覗きは家族同士でも犯罪です
「すまん!!妖夢!!許してくれ!!」
「許しません!!私はずっと待っていたんですよお爺ちゃん!!何も言わずに出ていって、私の気持ちを考えたのですか!?私の気か済むまで斬ります!!」
妖忌は妖夢に頭を下げて必死に謝っていたが、妖夢は額に青筋を浮かばせながら桜観剣を抜く。
「更に私の生活をこっそり覗いていたなんて、覗くくらいなら帰ってきて下さい!!」
「すまん、だから落ち着いてくれ!!聖人!!絢斗!!助けてくれ!!」
「「妖忌ざまあ!!」」
妖夢は桜観剣を持ちながら逃げる妖忌を追いかけていた。その様子を聖人と絢斗は爆笑しながら見ていた。
「絢斗、どうしてこんな状況になったかを説明した方が良いんじゃないか?」
「そうだね~、それじゃ回想入りま~す。ポワンポワンポワ~ン。」
聖人がレミリアと一戦をしてから、1週間が経った。あれから早苗に説教され、少しの間早苗とずっと一緒に居させられた。
「Zzz……。」
ある日の朝。時間は7時、聖人は自分の部屋でぐっすりと眠っていた。
「ん?もう朝か?起きないとな。」
聖人はそう呟きながら目を開ける。だが、視界は暗いままだった。疑問を感じ、聖人は顔を上げようとする。
フニュン
「……ん?」
枕とは違う柔らかい感触を感じた。そして、ほのかに暖かく、安心出来るような香りがした。
「(気のせいかな?)」
そう思い直してもう一度顔を上げようとする。
フニュ
「おいこら早苗。」
「ふふ、やっと起きたんですね。寝顔はとても可愛かったです!!」
早苗の声が聞こえた、けど目の前は真っ暗だ。聖人はある可能性を考えるが、それはないだろうと思い込む。
「早苗、一応確認するがどういう状況?」
「わからないんですか?いえ、分かっているんですよね聖人?」
「やっぱりそれかよ畜生!!」
「ん、やっぱり気付いてたんですね!!私の胸はそんなに気持ちよかったんですか?」
皆様は気付いただろうか?分からない?よし分かった説明しよう、これはどういう状況か?聖人が早苗の胸に顔を埋めて寝ていたということだ。
「そそそ、そんなことととななないし!!」
聖人は急いで早苗から距離を取る。その様子を見ていた早苗は顔をニヤニヤさせていた。
「気持ちよさそうでしたよ。」
「いつからそういう体制になってた!?俺は自分の部屋で寝ていた筈だぞ!!」
「一時間ほど前からですよ。早めに目が覚めたので、少し聖人と一緒に寝ようと思って聖人が寝ている布団の中に入ったら私の胸に顔を埋めてきたんですから。」
早苗は顔をほんのりと赤らめながら説明する。それを聞いていた聖人は顔を青くさせて冷や汗をかいていた。
「しかも聖人は寝言で安心するなぁ、やっぱりいいなぁ、とか言ってましたよ?」
「うっ。いいい言ってない!!」
「そんなに気持ちよかったんですか?変態さん♪」
「ちが!!そんなんじゃないって!!」
聖人は必死に弁解するが、顔を真っ赤にさせているし、挙動不審になっている為、説得力は皆無だった。
「気持ちよさそうな顔をしていたんですよ。認めたらどうなんですか?」
「~~~~ッ!!」
聖人は弁解するのを諦め、顔を俯かせた。
「ふふふ、それ!!」
「ちょ早苗!!」
早苗は顔を俯かせてる聖人を抱き寄せ、聖人の顔を胸に抱き寄せる。
「フガフガ!!(苦しいって早苗!!)」
「何を言ってるか分かりませんが、顔真っ赤ですよ、本当は嬉しいんですよね?男のロマンが叶ったんじゃないんですか?」
「フガ!!(違うって!!)」
必死になって離れようとする聖人を早苗は逃がさないように聖人の顔をギュット抱き締める。
「フガフガフガ!!(柔らかくて、苦しい!!)」
「じゃあそろそろやめますね。窒息したら困りますからね。」
そう言い早苗は聖人を離した。聖人は息を整えようとしていたが、顔は満更でもないという表情をしていた。
「はあ、はあ、苦しかった。全く、窒息したらどうするんだよ早苗!!」
「その割には満更でもないような顔をしてますよ聖人♪」
「うっ。」
早苗に指摘され、聖人は黙りこんだ。
「普段からのお返しです。こうでもしないと聖人は甘えてくれませんからね!!」
「早苗には甘えてるとは思うんだけどなぁ。」
「全然です!!もっと私を頼ってください!!っといけない、聖人、出掛けるを準備しますよ!!」
そう言い早苗は立ち上がる。
「準備って?」
「妖夢さんのところに行く準備です!!昨日妖夢さんから白玉桜に来てくださいって言われたんです。」
「そうだった!!妖夢達と修行するって約束してたんだ!!」
そう言い聖人は急いで布団を押入れにしまう。その時に時計を見ると、時刻は7時半だった。
「変態さんのせいで遅れそうです。早く準備してくださいね。」
「わかったから!!思い出させないでくれ!!」
白玉桜
「よっと、着いたな。」
