第九話「初めての依頼」
俺たちに話しかけてきた男性。
黒髪で身長が高くて少しゴツイ、少し年もいってるいかにも冒険者らしき人間だ。
「何か用か?」
俺はすかさず要件を聞いてみる。
「いや、手が空いてそうだから手伝ってもらいたいなあと思って」
「何を?」
「依頼をかな。勿論、タダでとは言わない、報酬は山分けにするよ」
「ほお。どうする安奈?」
一応、安奈にも了承するかどうか聞いてみる。
「私は賛成よ。この人がいれば多少難しい依頼でもこなせるかもしれない」
「俺も賛成だ」
「僕ももちろん賛成だよ」
満場一致だな。
「ということでオッサン。よろしくな!」
「助かるよ。早速依頼を受けようか」
ということで本来ならどこかで働くはずだった俺たちは予定を変更して依頼を受けることになった。
「どの依頼がいいかな」
「君たちは依頼の経験は?」
「特にないな」
「ならこれから始めるのがいいかな」
オッサンが提案した依頼。
それはゴブリン討伐という依頼だった。
ゴブリンかあ。俺も男である以上、戦うが手強そうだな。
「厳しそうならヒールだけしてくれたらいいよ。むしろ僕はそれ目当てで君たちを誘ったといっても過言ではない」
正直に言ってくれるね。
俺は要らないってか?
「オッサン、ヒールどころかもっといい人材がここにいるぜ!」
「いい人材?」
「おうよ。俺にかかればゴブリンなんて一瞬で消し飛ぶね」
「それは頼もしいな」
「消し飛ぶのは海斗のほうでは?」
フィルが余計な口を挟んできたが、ここは大人の対応で無視しとく。
なあに。ゴブリン倒しに貢献すればフィルも偉い口叩けなくなるさ。
――
ガクガクブルブル。
「すごいね君。ただのヒーラーかと思っていたよ」
「いいえ、マグレですよお」
「マグレであそこまで出来ないって」
ガクガクブルブル。
「ところで君の仲間が震えてるけどどうしたんだ?」
「さあ、何ででしょう?」
このオッサンはいいとして。
安奈だ。安奈。
俺たちはゴブリン討伐に出発したわけだが、俺は油断していた。
俺はゴブリンを倒そうと突撃したわけだが、思ったよりゴブリンの動きが素早く俺が攻撃を仕掛ける前にゴブリンの一撃を食らってしまった。
何とか安奈のヒールで一命を取り留めたものの、死にそうな一撃を食らったんだ。そりゃ怖くもなる。
なのに、安奈は……。
「さすが安奈様、剣士である海斗より剣士らしい腕さばきでした。それといい海斗は……」
これはフィルに蔑まれても何とも言えない。
いや、そもそも初見であんなにゴブリンを滅多打ち出来る安奈が恐ろしいのだ。
バケモンとしか言い様がない。
「さあて、約束どおり報酬の山分けだ」
「有難うございます」
「君の名前は何て言うんだ?」
「安奈って言います。こっちは海斗」
「安奈と海斗か。これを言っていいのかどうか悩むんだが」
「どうされました?」
「僕も君たちのパーティに入れて欲しいと思ってね」
「それなら勿論、歓迎します。ね、海斗」
「…………あ? ああ」
やばい。話が頭に入ってこない。
そんなことよりもこれからだ。
ゴブリンはモンスターの中でも弱い部類に入る。
それに怖気づいちまった俺にこれから先依頼をぐにょにょにょにょ。
「海斗と言ったっけか? 本当に大丈夫か?」
「多分、大丈夫でしょう」
「安奈がそう言うなら大丈夫かもしれんが」
今日の夜は寝付けなかった。