番外編 僕らが山デビューしそうになったけど白紙になった件について!
8月11日は山の日! というわけで、番外編です!
今回は山に行く話ではありません!
その前日に起きたエピソードです!
8月上旬のある祝日の前日。
僕、アイリさん、委員長、結衣さん、茜は補習の合間の時間で昼休憩をしている。
「ねーねー、一輝くんこの映画とかいいんじゃないかな?」
「あー確かにこっちも面白そうだね」
「ほーこういうのもあるのデスネ……」
「えへえへへ……じゅるり……」
「…………」
僕と茜は今度のデートの行く場所を決めながら、アイリさんは何かの雑誌を見ながら、委員長は変な動画を見ながら、そして結衣さんはいつも通り寝ている。
「んーこの映画も捨てがたい……」
「こういう青春系のもいいんじゃ……」
茜とデートプランを考えるのはとても楽しい。
こういうのが、良いんですよねカップルって。
和んでいるといきなりアイリさんが机を叩く。
「あの! 一輝サン!」
全員がビクッとなり、一気にアイリさんに視線が集まる。
「び、びっくりさせないでください!」
「そ、それはスミマセン……そんなことより明日の祝日、どこかの山に行きまショウ!」
アイリさんが唐突に提案してくる。
「山……ですか?」
「はい! 山デス! 山は良いデスヨ! 自然もいっぱいあるし!」
笑顔で手を大きく広げ広大な自然を表現するアイリさん。だが……
「そりゃあ山ですからね」
自然がいっぱいだということは当たり前だ。
ほんとにバカですね……
「まぁまてまて、フォルク、なんで山なんだ?」
「そ、それはなんとなくデス!」
動揺して立ったアイリさんから雑誌が落ちる。
「あ」
「えっと……どれどれ……?」
開いてあるページを覗くと、山ガール特集だった。
何をいきなり唐突に言い出すのかと思えば、なるほどそう言うことですか……
「山ガール……?」
「フォルクがか?」
「イエス!」
みんな、キョトンとした顔でアイリさんを見る。
何故かドヤ顔のアイリさん。
いや、もうほんとになんでドヤ顔なんでしょうか?
「一輝くん! 次の祝日は二人でデートって言ってたよね!」
「う、うん。わかってるよ」
「ならいいけど」
「私も研究があるからなぁ」
委員長の研究とか……絶対に聞いてはいけないものなんでしょうけどね。
「結衣さんも多分めんどくさいとか言うと思いますよ? 暑いの嫌だとか」
「むむむ……」
四対一でアイリさんが不利だ。
まぁそもそも暑いし行きたくないんですけどね……
「そんじゃあこの話は終わりだな」
委員長は動画の続きを見始める。
「うんうん。で一輝くんどの映画見る?」
「んーたまにはこういうマスコットキャラとかが主役のやつでも……」
僕達もデートプランを考える。
「むむむ……」
不満そうなアイリさん。
だがいつものように駄々をこねて泣いたりはしないようだ。
「茜サン! ちょっといいデスカ!」
「もう何? 今いそがしいの」
「すぐ終わりますからほんの少しだけデス!」
「わーもうわかったから引っ張らないで……」
茜を引っ張り連れて行くアイリさん。
今度は何やら一人ずつ説得していくようだ。
自分達以外は聞こえないようにヒソヒソと話をしている。
まぁ茜が僕とのデートよりも山に行くことを優先するなんてありえないんですけどね。
僕はコンビニで買った紙パックのレモンティーをすする。
「……決めた! 私山に行くわ!」
「ぶっ!」
僕は驚きのあまり噴き出してしまう。
「あ、茜!? デートは!?」
「それは今度! 今は山のほうが大事!」
「き、急すぎない!?」
「……一輝くんは私と行くの嫌?」
上目遣いでそう言う茜は、僕にとってはおねだりする娘の眼差しのようなものだ。
さ、逆らえるわけがないじゃないですか……可愛すぎて……
「わ、わかったけど、委員長は行かないんじゃない?」
「柊何をバカなことを言っている! 私も行くぞ!」
どうやら委員長も説得されたようだ。
「き、急ですね……で、でも結衣さんは絶対……」
「私も行こうかな」
「そ、そうですか……」
結局反対派が僕一人になってしまった。(行くのは決定済み)
「てか結衣さんいつ起きたんですか」
「今、アイちゃんに起こされた……だからもう寝るね……ふわぁ」
「お、おやすみなさい」
結衣さんもうすぐ補習なんですけど……
「とにかく一輝くん行くからね!」
「そうだ! 柊! 準備しとけよ!」
どこか目がマジな茜と、委員長。
なんかすごく怖いんですけど……
「まぁこれで私の勝利が確定しましたデス! ふふふ! 明日は山デス! ふふふ!」
大はしゃぎしているアイリさん。
遠足前日の幼稚園児のようだ。
だが、アイリさんは肝心なことを忘れているようだ。
「アイリさん」
「ふふふ! どうしましたデスカ?」
「次の時間の補習落ちたら、アイリさんと結衣さんは明日も学校ですよ?」
「ヘ?」
「生徒手帳に載ってますよ?」
「へ? へ?」
「やっぱり分かってなかったんですね……いいですか? よく聞いといてくださいよ?」
「は、ハイ」
そこで僕は長々とした補習、主にこの学校の制度について話をする。
この私立城ヶ崎高校の補習はテストがある。
そのテストの点数が半分以下の場合、特別指導室行きで、体育のゴリラ先生こと、山下先生に監視をされながら毎日補習を受けることになる。
そして、補習が終わった後に、補習を受けた生徒は、他の高校生の二倍ほどの宿題を出されるというこの鬼畜な2つ。
まぁ流石は進学校って感じですよね。
「だからまぁ、テスト頑張ってくださいね」
ウインクをして、アイリさんを応援する。
「う、嘘ですよね……」
あ、語尾が片言じゃなくなるほど、驚いていますね。
そしてそうこう説明している内に校舎中にチャイムが響き渡る。
補習が始まる時間だ。
ちなみに、僕と茜は結衣さんの付き添い。
そして委員長はアイリさんの付き添いで来ただけである。
「とりあえず、結衣さんとアイリさん。テスト頑張ってきてくださいね」
「い、イヤデス——!!」
山下先生に担がれて連れて行かれる結衣さんとアイリさん。
まぁ結衣さんは受かるんでしょうけどね。
この後、1時間ほどしてから、補習の終了のチャイムが鳴り、補修の教室を見に行くと、魂の抜けたアイリさんが座っていた。
「まぁ案の定ですよね……」
「だな」
「うん」
これは後日談になるのだが、アイリさんのテストは15点で、結局山に行くというのは白紙になり、それどころか夏休み明けまで補習は続いたそうだ。
ま、やっぱりそうなりますよね。
ちなみに結衣さんは98点だったそうだ。
〜説得方法〜
「茜はどうやって説得されたの?」
「汗だくになった私を見て、一輝くんが欲情してくれるって……」
「……僕そこまで性欲持て余してないよ?」
***
「委員長は?」
「熊が出るから、調教し放題だと聞いてな!」
「やっぱブレないですね委員長」
***
「結衣さんは?」
「私は別に山好きだから……」
「へー意外ですね」
「まぁ、登るのめんどくさいし、いつもロープウェイだけど」
「それ山好きって言えないと思います」
結論としては、茜は変態、委員長は馬鹿、結衣さんは天然ってところでしょうか?
とまぁとりあえず、ここまでお読みいただきありがとうございました!