「いつ見ても広いですね。この広い屋敷を妖夢さん一人で掃除しているなんて、私だったら無理ですね。」
聖人と早苗は雑談しながら白玉桜の門をくぐる。くぐった先には、何か腑に落ちない顔をしている妖夢と、妖夢の表情を見てニコニコしている絢斗がいた。
「おっ!!聖人に早苗ちゃんじゃん!!おっは~。」
「おはよう絢斗、そこで何をしてるんだ?」
「いやぁ~、妖夢ちゃんが妖忌を呼んでほしいって聞かなくてね~。ちょっと困っていた所なんだよ~。」
そう言い絢斗は考え事をしている妖夢を見てニヤニヤしていた。
「どうしたんだ妖夢?」
「あっ、聖人さん。あの、最近部屋に居ても誰かに見られているような視線を感じるようになってきまして、幽々子様かと思ったのですが、違うようで。」
「ふむふむ、分かりましたよ!!妖夢さん、貴女はどうやらとんでもない事に気付いてしまったようですね。」
早苗はそう言いながらある本を取り出す。
「な、何ですか早苗さん?」
「ふっふっふっ、その見られているような視線の正体、それは邪神なのです!!」
「「ナッ、ナンダッテェーーーー!!」」
早苗が高らかに宣言した時、聖人と絢斗はわざとらしく驚いていた。
「邪神ですか?」
「そうです妖夢さん、邪神というのはいつも私達を監視しています。その視線を感じるようになったら、その視線をいつも感じるようになって、そして最終的に姿が見えてしまいます!!」
「ううう嘘ですよね?」
「嘘じゃありませんよ。では、邪神がどんな姿なのか、この絵を見てください。」
そう言い早苗は何処かから取り出したスケッチブックを妖夢に見せる。
「一体どんな姿なん……いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
妖夢はスケッチブックを見た瞬間に、大声を挙げ、絢斗に抱き付いた。
「おやおや、妖夢さんが発狂してしまいましたね。正気度は0になってしまいましたかね?ざんねん、ようむさんのぼうけんはここでおわってしまった!!」
「いい加減にしろ早苗。」
「あうっ。」
聖人は早苗の頭を軽く叩く。絢斗は妖夢に抱き締められて嬉しいのか、右手を天に突き上げている。
「早苗の言ってる事は嘘だから安心しな妖夢。」
「ううっ、分かりました聖人さん。では視線の正体は、可能性は低いとは思いますが、一人心当たりがあります。」
「妖忌か?」
「はい、まさかとは思いますけど。」
「んー、これは本人に直接聞いてみるしかねえな。」
そう言い聖人は刀を抜いて空間を斬り、スキマを展開させた。紫が使用しているスキマではなく、カラフルな色のスキマだった。
「ひゅう~!!やるね聖人。」
「何をしたんですか聖人?」
「紫のスキマと同じようなもんだよ。ただ、これを使うと霊力を3割持っていかれるのが難点だけどな。」
「すごいですね聖人さん!!」
「ちなみにこれは妖忌の技だけどね。じゃあちょっくら呼んでくるから。」
そう言い聖人は空間の中に消えていった。
「大丈夫でしょうか?」
「大丈夫大丈夫~。早苗ちゃんは心配性だねぇ。」
絢斗が早苗の事をからかってると、不意に空間から声が聞こえてくる。
「見付けたぞ妖忌、ちょっと話があるんだが?」
「なんじゃ聖人か。ワシは忙しいのでな、用があるなら後でにしてほしい。」
「その用ってのは孫を見る用か?」
「なぜバレた!?あっ。」
「はったりをかけたつもりだったけどまさか本当とはな。ストーカー紛いの事をするなよ。」
「これは誤解じゃ!!今日たまたま妖夢の様子を見に来ただけじゃ!!」
「たまたまねぇ、妖夢の寝るところや着替えてるところも見ているのに、そういう言い訳するんだ。」
「それはたまにしか見ておらん!!」
「見てんのかよ!!このスケベじじい!!1回妖夢に会って謝ってこい!!」
「許してくれ!!ワシはまだ修行の身、妖夢に会うわけにはいかんのじゃ!!」
「つべこべ言わず来い!!成長が気になるなら直接会って見ればいいだろ!?」
「今出たらぼこぼこにされてしまう!!頼む!!見逃してくれ!!」
「んなこと知るか!!」
そんなやり取りがあったあと、空間が開き、その中から聖人と妖忌が出てくる。
「連れてきたぞ妖夢。」
「お爺ちゃん。本当にお爺ちゃんなんですね。」
「妖夢、大きくなったのう。」
妖忌は昔を懐かしむかのように妖夢を見ていた。妖夢は本当に妖忌だと確信したのか、桜観剣を鞘から抜いた。
「妖夢!!何を!?」
「今までずっと見てたんですねお爺ちゃん?何も言わずに出ていったのに、こっそり見てたんですね。しかも私が寝ている所や着替えている所も。」
妖夢はそう言いながらジリジリと妖忌に近付く。妖忌は冷や汗をかきながら首を横に振る。
「待て妖夢!!落ち着け!!話せばわかるはずじゃ、様子を見てたのは深い訳があったのじゃよ!!]
