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最終話 俺と彼女のbeat of soul

最終話です。

話の内容を一から考えていたので、大苦戦でした。

ではどうぞ。


今日からここに所属することになった私。

目の前にあるのは「シャイニングラインレコード」の本社。

父と一緒に仕事をするのだから嬉しいはずなのだが、私はすごく憂鬱だった。

それは先日の話……





樹海に向かったカイを見送った後、私はレッスン生たちの元へ向かった。


「ねえあなたたち、はなびはどうして樹海に向かったの?教えてくれるかな?」


「……」


全員が私の方を振り向いて黙り込む。

すべては私の予想どおりらしい。


「分からない?そんなはずは無いものね。ねえあなた」


私はその中の一人を指差した。


「人の才能を嫉妬するのは構わないけど、巻き込むのはどうかと思うわよ?」


「!!」


するとその女の子の表情が変わった。

私をものすごい形相でにらむ。


「あら?図星?」


その場に緊張した空気が流れる。

そんなときに突然一台のヘリコプターがキャンプ場にやってきた。

もちろん私も何が起こったかよくわからない。が、予想はできる。

案の定そのヘリコプターから数人の男たちとカイのお姉さんが出てきた。


「あ、あの人って……」


レッスン生の数人が声を上げる。

さすがに皇マイはなかなか有名らしい。


「カイ……さっきの男の子のお姉さんよ」


「ええ!?」


私のこの発言に一同が驚愕する。


「もしカイに何かあったら……あなたたち、ただじゃ済まされないわよ」


この私の発言にみんながビクビクし始める。


「特にあなたはもう社会的に死ぬわね」


「うぅ……」


さっきまでの威勢はどこにいったのか、彼女は青ざめて委縮し始める。

やりすぎの感もあるが、これぐらいしないとイライラが収まりそうもない。


「いい?嫉妬するというのは悪いことじゃないのよ。嫉妬するということは相手との実力差を理解しているということなのよ。でもね、その嫉妬を人にぶつけるってどういうことか知ってる?」


私の発言に一同が静まりかえる。


「相手との実力差を埋められないと、諦めてしまっているのよ!こんなに情けないことなんてある!?確かに絶対に埋められない差というのはあるのかもしれない。でもあなたちは諦められる!?悔しくないの!?出来ないよね。悔しいよね。だってあなたたちは音楽が好きなのだから。好きなんだから諦められないよね。じゃあやろうよ!そんなくだらないことするんじゃなくて音楽をしようよ!みんなで音楽をしようよ!それが私たち、ミュージシャンなのだから」






結局そのあとすぐにカイが血だらけで運ばれてきてそれどころじゃなくなってしまい、あの子達とはそれ以降会話もしていない。

だから今日、そんな気まずい状態で彼女たちと再開しなければいけない。


「はぁ……」


ため息もつきたくなる。


「あ」


「え?」


私が意を決して入口に入ろうとしたら後ろから声が聞こえた。

振り返って見てみると、キャンプ場にいたレッスン生の一人がいた。

まずい、こんなところで会ってしまうとは。

私は何も言えずにその場に固まってしまった。


「……」


「……」


沈黙を破ったのは相手だった。

顔を俯かせて走って会社内に入っていった。


「……威勢が削がれる……」


私は意を決して中へと入っていった。


「ん?」


[ようこそ!!Steraお姉さま!!]


「ええ!?」


そこにはキャンプ場にいたレッスン生たちが整列して私を待っていた。

まさか全員で私を追い出そう……ってことじゃないよね?


