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俺は魔王じゃねえ! ~転生董卓の悪名返上記~  作者: 青雲あゆむ


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1/3

1.なんで董卓なんだ!

久しぶりの新連載です。

「フゴゴゴゴ、フゴ……ンガッ」


 いい気持ちで寝てたら、痛みで目が覚めた。

 恥ずかしながら、ベッドから落ちてしまったらしい。


「あれ、どこだよ、ここ?」


 しかしそこは自分の部屋ではなかった。

 暗くてよく見えないが、明らかに別の場所だ。

 なんか変な臭いがするし、ベッドも粗末なものである。


 しばし呆然としていると、明かりを持った人間が現れた。


「董卓さま、いかがされましたか?」


 はあ、董卓?

 それって、三国志随一の悪役のことか?

 そう思った瞬間、きつい頭痛に襲われた。


「ウグッ、あいたたた」

「だ、大丈夫ですか?」


 しばし苦しんだものの、やがてそれは収まった。

 そして不思議なことに、今の状況が把握できていた。


 思ったとおり、俺は後漢末期の奸雄 董卓になっていた。

 え、何を言ってるのか分からないって?

 俺にだって分からねえよ!


 現代日本のサラリーマンだった俺が董卓とか、なんの冗談だ!

 これじゃあまるで、ラノベの世界じゃねえか!

 そんな思いが、俺の中を駆け巡る。


 しかしいくら怒っても、事態が好転する気配はない。

 今の状況が夢や幻覚である可能性も、まずないだろう。

 ここでようやく、心配そうに俺をうかがっている人間がいることに気づき、適当にごまかした。


「ゴホン……ちょっと頭痛がしたが、もう治まった。また寝直すとしよう」

「本当に大丈夫でございますか?」

「ああ、問題ない」


 現代のものに比べて固く粗末なベッドに戻ると、俺は目をつむった。

 するとお付きの者も引き下がり、静寂が訪れる。

 そこで冷静になって考えを整理してみた。


 俺の名は董卓とうたく 仲潁ちゅうえい

 三国志の中で後漢王朝を牛耳り、非道の限りを尽くす極悪人だ。

 こいつのおかげで後漢王朝は混乱し、やがて反乱を起こされて長安へ逃げるも、腹心の呂布に殺されるって結末だな。


 しかしちょっと待ってほしい。

 董卓は本当にそんなに悪かったのか?

 え、何? そんなの常識だって?


 いやいやいや。

 もっと客観的に三国志を見直してほしい。

 まず董卓のやったことは、この時代では大して珍しくもないし、それなりに理由もあるんだ。

 それをなんでもかんでも極悪非道、残虐無比の魔王みたいに言うのは、公平じゃないだろう。


 なんなら、ここでちょっと、董卓おれの悪行について反論させてもらおう。


・時の皇帝 劉弁を廃位し、劉協を擁立した

→何皇太后ら外戚が後ろ盾になる劉弁が邪魔だった

 時の権力者が皇帝の首をすげ替えるなんて、別に珍しくもない


・何皇太后を幽閉し、自殺に追いやった

→政権を安定させるのに邪魔だったから、排除した


・剣を外していなかった役人を撲殺した

→俺の前に帯剣して出てくる奴が悪い。暗殺かと思うじゃねえか


・洛陽の富豪を襲って金品を強奪した

→軍兵を養うには、富裕層から奪うのが手っ取り早かった

 そもそも国庫に金が無いのが悪い


・村祭りに参加していた農民を皆殺しにした

→反董卓連合の蜂起後に集会やってりゃ、反乱と疑われても仕方ない

 そもそも勝手な民間祭祀は法で禁止されている


・董卓の蛮兵が毎夜のごとく暴れ、婦女に乱暴した

→配下にいる兵士の不満を解消させるため、やむを得なかった

 戦時においては特別な話でもない


・長安に遷都し、洛陽に火を放って廃墟にした

→洛陽は守りにくく、反乱軍に利用されると面倒だから破壊した

 そもそも反逆者どもが攻めてくるのが悪い


・前皇帝の劉弁を毒殺した

→反逆者どもが担ぎ上げる可能性があったので、後顧の憂いを断った


・歴代皇帝や公卿の墓を暴いて財宝を奪った

→墓荒らしなんて、この時代の常識

 そもそも国庫に金の無いのが悪い



 こうやって見ると、たしかにろくでもないことをしてる。

 だけどそれは、現代感覚で見ての話だ。

 当時の感覚で言えば、それなりに理由はあるし、もっとひどいことした奴らだって多くいる。


 その一方で、董卓は人事を刷新し、政治を改革しようとした形跡もあるんだ。

 袁家を始めとする名士層に敬意を払い、名のある者たちを重職に就け、人事を刷新した。

 例えば周毖しゅうひ許靖きょせいらの推薦を受けて、韓馥かんふく孔伷こうちゅう劉岱りゅうたい張邈ちょうばくたちを、郡太守や刺史に任命した。

 袁紹なんか、洛陽を逃げ出したにもかかわらず渤海ぼっかい太守になってるし、袁術も後将軍こうしょうぐんに任命されている。


 董卓なりに、関東(函谷関以東の地域)の名士たちと協調しようとしてたんだ。

 しかしこいつらが軒並み、反董卓連合として叛旗をひるがえした。

 その裏には、董卓を田舎者とさげすむ関東士人どもの悪意があったんだろう。


 おかげで漢王朝の権威は地に落ち、各地の武装豪族が土地を奪い合う乱世に突入してしまった。

 その後、董卓は洛陽を破壊して長安へ遷都するも、やがて呂布に暗殺されてしまう。


 もちろん董卓にも非はあっただろうが、反逆者どもよりも悪く言われているのには、明らかに第三者の意図を感じる。

 その理由も、容易に察しがつくな。

 三国志が書かれた西晋王朝は、曹操を源流とする曹魏王朝の流れを引き継ぐからだ。


 曹操といえば、堂々と反董卓連合に参加していた反逆者の1人である。

 そんな反逆者の流れを汲むと言っては都合が悪いので、董卓が悪かったことにしたわけだ。

 つまり一般に流布する董卓の悪名は、後世がでっち上げた冤罪の可能性が濃厚なんだな。


 とまあ、董卓がそれほど悪党じゃないと知る俺が、なぜ彼になっているのだろうか?

 未来知識を使って、董卓を悲劇から救えってのか?


 ちなみに今は董卓が大将軍 何進から召喚され、洛陽の手前で待機してるとこだ。

 史実ではやがて何進が暗殺され、洛陽は大混乱に陥る。

 そこで上手いこと立ち回れば、未来の破滅や悪名も回避できるかもしれないな。


 でも、ひ弱な現代人にそんなこと求められても、困っちゃうんだけどなぁ……

以上、”俺は魔王じゃねえ!”の始まりです。

”それゆけ、孫堅クン!”で主張している話を、董卓の視点で描いてみようと思い立ちました。

はたして董卓は、破滅と悪名を回避できるのか?

十数話の中編になりますが、最後までお付き合い願えれば幸いです。

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