「言い訳は聞きません!!取り合えず覚悟!!」
妖夢はそう言いながら弾幕や斬撃を妖忌に放つ。妖忌は妖夢の攻撃を避けながら必死に逃げていた。
「聖人、絢斗助けてくれ!!孫に殺される!!」
「「妖忌ざまあ!!」」
「妖夢さんの刀を弾いたりすればいいのに。」
とまあこんなやりとりがあった。
「妖夢、強くなったのう。ワシは感動したよ。でもまだまだじゃな。」
「全身土埃まみれで言っても説得力ねえよ妖忌。」
あれから30分くらい妖夢は妖忌を追っかけ回していた。妖夢の攻撃は妖忌に当たることはなかったが、必死で逃げていたため、着物に土などがたくさん付いていた。
「ある意味ぼろぼろだね~。」
「もう覗いたりしないでくださいよお爺ちゃん?」
「肝に命じておっと。」
妖忌が最後まで発言する前に妖夢は妖忌に抱き付いた。
「お爺ちゃああああああん!!!」
妖夢は泣きながら妖忌の胸に顔を埋める。妖忌はあやすかのように妖夢の頭を撫でる。
「心配かけたのう妖夢。」
「ずっと心配してたんですよ!!少しは私の気持ちも考えてください!!」
妖夢は妖忌の体にポカポカと拳で叩く。妖忌は苦笑いしながら受け入れた。
「いやぁ~、いいねえ~。これぞ正に運命の再会ってやつ?感動するねぇ~。」
「茶化すな絢斗。」
「あでっ。」
「羨ましいです。」
聖人と絢斗と早苗は妖夢と妖忌のやり取りを少し放れた位置で眺めていた。
「妖夢、そろそろ離してほしいのじゃが?」
「嫌です。勝手にここを出ていった罰です。私の気が済むまで離しません。」
「ふふっ、まるで子供ね妖夢♪」
居間から幽々子がのっそりと出てくる。
「幽々子様、相変わらずお美しい姿で。このような姿で挨拶することをお許しください。」
「いいのいいの♪妖忌はもう従者じゃない、私達の一員なのだからそんなに堅苦しくなくていいわよ。」
「恐れ入ります。」
幽々子と妖忌が話している途中、絢斗は聖人の方を向いた。
「ところでさあ~、聖人と早苗ちゃんは今日何をしにここに来たの~?」
「覚えてないのかよ。お前が朝食つくるのを手伝ってって言われたから来たんだぞ。」
「忘れてたわ~!!」
「妖夢~、お腹すいた~。」
幽々子はそう言い頬を膨らませる。その様子を見た妖夢は妖忌から離れ、台所に向かった。
「はい!!今日はより一層美味しく作りますよ!!」
「妖忌とかの分も作んないといけないからね~。俺も手伝うよ妖夢ちゃん。」
「私も手伝いますよ。」
「じゃあ俺も。」
聖人がそう言い台所に向かおうとした時、妖忌が聖人の肩を掴む。
「聖人、お前は残ってほしい。」
「わかったよ。」
「それじゃあ、お願いねえ♪」
そう言い幽々子はスキップしながら居間に向かった。
「さて、いろいろ話をせねばならん事がある。」
「どんな話なんだ?」
「まず、修行で妖夢に怪我を負わせたな!!切腹してやるからそこに直れ!!」
「そんなこともあったな。切腹は絶対嫌だ!!」
「たわけ!!そんなこと聞いとらん!!妖夢に何かあったらどうする!!」
「親バカだな。」
聖人はそう言い溜め息を付く。妖忌は居合い斬りの構えをとっていた。
「オーバードライブを使ったんじゃないだろうな?」
「してないって。してたら怪我どころじゃ済まないからな。」
「それならよいわ。」
そう言い妖忌は居合いの構えを解いた。聖人は簡単に許されるものだとは思ってなかったらしく、何とも言えない表情になった。
「いいのかよそれで……。」
「それと、聖人に渡すものがある。」
妖忌はそう言い空間を斬り、その中から木刀を取り出して聖人に渡した。
