第十四話「突然の美男子」
「タラクスさん。お願いです。俺を稽古してください」
「お、君からその言葉を聞くとはね」
俺はタラクスに頭を下げて、特訓を願い出ていた。
強くなりたい。その一心で俺はタラクスに稽古をお願いしたのだ。
「貴方を本気で超えたい」
「俺の稽古は厳しいぞ? それでもいいか?」
「はい!」
こうして俺とタラクスの本格的な特訓が始まった。
「まずは基礎体力からだ。お前の動きを見てるとそれすらないのが分かる」
随分と心に刺さることを言いますねこの人は。
「それで何をすればいいでしょうか?」
「街の外を一周だ」
「ええええ!?」
「文句を言ってると強くならないぞ! 走る!」
頼んだとはいえ、いきなり厳しすぎるぞ。
まあ文句は言ってられないな。
強くならなきゃ!
――安奈視点。
タラクスと海斗は走りに言っちゃった。
私とフィルは暇なので街の中をのんびり散歩する。
目の前に図書館を見つけたので暇つぶしに中に入ることにする。
興味深い本が無いか探してみること数分、すぐに目が惹かれるものを見つけた。
その本のタイトルは「魔王はいるかいないか」
早速、その本のページをめくってみる。
その本にはこう書かれていた。
カトレア歴1516年。魔王は存在しており、人類は魔王の恐怖に怯えていた。
だが、人類もやられっぱなしではなく、英雄を募り、魔王に対抗していた。
しかし、魔王の力は圧倒的で人類は窮地に立たされることになる。
そんな中、人類の中に救世主と呼ばれる人たちが現れる。
だけど、救世主と呼ばれる人たちでも魔王の力には歯が立たなかったらしく、人類は最終手段を用いることになった。
救世主の中に封印術師がいて、その術師に魔王を封印してもらったらしいのだ。
それで世界は安穏になった。
ここまで書かれといてあれだけど、この情報は信憑性があるかは分からないらしい。
何せ大昔の話だから。
だから今でも魔王はいるかどうか物議が醸されてるらしい。
だけど、魔王はいるのよねえ。
だってあの渋い声は魔王を倒さないとこの世界からは出られないと言うし。
魔王を倒すには封印を解いて魔王を復活させてえいやこらってのが寸法だろうけど。
でも私たちに魔王が倒せるのかしら?
正直、今の私たちの実力で魔王が倒せる気がしない。
だって人類が手こずってやっと封印にまで持ち込んだ相手だよ?
無理があるって。
でもやるしかないのかなあ。
「そこのお嬢さん」
呼ばれたので振り返る。
「……かっこいい」
思わず声が漏れてしまった。
目の前にはアニメや漫画に出てもおかしくないほどの美男子がいたのだ。
「何の本をお読みかな」
「こ、これですか? 魔王についてのことが書かれている本です」
「おや、魔王について調べるなんて、博学な方だ」
「いや、それほどでも」
「お連れさんはどうしました?」
「お連れさん?」
「前々から貴方のことが気になっていました。美しい方だなあって」
「やだ。恥ずかしい」
「それでお連れの方もいるのが見られたのでどうしたのかなと」
「私の仲間なら、今、用事があって出ておられますね」
「そうですかあ」
「グルルルル」
フィルが威嚇し始めた。
「おや、可愛い猫ですね」
「グルルルル」
「どうしたのフィル? グルルルルじゃなくて挨拶でしょ」
「安奈様、こいつは怪しい匂いがします」
「こらっ! フィルったら!」
「おや、お邪魔でしたね。それでは私はこれで失礼します」
「あっ」
白馬の王子様が行ってしまわれた。
「フィル。こおらあああああ!」
「痛いです安奈様。グリグリはおやめくださいいい!」
いづれ彼にまた会えるかしら。