「えっと……」


「あの!」


「はい?」


私が戸惑っている間に一人の女の子が私の元へやってきた。

その子は私にかなり責められた例の女の子だった。


「あの……ごめんなさい!そして、ありがとうございました!」


その女の子は私に深々と頭を下げた。


「え?え?え?」


私の混乱度が増す。


「私、どうにかしてました。でも私、思い出したんです。ここに入りたての頃の自分を。それを教えてくれたのはSteraお姉さま!あなたなんです!」


「は、はあ……」


いい方向に事は進んだのだが、ここまでとは……

しかもいつのまにかSteraお姉さまなんて呼ばれているし。

まあ何とか私の不安も解消されてよかったよかった。


「ん?」


ふと上の方を見ると、社長……私のお父さんが腹を抱えて笑っていた。

……後でじっくり話し合う必要があるわね、「社長」。

私はどす黒い笑みを浮かべたのだった。








パンパンパン!


[退院おめでとう!!!]


俺が退院した翌日、生徒会室に入って早々にクラッカーによる攻撃を受けた。

まあ俺が大怪我したという噂はすでに学校中に広まっており、俺は一躍時の人となっていたので、覚悟はしていたが。


「あ、ありがとう……」


だから俺はこんなありきたりな返事しか返せなかった。


「それにしてもすごい怪我ねえ……」


さや先輩が俺の腕をぺたぺた触る。


「ギブスの中見ていい?」


「ダメです」


「ケチ」


「可愛く言ってもダメです」


俺はさや先輩にそう告げると、自分の席に着く。


「ていうかそれ、名誉の負傷なのな」


俊哉は俺の右頬をさす。

そこには一筋の傷跡があった。

実はこっちの傷も跡が残ってしまい、前より人相が悪くなってしまった。


「でも何だかその傷はかっこいいですよ〜」


ナナちゃんが俺の頬の傷跡を何度もなぞる。

なんだか本人が楽しそうなので放っておくことにする。


「あー。ナナちゃんには触らせて私には触らせないんだ〜」


さや先輩が拗ねた顔で俺に言う。


「いやいやあなたは腕の傷だったでしょ!」


「腕でも何でもいいから傷痕触りたいな〜。そして喘ぐカイが見たい!」


「あんたはまともな思考が働かないんすか!?」


こんなことをするのもなんだか懐かしい。

まあしばらくこっちに帰って来なかったので、久しぶりといえば久しぶり。


「おかえり」


「あ、ああ。ただいま」


今まで黙っていたレイの一言がまた俺に懐かしい感じを味わらせる。


「それで成果の程は?」


「バッチリ」


そういうとみんなの顔が綻ぶ。

結果は近いうちに出る。

俺はそう思う。


ガラガラ


「みんなおはよう!」


「え……」


そんなところに突然扉が開かれ、一人の少女が入ってきた。


「……?どうしたの?そんな意外そうな顔をして」


「結果出るの早すぎだろ!」


「はぁ?」


そして今日、俺の退院祝いと同時にはなびの帰還祝い(?)が生徒会室で行われることになった。






祝いとして何をするのか、と考えていた俺の前に現れたのはケーキ。

つうかそんなものまで用意してくれているとは……


「じゃあケーキ切るわよ」


さや先輩とナナちゃんがケーキを切ってゆく。

しかしさや先輩は包丁が全然使えないので、速攻でリタイヤ。

その役は俊哉に譲られた。

つうかレイといい、はなびといい、包丁使えないのが多すぎ。

それはともかく、ケーキがそれぞれの皿に乗せられ、俺の元にもやって来た。


「そういえばパーティといったらお酒ね。誰か買ってきて」


「買うな」


俺はレイに冷静にツッコミを入れた。

どうせ冗談なのだろうがナナちゃんあたりが本気で買いに行きかねない。


「あ、何か失礼なこと考えてますね」


「考えてない考えてない」


「2回言うのは嘘なんですよ」


「う……」


妙に鋭いナナちゃんにタジタジになる俺。

そしてさや先輩が紅茶を入れた紙コップを持った。


「じゃあ行くわよ。カイの退院とはなびちゃんの帰還を祝して乾杯!!」


[乾杯!!!]


