36 友達の望み
サラとラーファを宿に残してきてから、しばらく。
僕はクリスさんに連れられて、2人で人通りの少ない川沿いの道を歩いていた。
ちなみに向かう先は大聖堂――ではなく、ヘンゼルさんの金ぴか屋敷。
最終的な目的地である大聖堂へと向かう為に、まずはお屋敷に全員で集まるというのが今日の予定らしい。
「見てください、縁殿。魚が泳いでるのが見えますよ。川ですら輝いて見えるのは流石は聖都と言った所でしょうか」
「初日から薄々と感じてたけど、クリスさんも今回の任務楽しみにしてたでしょ?」
隣を歩くクリスさんは宿を出てからこの調子で、すごく楽しそうに聖都を満喫していた。
思い返してみればクリスさんは聖都行きの馬車でもニコニコしていて、宿に入った時もうっとりとした表情で窓辺から外を眺めていた気がする。
きっと聖都の観光――もとい、外交がすごく楽しみだったんだと思う。
だから、その、本当なら楽しんでいる所に水を差したくはないんだけど……。
「ねぇ、クリスさん。聞きたいことがあるんだけど、いい?」
「……大体察しがついていますが、なんでしょうか?」
僕の言葉にクリスさんは笑みを消して、表情を引き締めた。
ごめんねクリスさん……でも、聞かないのもマズいと思うから。
「ラーファって結局何者なの?ただの貴族ってわけじゃないんだよね?」
ヘンゼルさんの反応を聞いてから、僕はずっと不思議だった。
今回の任務は軽く聞いた範囲だけでもすごく大事で重要な任務に感じるのに、ヘンゼルさんは同行を許すどころか大々的にラーファを認めて、その上僕達にはラーファの素性すら明かしてくれることはなかった。
これは明らかにおかしいと思うんだよね。
「実のところ私にも詳しい正体はわかりません。ただ、ある程度の推察はできます」
ダメ元みたいな質問だったんだけど、クリスさんには心当たりがあったらしい。
クリスさんは人差し指を1つ立ててから、推察の内容を説明してくれた。
「1つは本当に逃亡してきた司教の娘という可能性……ですが、これではヘンゼル様の反応が説明できません。ただの司教の娘であればあそこまでへりくだるのは不自然ですから。なので――」
クリスさんは一度言葉を区切り、指をもう一本立ててから言葉を続ける。
「もう1つの可能性として、ラーファさんは“大司教”の娘ではないかと、私は考えています」
「大司教?」
それって、クリスさんがサラに貴族アピールをしていた時に聞いたような……。
確か、帝国の御三家と同じくらいに偉いんじゃなかったっけ?
「大司教とは、簡単に言えば司教を束ねる司教のことです。その権力は聖都のトップである聖女から1つ下――つまり、聖都で2番目に偉い人達なので、外交的に見ても絶対に無視できない相手なんです」
うわぁ、国で2番目なんて、怖すぎだよ……。
そんなすごい人に脅されたんだったら、ヘンゼルさんが蒼白になるのもわかる気がするかも……。
「ですが、それでも納得できないところがあります。相手の後ろに大司教がいようと毅然とした態度を取り、対等に渡り合う。それが外交官であると、私は思っていたので……」
しかし、納得していた僕とは違い、クリスさんは難しそうな表情を浮かべると……ゆっくりと3本目の指を立てた。
「ない、とは思いますが。もしかすればラーファさんは聖女の――」
けれど、僕はクリスさんの説明を最後まで聞くことはできなかった。
何故なら――突如として響き渡った“爆発音”が、僕達の会話を邪魔したからだ。
「っ!?何事ですか!?」
クリスさんが素早く周りを見渡している間にも、爆発音は止まらない。
それは何回も何回も響き渡り、周囲を揺らし……しかも、段々とこちらに近づいてきているようだった。
「はっ!サラとラーファは!?」
僕は剣に手を掛けながら、急いで来た道を振り返る。
すると、空には七色のオーロラみたいなのが浮いていて……?
え、あれ、なに?
「これは、魔法の……?まさか!?」
同じくオーロラを見たクリスさんの呟きを聞いて、僕は猛烈に嫌な予感に襲われた。
「もしかしてサラが何かしたの?」と、そう考えた瞬間……遠くの方から、何だか見覚えのある小柄な金髪少女が凄まじい速度で近づいてくるのが見えてしまった。
やっぱりサラが――ん、あれ?サラさん?なんか浮いてない?
