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七つ色SHINE ー絆ー  作者: Mayu
20/97

Rem:7 光

春から夏に代わる季節。少し暑い日に、慎は光の前に現れた。

朝の会と呼ばれるいわゆるホームルームの時間に、慎は教卓の横に立たされた。


「今日からこのクラスに入る、皆のお友達。瀬谷慎くんです。お父さんの転勤で、お引っ越しをしてきたそうです」


担任の女の先生は目の悪い子にも見えるように、『せやまこと』と、平仮名で大きく黒板に文字を書いた。


「じゃあ瀬谷くん、いきなりだけど、皆に自己紹介をしてもらえるかな?」

「……せ、瀬谷慎です」


一度転入生に対するたくさんの好奇心の眼差しを見、担任の顔を見上げて彼女がにっこり笑うと、少し間を置いて慎は口を開いた。

しかし、一言で終わり。

時計の秒針が二周しても、慎は何も言わずに立っていた。

まさかそれだけ?そんな雰囲気が漂い始めたとき、担任が声をかけた。


「好きなことは何かな?」

「……本を読むこと」

「好きな本はある?」


慎は頷いて答え、うーん、と担任が呟いてからもう一回声がかかる。


「好きな教科は何かな?」

「……国語。あと図書の時間」


答えると担任は頷いて微笑み、窓側の一番後ろの席を示した。


「瀬谷くんの席は、あそこね。目が悪いとかはないかな?」


質問に頭を振って答えたら、


「じゃあ席に着いてね」


と促され、慎はようやく席に落ち着くことが出来た。

光は机に頬杖をついて、何気なく慎の姿を目で追った。

話す間ニコリとも笑わず、また声もやや小さかった彼を、


(変な奴。女みたいだし)


と思った。


クラスメイトが増えて、最初の休み時間。

やはり子どもながらの好奇心で、数人が慎の周りに集まって、何やら質問をしていた。

光は慎を嫌いではなかったが何となく話し掛ける気にはならず、中休みにはいつもサッカーをしているメンバーと、外に出ていった。






クラスで作る班も給食などの当番でも、二人が一緒になることはない。

まだ話したこともないまま夏休みに入り、それも無事に終わった。

二学期に入り、後に慎と光を結ぶきっかけになる出来事が起こった。

今日は始業式だ。まだ授業はない。式が終わり、残った時間に先生が言った。


「じゃあ、係りと委員会決めをしましょう」


係りはクラス内の仕事。掃除当番や日直、給食当番は皆公平にローテーションをするので、それ以外。


例えば、クラス委員や落とし物チェック、実験準備や宿題を集める仕事だ。

委員会は学校全体で、四・五・六年生が自分たちに可能な範囲で、学校運営に取り組むものだ。

その委員会で、光はなりたい委員があった。それは、飼育委員だ。

その名の通り、学校で飼育している動物の世話を任される。


小屋の掃除や餌やりの当番をほぼ年中無休、交代で行う。

その代わりに、当番の日に見つけた鶏の卵の持ち帰りや、産まれたばかりの動物を優先で触れる特権があるため、競争率は高い。

とは言え、男子には女子ほどの人気はなかったし、元々じゃんけんにも強いので、あっさり委員の座を獲得できた。


光は、女子が先生とじゃんけん勝負をしているのを見ていた。

好きな女の子がいた。その子が飼育委員を希望している話を聞き、だからこの座を狙ったのだ。

ところが、なかなかそううまくは行かないもの。勝負に負けた彼女は、園芸委員になってしまった。

がっかりにも程がある。

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