最後の恋 33
そうやって談笑をしながら僕らは歩き出そうとした。少なくとも僕はそう思っていた。だが………………。
「あ…………………」
美春は春の黄色い笑顔で自由に野原を駆けていたが、一点を見つめたかと思うとその顔が納戸色の青さでさっと走った。
そして、美春は僕の所へ、誰かに見つからないようにぴたっと僕に張り付いた。
「美春?」
僕は何事かと思って、美春が見た視線の先へ見るために背後へ振り返った。そうするとそこに佐藤さんがいた。
あの美春の恋人だった佐藤さんだ。佐藤さんは友人の男子達とフライドポテトを食べながら談笑している。こちらに気づいた素振りが見えない。
「美春?」
僕は美春に顔を後に動かして話しかけた。
「…………………」
しかし、美春は僕の言葉が全く聞こえてみないように僕の背中にぴたっと張り付き、人形のように全く身動きせずに隠れていた。
佐藤さんはいくらか談笑をしたあと友人達と一緒に階段を上っていった。そして佐藤さんが完全に視界から消えたとき、おそるおそる美春は僕の体から離れた。
「美春」
「うん、なに?」
美春はすぐに滑らかな初蜜の笑みを見せる。それは飾り気のない美春らしい笑みと見えるだろう。美春と少ししか付き合っていない人ならそう見えるはずだ。
「…………………ああ、そういえば、無性にコーラが飲みたくなってきたな。あんなマスタードホットドック食べたから舌がひりひり指摘ぞ。お、あそこに飲み物の売店みっけ。よかったら美春も飲まないか?」
それに美春は滑らかな蜂蜜の表情に金の粉砂糖が古い駆けられ、その砂糖がきらきら燦めいた(きらめいた)表情になった。
失恋がこれほどまでに人の心を傷つける物だと知らなかった。おそらくこっぴどいわかれ方をしたんだろう。相手のことさえ顔を見たくないなんてそこまでひどい物だとは異性と交際した経験がない僕には想像が付かなかった。
ともかく、祭りは始まったばかりだ。それなりに美春を楽しませて、つらい過去が癒される手助けをしなければな。