「ゆかりー!!!ラーファをたのんだわよー!!!」
何故か地面スレスレで飛行してきたサラに困惑していると、サラは叫びながら何かをこっちに飛ばしてきた。
それは、水色の髪をした――ってまさか!?
「――ふぇええええええええ!?」
情けない声を上げながら突っ込んでくる“ソレ”を、リバージョンを使って優しく受け止める。
「リバージョンの訓練をしててよかった」と、冷や汗を拭いながら受け止めた人物を見れば、そこには案の定、表情をフニャフニャにしたラーファの姿があった。
「ど、どばざないでっていっだのにぃいい……!」
何でこんなことに……。
状況が飲み込めず、思わずサラの方を見ると、
「さっさとくたばりなさい!」
《――水と雷よ、その奔流を以て我が敵を襲え!》
何故かサラは杖の先から眩い光と音を放つ大量の水を噴き出して、黒いフードを被った怪しい人達をまとめて押し流しているところだった。
“水と雷”とか言っていたし、合体してる感じなのかな、あれ。
「ねぇ、ちょっと。なにぼーっとしてるのよ」
「え?うわぁ!?」
声に驚き隣を見れば、いつの間にかサラが僕の横でフヨフヨと浮いていた。
魔法に見惚れていたせいで気付かなかった――じゃなくて!
「さっきの人たちは?まさか死んでないよね……?」
さっきの魔法は明らかに普通じゃなかったし、威力も高そうだった。
僕は自分の顔から血の気が引いていくのを感じながら、サラに問いかけた。
「追っ手のこと?ラーファが『手加減してください』って言ってたから殺してないわよ」
よかった、死んでなかった……。
サラの言葉にほっとして息をつく。
サラもああ見えて加減はしてくれるし、絶対にそんなことにはならないと思うんだけど。
この世界の人はすぐに殺すとか言い始めるから、本当にするかもしれないって心配になっちゃうんだよね。
「縁様ぁ、うぅ……」
「ラーファは大丈夫……な訳、ないか」
ひとまず、サラのことは置いておくとして。
僕は体を震わせながら抱き着いてきたラーファの頭を撫でながら、倒れている黒フードを見つめた。
確かラーファは『追っ手から逃げてきた』って、言っていたはず。
つまり、あれこそが例の追っ手、ってことだよね。
「……ごめんね、ラーファ」
「はぅぁ!?」
あんな怪しい人達に追われていたんだから、怖いのは当然だよ。
言葉と共に、未だに震えているラーファの体を抱きしめ返した。
目の前で襲われる姿を見るまで実感が持てなかった自分が恥ずかしい。
最初に守るって約束したのに、何より僕は勇者を目指しているのに。
任務を守るって事に目が向いて、大事なことを忘れていた気がする。
「よし」
ラーファを守るためにも今回の任務は断ろう。
僕は覚悟を決めて――今までじっとこちらを見ているだけだったクリスさんに視線を返した。
「まぁ、そうなりますよね……」
けれど、クリスさんは溜息をつくだけで、反対も文句も何も言わなくて。
「縁殿、私はサラと一緒にあの者どもを調べてきますので、ラーファさんの事は頼みました」
クリスさんはそう言って僕に微笑むと、サラを小脇に抱えながらさっさと黒フードの所まで歩いて行ってしまった。
それだけはダメですって、怒られると思っていたのに。
「縁様……」
クリスさんの様子を不思議に思いながら、聞こえてきた声に目を向ける。
腕の中ではいつの間にか目を赤く腫らしたラーファが、不安気な表情で僕のことを見上げていた。
そんなラーファの姿に僕は自然と――あぁ、そうか。
きっと、クリスさんにはバレていたんだ。
僕がこの状態のラーファを見て任務を優先するはずがないって、だから何も言わずに頼むって……。
「何があったのか、聞いてもいい?」
ラーファの瞳を見つめながら真っすぐに問いかける。
力になりたいんだって気持ちを込めて、真剣に。
すると、その気持ちが伝わってくれたのか。
今度は誤魔化さずに――ラーファは僕に“本当の事情”を話してくれた。
「実は……わたくしはあの方達から逃げてきたのです」
「逃げてきたって、なんで?」
あの方達っていうのは黒フードのことだよね?
