紅霧異変終了
例え義理でも、兄から、母から、父から力を継承され、彼は越えられない壁を越える
紅魔館 裏庭
「どう考えてもおかしい、何故だ、何故貴様がそんな力を身に付ける事が出来た!?」
霊愛に憑依している龍神は有り得ないと言わんばかりに何度も首を横に振る。
「貴様程度の者がそんな力を手に入れられる訳がない!何故だ、何故なんだ!?」
「俺一人ではこの力を持つことは絶対に出来ませんでしたよ。霊香さんや東谷さん、そして義兄さんのお陰ですよ。」
良太は手を握ったり開いたりして、自分の今の力の調子を確かめ、良太の言葉を聞いた白は納得した表情で良太を見ていた。
「なるほど、俺の『想力点火』だけじゃそこまでの力は持てないんだが、あの二人が手を貸したなら納得だ。」
「そういうことか、おのれ前博麗の巫女共め、消滅する寸前に余計な事をしおって。さっさと消滅させればよかったわ。」
霊愛は恨めたらしく呟いて手に持っている御幣を構えようとする。
「おい、今何て言いました?」
だが完全に構え終わる前に良太が霊愛の目の前に立っていた。瞬きなどはしていない、だが良太は気付いたら霊愛の前に立っていた。拳を握り締めながら。
「なっ!?き、貴様いつの間に我の目の前に!?」
「マジか、全然目視出来なかったぞ。どんだけ速く動いたんだよ良太の奴?」
霊愛は目の前に立っていた良太に驚き、白は良太が霊愛の目の前に移動した事を数秒後に気付き、目を見開く。
「先程霊香さんと東谷さんの気配が消えたのを感じとりましたが、貴方が何かしたんですよね?」
「ふん、邪魔だったのでな。この世から消えてもらったわ。無駄に力も蓄えておったし、何より目障りだ。」
良太の質問に霊愛は鼻を鳴らしながら答え、良太は納得した表情でため息を付く。
「そうですか、一番の理由は目障りだったから消滅させたんですか。」
「そうブハァァァァ!!?」
霊愛は言葉を言い終わる前に顔面を数え切れないくらい殴られて紅魔館の壁に激突した。
「はぁ、はぁ、貴様一体何をした泊谷良太!?」
瓦礫を吹き飛ばし、霊愛は良太に向けて御札弾幕を数百個ほど放つが良太は御札弾幕を全て銃で撃ち落とした。
「何って、ただ貴方の顔面を数億回くらい殴っただけですよ。」
良太は霊愛の質問に答え、もう一度霊愛の顔面を数億回殴る。殴られている霊愛は何が起きているか分からない表情で殴られ続けていた。
「目障りだから消滅させただと?子供じゃねえんだろお前はよ?幼稚な理由で俺の、霊夢と良夢の大切な人を殺すんじゃねえよ!!」
殴り終えた良太は霊愛の鳩尾を殴ろうとするが、寸での所で霊愛は横に移動して避ける。
「避けられた?」
「そうだったそうだった、この憑依している少女の能力を忘れてたわい。」
霊愛は口から垂れていた血を手で拭って御幣を良太に向けて叩き付けるがそれを良太は片手で防ぐ。
「くっ!!いきなりスピードやパワーが上がった!?」
その後の霊愛から放たれる蹴りや殴打を防御しながら良太は反撃しようとするが、しようとした時点で次の攻撃が来るため反撃出来ないでいた。
「貴様がそれだけの力を身に付けたのであれば、我も身に付ければ良いだけのことよ。」
「何だって?」
霊愛が放った言葉に良太は一瞬だけ動揺してしまい、その隙を付かれて防御をこじ開けられた。言うなれば今の良太はバンザイ状態になっている。
「知る必要は貴様には無い!!」
霊愛はがら空きの良太の心臓目掛けて貫手を放ったが、良太の体に当たる寸前に白が割り込み、貫手を白刃取りで止めた。
「良太、強くなったからといって敵の目の前で油断すんな!」
「白!!邪魔をするな!!」
霊愛の拳のかち上げを白は両手を使っていなし、続けて放たれるハイキックをスウェーで白は避ける。
「霊愛は『勝る程度の能力』を持っている。一言で説明すると相手が強ければ強いほど自分も強くなる能力なんだよ。」
白はスウェーで霊愛のハイキックを避けた後に両手から巨大なレーザーを放って霊愛の動きを止める。
「ですが、そうなると体が強大な力に追い付かずに爆発するんじゃないんですか義兄さん?」
「普通ならな、けど霊愛は蓬莱の薬を服用済みで不老不死だ。しかも憑依しているクソ龍神は痛みなんか感じないからな。霊愛を好き放題に出来るんだ。」
白がそこまで言うと巨大レーザーが消滅して霊愛が服の埃を手で叩きながら白と良太の方へ歩いていく。
「ほう、この憑依している少女の事をよく知ってるな白?だが知っているから勝てると思っておるのか?」
霊愛は一瞬で白の懐まで近付き、御幣を持った手で白の顔面を殴り飛ばそうとする。
「義兄さん!!」