さや先輩の乾杯にみんな応え、パーティが始まった。

みんな思い思いに話したり食べたりし始める。

右手の使えない俺は左手でフォークを使おうとするが……


「カ、カイ……」


右の方から蚊の鳴くような声が聞こえた。

しかし俺が右を向く前に左から何か声が聞こえてきた。


「あ、カイは右手使えないわね。しょうがないわね。あーん」


「へ!?」


「ええ!?」


俺と右の……はなびが絶叫を上げる。

しかしその間にさや先輩はフォークで俺のケーキを小さく切って刺す。

そして俺の口元に差し出される。


「はい、あーん」


「い、いや……その……」


これは間接キスになってしまうような……

そしてさや先輩はニコニコよりはニヤニヤ笑いを浮かべていた。

これは確実にからかっているな……

しかし俺にはどうする事も出来ない。

何せ断ると報復が来そうだ。

そんな俺がためらっている理由は、右の方からかすかに聞こえる「むぅ〜……」という唸り声のせい。

ど、どうすればいいんだ!?


「早くしないと無理やりこじ開けるわよ。口移しで」


「!?」


俺と……右隣の彼女がビクッと体を震わす。

口を開けてしまうしか……ないのか!?

いつのまにかレイやらナナちゃんやらみんなもこっちを注目している。

俺は覚悟をきめて口を開けてしまった。


「ふふっ」


そう言って俺の口にフォークが入るかと思った瞬間、俺は頭をグイと後ろから掴まれて倒された。

つうか痛いです。メッチャ痛いです。

しかしそんなことを思っているうちに俺の口の中に強引にケーキが刺さったフォークが入れられた。


「んん!?」


俺はびっくりして前を見る。

しかしさや先輩はフォークを持っているだけ。

まさかと思って俺は恐る恐るフォークを持っている手を辿る。


「どう?お・い・し・い?」


「ヒイッ!」


そこには怒りマークを浮かべたはなびがいた。


「だ・か・ら、味はど・う・か・し・ら?」


「さ、最高であります!」


俺は恐怖で変な言葉遣いになってしまったのだが、はなびは気にせず、もう1回ケーキを刺して俺に差し出す。


「はい、じゃあ次もど・う・ぞ!」


「は、はい!」


俺は為されるがままに口を開けた。


「フフフフ……」


みんなのニヤニヤ笑いが俺に集中する。

もう勝手にしてくれ。


「も、もう自分で食べれるからさ、はなびも食べろよ、な?」


俺はその空気に耐え切れずに、はなびに妥協案を出した

まあ受理してくれるかどうかは微妙なところだが。

そこで俺はいいことを思いついた。

はなびに対していい復讐になるかもしれない。


「そういえばお前、口元にクリーム付いてるぞ」


「え?どこ?」


俺ははなびが探し当てる前に自分の舌ではなびの口元に付いたクリームを舐めた。


「えっ!?」


はなびはびっくりして体を震わせた。

どうやら作戦成功。


「あ」


「ん?」


「お」


「まさか……」


みんな俺を見ていた。

あれ?俺何かまずいことした?


「カイの……カイの……」


「あ」


はなびが体を震わせた。

や、やばい!怒らせてしまったか!?

俺は両腕を顔の前でクロスさせる。


「バカ……」


「え……」


しかしはなびは頬を染めながら可愛くそんなことを言うだけだった。

予想外の行動に俺は逆に驚く。


「でも……ありがと」


はなびが恥ずかしそうに笑う。


「お、おう……」


な、なんだか変な空気だぞ。

でもまあはなびが嬉しそうだからいいか。



俺はこれからもはなびの笑顔を守っていきたい。



だからずっと俺の隣で歌っててくれよ。



はなび。







<END>




以上ではなび編が終了です。

読者の皆様、今までありがとうございました。

作者は少し休憩してから次の作品に取り掛かることにします。


では皆様、またお会いしましょう。



CFF-沙希

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