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小説を書く時のヒント集  作者: 電式|↵
作品の書き方・アドバイス
15/16

【メイキング記録】ループものを作る 1/3


 タイムループに挑戦してみたお話。


 どうも、電式です。

 ヒント集、ほぼ更新がないから死んでると思った? 残念でしたぁー!!


 創作者がタイムループ作品を作ろうとすると、どんなことに遭遇するのか?

 どんな課題や問題、制約に遭遇して、どう対処すればよいのか。

 てか他の人ってどうやって作品作ってんの? バイブス?


 気になりますよねぇ。


 私の代表作「マジで俺を巻き込むな!!」(以降、マジ巻と略称します)の作中では、色々な要素が同時並行で走っているワケなんですが、今回時間ループ構成に挑戦してみました。

 一通り作ってシナリオを完結させたので、やってみてどうだった、みたいな感覚とか、知見とかを公開してみようと思いました。


 今までは例示のために、作中作のようなものを書いていたんですが、今回のシリーズでは本物を使います。

 この一連のシリーズ記事だけで書くべきことは書くので、当然ですがマジ巻は履修不要です。

 ぶっちゃけマジ巻にも興味持ってもらえたら嬉しいんですが、それはそれ、これはこれです。


 シナリオを組み立てるときに、同時にこのメイキングを作ろうと決めていました。

執筆しながら「いま自分はどういう問題に直面しているか」とか「何を考えてどういう対応をとった」とか意識して1年近くネタ集めをしていました。

この記事はその集大成ということです。


 おっと。

 ここで注意なんですが「私はこう考えて、こうした」って内容を書いています。


 ループシナリオは作り始めるときから特殊な考慮が必要です。

 当然それが正しいとか、正解だとかは言えません。私ができていないことも書きます。

以前の連載回と同様のスタンスです。

 また私は趣味で自由に作るという立場で書いていることも、ここで言っておきますよ。

目指す方向が異なれば、観点が異なるのは自然です。


 それから、今回は3回に分けて連載していきます。

 今回は連載の知見を一般化した内容を書く非ネタバレ回。

 続く次回、次々回は、マジ巻の特定区間についてネタバレさせながら「具体的にどうやったのか」を話していきます。

 マジ巻を読まずとも、このヒント集の連載だけで話が完結するように書くので、容赦なくネタバレが入ります。

 「ネタバレは嫌だ」という人は、次回、次々回の閲覧は控えておきましょう。


 作品に興味を持ってくれたらという思いは、私も(恐らく)人の子なので多少はありますが、押し売りは私の趣味じゃないので、興味があれば程度です。ご自由にどうぞ。


 しかし小説界隈って、意外とこういうメイキングみたいなのを公開しないんですよねぇ。

 手の内見せたくないとか、やる価値が見いだせないとか色々あるのかもしれません。


 一番はやっぱり「言語化が難しい」ことかなと思っています。

 なんとなくやってるから、どうしてそうしたのか、と聞かれたときに答えにくいというか。

 あるいは説明が複雑になるとか。3つ、4つ、5つとかの要素が同時に綱引きした結果、丸く収まる地点を導き出した、みたいな。

 私もそういう複雑な経緯を辿るやつは、説明がくそダルくて「カン」とか言っちゃったりするんですけどね。



◆タイムループ


 まず、タイムループってなんなの、って話ですが。

 どう定義しようかな……


 「あるキャラクターが、自然な時間経過によらず、現在と異なる時間に移動する」要素があって(これをタイムスリップ / タイムトラベルとしましょう)、

 その要素のうち「キャラクターが特定の時間帯や瞬間に、何度も移動する」形態をタイムループとしましょうか。

 ここでのローカル定義ですけどね。

 今回は「過去に戻ってやり直す」形態、結構一般的そうなタイプでやったので、その話をしたいと思います。



◆何が難しかったの?


