子に座る社長。
「お菓子が来るまで雑談でも宜しいでしょうか?」と聞いてくる社長。
何だか僕が偉くなったのではと勘違いしてしまいそうだ。
社長は、財布を出すと其処から黒いカードを出して、差し出してくる。
紛れもなくライセンスカードである。
「私もダンジョンには挑戦した事がありましたが、完敗でした。1階も突破できず黒いままです」
「それで、先程カードをじっくりとみていたんですね」
「失礼しました」
「止めてください。僕はただの高校生ですよ」
そうしているうちに、お菓子が差しのべられた。
社長さんは、虫の階層にきて、逃げて帰ったらしい。
それさえなければ、もっとランクが上がってたのではと思う。
お菓子を食べ終わると、社長がこんなことを言ってきた。
「お金さえもらえれば、私どもで扱ってるものでしたら、此方で全て処理しますよ」そう言ってきた。
かくして、テナンゴごと手にいれたダンジョンをどの様に扱うか、またしても悩みごとが増える僕であった。




