表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
七つ色SHINE ー絆ー  作者: Mayu
PR
21/97

Rem:7 光2

「ちぇっ。面倒臭せえ」


光はぶつぶつ悪態をつきながら、当番の日に鍵を持って飼育小屋に向かった。

放課後友達とドッジボールする約束をしているのに、掃除当番な上に飼育当番なんて運が悪い。

小屋を囲うフェンスが見えたとき、足を止めた。慎はそこにいたのだ。


(あいつは確か、転校生の……)


フェンスに両手をおいて、慎はじっと小屋の中を見ていた。そして一度、腕で目元を拭った。


(まさか泣いてる?)


無視して小屋を開けるのも躊躇われ、ゆっくり歩み寄って口を開いた。


「あのさ、君……」

「!」


慎の肩が飛び上がるように揺れ、ばっと振り向いた。驚きが大きいのだろう。目が見開かれている。


「……」

「えーと……。ええっ?」


何も言わず、慎は光の前から走り去った。

光は呆気に取られて呆然と立ち尽くし、ぐんぐん小さくなるランドセルを見ていた。





次の日、慎はけろりとした感じで学校に来ていた。

光は何だか昨日の様子が気になって、他の友達と喋ったりしながらも、何回か慎の方を見るようになっていた。


朝の会が終わって五分の休憩になり、慎は席を立った。

教室の端にある担任の机の前に行き、彼女と何事か話している。

そして、何か封筒のようなものを差し出した。


光がもしそのようなことをしようものなら、


『先生にラブレターかあ?』


なんて、クラスメイトにからかわれただろう。

ところが、あまり目立たない慎の行動は気にされていない。


(何だろう、あの手紙みたいなものは?)


慎は静かに席に着き、そして、ふとこちらを見た。


バチッ。途端に二人の目線が綺麗に合わさり、相手は少し驚いたような顔になった。

三秒くらい見つめ合い、慎はふいっと顔を背け、校庭を眺め始めた。


(んにゃろ……)


人懐こくて当たりもいい光は、今まであまり他人からつれない態度をとられた経験がない。

そんな自分にとって初めてのタイプの慎は、興味を引くには十分過ぎるくらいの存在だった。

今まで以上に、何度も慎の姿を目で追うようになった。




新発見が増えて行く。

授業は真面目に取り組んでいるように見えて、意外にボーッとしているらしい。

集中していない時は、外を眺めているようだ。

空を見ているときもあれば、グラウンドでどこかのクラスが体育をしている時など、それを見ていた。


放課後は何日かに一回、教室の花瓶の水を変えている。

それから帰ったり、図書室に寄ったりする。

図書室ではもちろん本を読むのだが、やっぱりたまに窓の外を見ている。


だから座る場所は、窓際の席。

一度など、前の日に夜更かしをしたのか、うたた寝をしていた。

今日は特に友達との約束もないし、光は慎の後をつけて行くことを決めていた。

慎が席を立ち、光も真似た。


景色を見ながら帰っているらしく、足取りは遅い。

少しじりじりしながら離れて追っていき、そして不意に足が止まる。


(何だ……?)


光が近づいたら、慎が見ているものがわかった。


ゴミ捨て場でもないところに、不釣り合いな段ボール。

中から茶色の生き物が鳴きもせず、足を止めてくれた人間を、大人しく見上げていた。


(捨て犬……)


『拾って下さい』とは書いていないが、そういうことだろう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