 まずはどの作品でもありえそうな内容に一般化して話をします。

そのあと、「マジ巻」ではどのように解決、ないし対策したのかを個別の具体例として説明します。


 難しかった点は、主に7つあるので、順に説明していきます。


1:タイムループが万能すぎる

 まずこれ。みんな大好きチートです。

 開発者モード、デバッグモード、GODモード。なんでもいいんですが強すぎます。

 今回は、タイムループが「因果関係を破壊する」機能をキャラクターに与える使い方をします。

 なので、そのままでは「過去に戻れるなら○○すれば一発じゃね?」みたいな感じになって、物語が物語にならず、あっけなく終わってしまう。


 最強の矛で無双する話も最初は楽しいですが、チートしまくるだけだと、いずれマンネリ化して飽きます。

 対抗馬として最強の盾が出てくると「え、どうなるの?」ってなって面白いんですよね。


 タイムループも最強の矛みたいなところがあるので、盾役、ブレーキ役になる周辺要素とか状況を、用意して駆使しないといけないわけです。

 例えば、親殺しのパラドックス(自分が生まれる前の過去に戻って、自分の親を殺したら、因果関係どうなるの問題)を使うとか、時間の跳躍先や回数に限界があるとか、過去での行動に制限があるとか。

 そこは作品ごとのオーダーメイドなアイデアで絞らないといけないわけです。

 マジ巻で、このブレーキ役に何を使ったのかは、後で話をすることとしましょう。



2:周到な準備が必要

 先の項目でも書きましたが、タイムループ要素は単体では動かしにくいので、他の要素と連動することになります。

 つまり、作者はあらかじめ準備をして「ちゃんと機能するか」「同居してケンカする要素や不都合はないか」を検証してから使うことになります。

 思いつきですぐ追加できるものではないってことです。


 すると「書こうとしているシナリオ、プロットに適用できるかな?」とかも気になってきます。私だけかもしれませんけど。

 シナリオ、プロットなしで創作する方式とは、ちょと相性厳しいかなーと思いますね。

 そもそも自分なりにシナリオ、プロットをどう作ろう、みたいなところを確立していないと、まずそこで手間取って体力を使うでしょうし。

 そこにループものの構成負荷の上乗せに対応するのは、楽じゃないと思います。


 想像してみてください。

 連載をストックなしで随時更新してて、途中で「あ、これ成立しなくね?」って気付いたときの自分を。

 「ッスゥ――……詰んだ」と天を仰いだときの絶望感を。



3:「飽き」や「ウンザリ」に対する特別な配慮が必要になる

 「ループものってコピペできるから楽そう」って淡い期待を抱いているそこのあなた。


 そんなこと、ちょっとしかありませんでした!!


 いやあるんかーい。

 同じシーンを繰り返すことは避けられないので、使い回しは発生するのですが。

 創作に限らず、人から同じ話を何度も聞かされると「もうそれは聞いたよ」ってウンザリした反応になると思うんですよ。

 ループものも同じで、変わらない展開がずっと続くとウンザリする。毎回の周回を飽きさせないようにシナリオを準備しておかないといけないわけです。


 使い回しできてラクそうとか、そんな甘さを打ち消して余りあるコストがかかります。

 タイムループ構造は、トータルで見るとコスト削減になりません。むしろ高コストです。

 私が使い回すとき、必ず意図をもってやっています。作品の質が落ちちゃうので。


 それに、ループでは「前回と変わらない部分」と「今回の新規差分・新規情報」をちゃんと準備・管理しておかないといけません。

 シナリオレベルでの配慮が必要になるわけです。

 ここは私が一番気を使って対応した部分なんですが、それでも上手くできたとは自信をもって言えない部分です。



4:本文中での過去の参照・言及に注意が必要になる

 例えば、「イベントA→B→C」と進む物語があったとして、通常、作中で「イベントBのとき~」と過去に言及すれば、イベントBの一点が唯一の参照先になります。


 一方、タイムループ中の区間に「イベントA→B→C」と進むシナリオの場合はどうでしょう。

 イベントA~Cは繰り返し描かれる、なんだったら差分もあるでしょうから、「イベントB」にもイベントB1、B2、B3……の派生形が存在しうるわけです。

 なので「イベントBのとき~」と単純に言及すると、特定の世界線によらない「イベントBの総称」を指すに留まります。

 個別の世界線、時間軸の「イベントB1、B2、B3」を指し示して読者に説明したい場合は、派生形固有の情報を明示して言及しないといけません。


 加えて、読者側がイベントB1~B3を作者と同レベルの詳細度で把握できているとは限りませんから、明示したらOKというわけでもありません。

 重要な部分では、短いあらすじを回想形式で挟むなどして、話についていけるように工夫しておくなどの配慮も適宜必要でした。



5:整合性に問題があっても修正が難しい

 4の話と関連した話なんですが、物語は、ループに限らず本質的に因果の鎖で作られますから、非ループの物語でも、一点を変更すると周辺も変更が必要になることはよくあります。