「これは?」
「お主が扱いやすいようにつくった木刀じゃ。耐久性は普通の木刀の何万倍もある。」
「もらっていいのか?」
「孫が折ってしまったからのう。」
聖人は妖忌から受け取った木刀をしばらく振り回し、感触を掴んだのか、腰のベルトに挿した。
「サンキューな。」
「何、今使っているのは正直使いづらいのじゃろ?動きがコンマ単位で遅れてるからのぅ。」
「ばれてたか。」
「それよりも妖夢の料理は上手くなったかのう?」
妖忌は珍しくそわそわしていた。無理もない、孫が料理を作ってくれるのだから。
「妖夢は大丈夫、絢斗も大丈夫、でも。」
聖人はそこで言葉を区切り、申し訳なさそうな表情をする。
「どうした?」
妖忌が聖人に何か訊ねようとした時、台所から妖夢の叫び声が聞こえてくる。
「早苗さん!!塩とこしょう間違えないでください!!そっちは砂糖ですよ!!」
「すみません!!」
「早苗ちゃん、魚焦げてるよ~。」
「ああーーーー!!!」
声を聞いた聖人と妖忌は互いに顔を見合わせて、やれやれと首を横に振った。
「お主の彼女大丈夫か?」
「大丈夫だ、問題ない!!って言いたいよ本当に。あれはわざとやっている訳じゃないんだろうけどさ。全くあのドジっぷりはいつになったら直るのかねぇ。」
「お主も大変だのう。」
「お互い様だ妖忌。」
「まあ!!美味しそうね♪」
テーブルにはたくさんの料理が並んでいた。幽々子は待ちきれないのか、口から涎を垂らしている。
「幽々子様、料理は逃げませんよ。それでは、いただきましょうか。」
「いただき「ドォーーーーーン!!」なんだよ今の音は!?」
庭の方で爆音が突然鳴った。その庭に一人の女性が立っていた。
「はあーーい、久しぶりね。元気にしてたかしら?」
「「「「……誰?」」」」
「聖人、知り合い?」
「いや、あんな奴知らん。」
聖人はそう言いテーブルにある料理を食べ始める。他の人達も謎の女性を無視して料理を食べ始める。
「ちょっとーー!?無視しないでくれるーー!?」
「知らぬが仏。」
「あらそう、だったら聖人のお漏らししている写真とか泣きじゃくってる写真とかばら蒔くわよ?」
「ブッフォォォォォ!!何でてめえが持ってやがる!?」
聖人は飲んでいた水を吐き出し、謎の女性に向かって怒鳴る。謎の女性はやれやれと首を横に振った。
「さあね♪」
「お主、何者だ?」
「私?私はアイリスよ。今日は東風谷早苗に用事があって来たのよ。」
アイリスはそう言い早苗の所に向かって歩き出す。
「早苗に何の用だ?」
「ちょっと拐おうと思ったのよ。というわけで、拐われてくれない?」
「はいどうぞ、って言うわけねえだろ!!」
聖人はそう言いアイリスに向かって木刀を振るう。アイリスは何処からか取り出した薙刀で聖人の木刀を防いだ。
「聖人さん!!助太刀します!!」
「いや、しなくていいよ妖夢ちゃん。」
妖夢が立ち上がろうとするのを、絢斗が手で押さえる。
「昔はもっと可愛かったのにねぇ、今は恐いわねぇ。」
「何故俺の昔を知っている?答えろアイリス!!」
「なら、私に勝ったら教えてあげるわ!!」
そう言いアイリスと聖人は激突する。その様子を幽々子と妖忌は料理を食べながら見ていた。
「聖人~、10分以内に終わらせないと全部食べちゃうわよ~♪」
「何!?なら最初から全開だ!!想符『オーバードライブlevel5』!!」
「ご飯の為に本気出すんですか聖人!?」
「さて、俺の朝食の為にとっととやられてもらうぞ!!」