良太が霊愛の攻撃に気付き御幣を持っている銃で受け止めたが、霊愛は攻撃を防がれた後にクナイを御幣を持っていない手で持ち良太の頭に刺そうとする。
「ああ、思ってるぜ。」
白は良太の頭にクナイを刺そうとする霊愛の手首を掴み、霊愛の体ごと振り上げて地面に思い切り叩き付ける。
「ぐっ、何故これ程の力が!?白の力は封印した筈!!」
白の力は現在封印されており、本来なら人里にいる人間と変わらない膂力しかない。だが能力でパワーアップした霊愛にダメージを与えている。その膂力はどうやって解放したのか霊愛は疑問に感じていた。
「確かに封印されたさ、けど少しでも力を取り戻せればあるスペルは発動出来るんだよ。」
白がそこまで言うと、白の体から緑色と銀色と蒼色の闘気が出現して体に纏わり付く。
「極符 エンドエボルバー。」
三色の闘気を纏った白は掴んでいた霊愛の手首を離し、思いっきり上空へ霊愛を蹴り上げる。
「銃符 ソーラーレーザー!!」
打ち上げられた霊愛目掛けて良太は銃口から銀色のレーザーを放つ。それを見た霊愛は両腕を交差させて防ごうとするが、レーザーは腕を貫通して体に当たった。
「ゲボハァ!?」
レーザーによって更に上空へ吹き飛ばされた霊愛だったが、吹き飛ばされた先に良太がいつの間にか移動しており、霊愛の背中を蹴り落とす。
「まだ終わりませんよ。銃符 封魔陣!!」
更に良太は蹴り落とされた霊愛の周りに壁弾幕を配置し、落下しながらショットガンを取り出して乱射する。
「ショットガンを二回リロードで0.01秒経過かよ。良太が地面に着地するまでに3秒、どんだけ銃弾を放ったんだ?」
「ざっと一兆ほどです。」
良太はショットガンをハンドガンに戻し、地面に弾幕をぶつけた事で発生した土煙を拳圧で払う。
「ぐ、お、おのれ。我は憑依しているから痛みなど感じない筈だ!!なのに、コブッ!!」
霊愛はうつ伏せの状態から立ち上がろうとするが、口から吐血し、膝から崩れ落ちる。
「俺の能力を忘れたんですか?」
良太の能力は『全てを貫く程度の能力』であり、良太が放った弾幕は障害物や結界等を貫通する能力。だが自分より力が上の相手が張った結界等は貫通出来ない。
ましてや憑依先の人物にダメージを与える事は出来ない。だが良太が先程発現した『終末の超騎士』発動状態なら障害物や結界だけでなく、相手の防御を貫通し、憑依先の人物にもダメージを与える事が出来るようになる。
「それに、どうやら今の俺の状態は世界を越えし者の『到達者』状態らしいですね。」
「世界を越えし者?」
「俺も詳しくは知りませんので説明することは出来ませんよ義兄さん。」
世界を越えし者とは、まず世界に生きてる限り、遺憾無く力を発揮する事が出来ると引き換えに制限が掛かっています。言わば拘束具を付けられているようなもの。
だがある条件で付けられている拘束具を破り、驚異的な力を発揮する事が出来る人々の事を世界を越えし者と言う。
驚異的な力というのは、0秒で動けたり、能力が形になったり、自分に害する能力を無視できたりする等のこと。それだけでなく、パワーやスピードや耐久力などが桁違いに上昇する。
「ですが、まだ『遠慮』していますけどね。」
良太は苦笑いしながら霊愛の元へ歩いていき、必死に起き上がろうとする霊愛の頭に銃弾を放つ。
「俺達の勝ちです。さっさと元の場所に帰ってください。」
「ぐっ、今日の所は引き下がってやるわい。だが、これで終わりだと思うなよ!!」
霊愛はそう言い糸が切れたかのように倒れた。それを見た良太は『終末の超騎士』を解除して霊愛をお姫様抱っこして持ち上げる。
「なんとかなったな良太。霊愛は霊斗の所へ連れていってやってくれ。」
「分かりました。」
良太は白に向けて一礼をして博麗神社へ飛んで行き、白も三色の闘気を消し、紅魔館を去ろうとする。
「何処へ行くんですか?」
だが白の周りはナイフに囲まれていた。それを見た白は頭を抱え、紅魔館の方を見る。
「あー、俺がやった訳じゃないんだが。見逃してくれることって出来るかね十六夜咲夜?」
紅魔館は霊愛に憑依した龍神との戦いで半壊状態になっていた。これを咲夜に見られる前に白は去ろうとしたが、一足遅かったようだ。
「駄目ですよ。ここには貴方しかいませんもの。」
「えっ?まさかあいつら!!」
白しかいない、となると吹き飛ばされた絢と海二は戦闘が終わった瞬間にそそくさと紅魔館から去ったということになる。
「きっちり、直してもらいますからね?あと直してもらうまで帰らせませんからね白さん?」
「ちくしょおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
紅霧異変 EX 完




