第二十話「イライア」
俺の目の前には吊るし上げられていたやつの姿があった。
さあ、尋問タイムだ。
「罠にかかった気分はどうだね。お馬鹿さん」
「…………」
「戦意喪失しているようだね。お馬鹿さん」
「…………」
「ほら、その縄から出れるなら出てみろよ。お馬鹿さん」
「…………」
「何か言いなよ。お馬鹿」
「何か海斗のほうが馬鹿に見える不思議」
「フィル。やんのかてめえ」
「こっちのセリフだ。お馬鹿さん」
「このやろお!」
「もう二人共やめてよ! また喧嘩して!」
茶番はここまでにしておいて。
「さて、俺の命を付け狙っておいて何も言うことがないわけじゃあないよなあ」
「どの道、僕はここで始末されるのだろう。話す義理はない」
「そうだな。じゃあここで死んでもらうか」
俺は鞘から剣を抜く。
「来世ではもっとましな人生を歩むんだな。あばよ」
「待って海斗」
安奈が今にもやつに斬りかかる俺を呼び止める。
「何だよ安奈」
「彼からちゃんとした話を聞いていないわ」
「でもこいつは話す気が」
「ねえ、貴方」
無視しやがるし、まあいい。
最後くらい何か話をさせてやってもいいさ。
「…………」
「魔王のことで海斗の命を狙ったのかしら?」
「…………」
「あのね。私は貴方に私たちの味方になって欲しいと思ってるの」
な!?
「安奈。いくらなんでも」
「僕のほうからも意見申し上げます。こやつを仲間にするのは」
「私はこの人に話を聞いてるの。貴方たちは黙ってて」
威圧されてしまった。
しかし、そんなことでこいつが仲間になるなんて。
「この世界は腐ってる」
やつは語りだした。
この世界は腐ってる。
この世界を成敗するために魔王を呼び覚ます必要があると。
そのために今までの人生をかけてきたことなど。
「そう。辛い思いをしたのね」
「…………」
「そうだ。この世界が腐ってると思うなら私たちで変えればいいじゃない」
「え?」
本当にえ? だ。安奈から出てくる言葉は突拍子の無さ過ぎるものだった。
「私たちは貴方に協力する。その代わりお願いがあるの」
「……何だ?」
「私と海斗がこの世界から出られる手伝いをして欲しいの」
遂に安奈はタラクスにも言ってない。俺たちのことまで話しだした。
「分かった。協力してもいいよ。ここで抵抗しても無意味だろうしね」
「本当? ありがとう!」
おや? 話が思ったより好転してる。
安奈の話術の賜物か。
しかしこいつもちょろいな。
まあ好都合だからいいが。
「貴方名前は?」
「イライア。イライア・テルツ」
こうして俺たちのパーティに新しくイライアが加わった。




