表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マイ フィロソフィ3   作者: 名草宗一郎
34/42

マイ フィロソフィ 34

「ダーツ会場だ!さあ、私と勝負だぜ〜、一樹。そして、私にかき氷をおごらすのよ!」

「ああ、そうだな。勝てたらな」

 適当に返しつつ僕は今見た教室を見た。今、机は全部撤去され、そして黒板の上に的が置かれてあり、その60センチメートル後方に仕切りがある机とダーツが置かれてあった。

 それで、今僕達はその黒板に向かっている訳なのだ。カラフルな的を凝視(ぎょうし)しながら。

 僕らがそうやって突く側に立っていると一人の眼鏡をかけた、高校生が来てくれて説明をくれた。

「はい。今渡すダーツは3本。それで合計で5点以上得点をだしたら商品を差し上げます」

「なるほど、5点以上か」

 的のなかで1のエリアが40パーセントで2のエリアは30パーセントあって、20パーセントぐらいのスペースで橙色の塗っている場所に3という数字が見えるが。しかし、その内側に10パーセントぐらいの量で4と書かれているのはマジで感心したな。

 じゃ、あとは美春と相談してどっちが先に投げるかを決め……………………

「とりゃ!」

 しかし、美春が放った渾身の一撃は的を越え、黒板を越え、天上にぶち当たって落下した。

 それにペシと美春は頭を叩いて残念そうに言う。

「あちゃ〜、失敗しちゃったか。4点を狙っていたんだけどな〜、だめだったか」

「いや、だめだっとかそうじゃなくて!普通最初に4点を狙うか?しかも、なんだその壮絶なはずれっぷりは!そうとうできることじゃないし、ここで普通4点を取りに行くか?普通」

 それに美春はぶすっとした表情を作って、サビがその表面に現れるような声で言った。

「何もそんなに言うことは無いじゃない。人がさ、気持ちよく投げたのにそんなことを言ったら、こっちがむかついてしまうよ。そういうことを言うのは嫌いだな、私は」

「………………」

 僕達の間に銀の鈍い臭いが横たえた。

 ……………どうしようか?こんなつもりではなかった。ただ、場の空気を盛り上げるために言っただけなのにこんな結果になるとは。

 錆びた(さびた)湿った(もや)のなかで僕は視線を上下左右に動かして、親指を無造作に抜け(から)のように動かした。美春は不機嫌(ふきげん)の平板な空気を横たえた。

 その何とも言えない、気まずい空気に僕が声を上げる。

「すまなかった、美春。そんなつもりはなかったんだ。ただ、場を盛り上げようとして悪のりをしてしまったんだ。すまん!許してくれ」

 僕が頭を下げて真摯(しんし)な気持ちで頭を下げる。そのしばしの時間が置いたあと白い薄い鳥が舞い降りて、鼻から一つの空気を出した音が聞こえた。

「わかったよ。良いよ、許すよ。私もちょっと大人げなかったし、いや、大人げなかったというか、一樹が善意のつもりで言った言葉にかちんとしてしまったことを悪いって思ってる。だから、良いよ。許すよ、一樹」

 僕はすっと頭を上げた。そこには気まずさと自責の勘定を混ぜた、オレンジ色の表情を出している美春がいた。

「わかった。なら、仲直りの握手をしよう。それでこれを水に流そう」

「うん。わかった」

 それで僕達は握手をしてごたごたを水に流した。後にはレモンが残されていた。

 そのあと、美春が腕まくりをして言う。

「よ〜し!なら、あとは3点連打で私が勝っちゃうよ!一樹はそこで見ていてね!」

「がんばれ、美春」

「ほ〜。ほっ!」

 美春はかかしが真剣に構えるようにしつつ、端から見てどこか実直なおかしさを出して、そして投げた。

 そのダーツはぶすりと2点のスコアに突き刺さった。

「やったー!2点ゲットー!」

 そして、何故か美春はガッツポーズをとって喜んだ。あれ?3点を取るんじゃなかったけ?

 だが、それを言うとまた話しがぶり返すというのは目に見えていたので、言葉を止めておいた。

「おめでとー。美春。まずは2点取ったね。あと3点取れば景品がもらえるな」

 僕のカラー紙に、美春は機嫌良くしたようにニコニコと明るい水を吸い上げた。

「うん、ありがと〜!一樹!じゃあ、3点狙ってもういっちょ、投げるか!ほ〜、ほっ!」

 そして、美春の最後の一球が投げられた。それは優雅(ゆうが)な弧を描いて、3点のエリアに直撃した。

「やった!やったー!一樹!見てくれた!?3点。3点の所に当たったよー!」

「ああ!わかったから、そんなに甲高い声を出すな。うれしいのはわかるけどさ!」

 美春は黄色い声で発情した猿のようにひたすらわめいていた。

 ああ、美春がうれしいのはわかる、わかるけど!みんなが見ているから、そんなにくっつくな。

 それはともかく、美春はわめくだけわめいたら離れていった。そしてタンポポのような柔らかい暖色の笑みをして自分の得点をうれしがっていた。

「じゃ、今度は一樹の番だよ。頑張ってね、一樹」

「おう」

 僕は美春の声に応えた。よ〜し、じゃあがんばろうかな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