 仮にループ中の「イベントB」に問題があることに気づいて、修正を考えたいとしましょう。

 ループ物は特定の過去に対する参照や言及が多くなる構造になりやすいですから、修正に連動して直さなければいけない因果の影響範囲が広くなります。


 個別のイベントB1~B3の派生差分に問題がある場合ならまだマシです。

 イベントB全体となると、B1~B3のすべてが修正対象、なんなら後続のイベントC1、C2、C3をはじめとした周辺の因果に対する修正も必要になります。

 影響範囲が甚大になりやすい構造ですから、構成を決めたら修正不可。一撃で決める。


 今回、私は予め構成を詰めてから始めたこともあって、幸いにも整合性問題に遭遇しませんでした。

 とはいえ、自分に見落としがあって整合性問題が出るのでは、という不安は書いている途中ずっと片隅にありました。

 (私がまだ気付いていないだけ説)



6:上手くタイムループが設計できても、実際に書けるスキルがないと意味がない

 「普段はノープロット派だけど、タイムープだけはプロットを作ろうかしら」という方には、私はおよしになって、と意見します。


 というのも、「設計図面を引くこと」と「図面の要求に従って実物を作ること」は別のスキルであることと同じで、プロットを上手く設計したことは、作品が上手く作れることを保証しないからです。


 タイムループでは、時間や状況の制約がある中で、計画したタイミングで、計画した状態への遷移と準備が完了している必要があります。

 例えばある場面の、あるキャラクターが発する言葉の選びや、ニュアンスのひとつが、重要になります。それは非タイムループでも重要ですが、タイムループでは特に重要です。


さながら探査機の軌道遷移のためのスラスター噴射のようです。あれも計画時刻に、計画位置に存在する必要があって、計画した角度で、計画した時間、指定の条件での推進が必要だそうですよ。


 私はプロット型ですが、今回のループシナリオでは、あるときは数千文字、あるときは1万字越えの原稿を白紙にして書き直す作業を何度かしました。

 指定タイミングでの突入精度に満足いかなかったためです。

単に私が低スキルで、文才がないからかもしれませんけどー


 慣れないプロット進行に、タイムループの負荷上乗せは結構キツいです。

 ですから、まずプロット型で、タイムループのない、時間進行がシンプルな作品をいくつか作って、自分の傾向の確認と素振りをしてからチャレンジした方が、余計な負荷を見なくて済むと思います。


 プロットに従って作りながら、どこまではアドリブでも影響しない、ここからはプロットに影響しうる、という影響範囲の勘所とか、プロットに従ってどれだけの精度で物語を展開できるか、とか。

そういうのが把握できれば、自分に合った計画法も見えてくると思いますし。


 もちろん、私のオススメなだけで、チャレンジしてみるのもいいと思います。

 やってみたら割とできるかもしれないですし。



7:タイムループが作れることと、面白い作品であることは別の問題

 これ。これですよ。

 如何にテクって綺麗なループものが、整合性問題のない話が書けたとして、それが面白いかどうかは別の話です。

 ループ構造、整合性みたいな論理だけじゃなくて、ちゃんと感情とかエモさとかの両立が必要です……必要か?


 私は書いたものを面白いと思っているけど、私だけかもしれない。

 そこは開き直るしかないですよねぇ!


 「面白いかどうか」みたいな観点で見るものは、独りよがりでいいと思います。

 読み手にとって、その独りよがりが面白いかどうかって話で。

 独りよがりの生搾り100%がベストかというと、そこは塩梅ってやつだとは思うんですけど。

 


 さて。 言うはヤスシ、行うはタカシ。

 ヤスシの理想論に対して、タカシはいかにして対応したのか。

 次回からは、一般論から離れて、具体的にどうやったのか? をお話しします……たぶん。

言うは易し行うは難し、ね。

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