恐らくは大貴族のお嬢様であるラーファが単身で逃げなきゃいけないなんて、一体どんな事情なんだろう?
ラーファの背中をポンポンと撫でながら言葉の続きを待っていると、ラーファは言葉を震わせながら話を続けた。
「あの方達にわたくしは、いつも見張られていて、お母様も話を聞いてくれなくて……」
いつも見張られていて、家族が話を聞いてくれない……?
つまり、ラーファは――
「ラーファ、顔を見せて」
僕はうつむいていたラーファの顔を持ち上げて、もう一度その瞳を真っすぐに見つめる。
髪色と同じ色をした瞳は潤み、今にも泣きそうな表情で……。
それだけでラーファがどんな目に遭ってきたのかが、僕には分かってしまった。
きっと、ラーファは……狙われていたんだ。
でも、家族は話を信じてくれなくて、それで逃げ出した――いや、もしかしたら家族を守るために飛び出したのかも。
どちらにせよ、ラーファは外に助けを求めて、そこで僕達と出会ったんだ。
今思えば、路地裏でラーファを襲っていた男の人も怪しかったし、あれも黒フードの仲間だったのかもしれない。
街中で堂々と襲い掛かってきたことを考えれば、かなり危ない人達なのは一目瞭然だし……。
それなら、僕は――僕を騎士様だと呼んでくれた彼女に、なにができるんだろう?
そう考えた時、ふと、脳裏にラーファから言われた“あの言葉”が浮かんできた。
『――わたくしを連れ去ってください、騎士様』
……また、クリスさんには怒られちゃうかもだけど。
「ゆ、縁様……?」
気付けばラーファの瞳は不安そうに揺れ、胸の前で合わされた手にも力が籠っているようだった。
13歳なんて、前世じゃ小学校から上がったばかりくらいの年齢なのに。
それなのに、こんな重荷を背負わされて。
「ラーファは、どうしたい?」
「どうって、何を……」
「これからのことだよ。ラーファの望みを聞かせてほしい」
「望み……」
ラーファは呟きながら僕から目を逸らし、視線を落とす。
「わたくしの、望みは」
けれど、言葉と共に顔を上げたラーファの表情は既に悲しみを帯びたモノではなく。
それはまるで、覚悟を決めたかのような表情で。
「わたくしは……縁様とずっと一緒にいたい!離れたくない!」
それがラーファの――友達の望みなら。
「ラーファ」
ラーファの唇に指を当て、言葉を止めさせる。
「僕は、僕は君を」
視線の先で、ラーファの瞳が揺れ動く。
不安げなその瞳に、僕は安心させるように微笑みかけた。
「――僕は君を連れ去るよ。誰にも渡さないように」
僕にできることなんて、たかが知れてる。
だけど、それは友達を助けない理由にはならないはずだ。
それに僕だけじゃ無理だったとしても、帝国に帰れば……流石に王宮なら悪い人も簡単には入れないはずだし。
だから、この国から――って!?
「きゅぅぅうう……」
「ラーファ!?」
僕がこれからの事を考えている間に、一体何があったのか。
突然、ラーファは鼻血を吹き出して……そのまま気を失ってしまった。
「えぇと……」
思い当たる原因といえば――サラの魔法、ぐらいしかない。
よく思い返してみれば、ラーファはすごい速度で飛ばされていたし、頭をぐわんぐわん揺らされていたっぽいし……。
うん、間違いない、絶対そうだ。
僕はラーファを背負ってリバージョンで治療しながら、クリスさんと一緒に戻ってきたサラを叱ることにした。
「魔法は考えて使わないとダメだよ!」「怪我したら大変だよ!」って感じで説教してみたんだけど。
「……出来の悪い魔法に付き合わせちゃったし、今回に関しては反省するわ」
なんと、珍しいことにサラも悪いとは思っていたらしい。
とてもしおらしい態度で、本当に反省しているみたいだった。
明日は槍でも降るのかも……なんて思うのは、流石に悪いよね、うん。
ともかく、これで一件落着――
「……縁殿、サラとラーファさんを連れて大聖堂まで行くことはできますか?」
と、そう思った矢先に、クリスさんが真剣な表情でそんなことを言ってきた。
予定ではヘンゼルさんの屋敷に集合してから、大聖堂に向かうはずだったと思うんだけど……?
「ヘンゼルさんの屋敷には行かなくていいの?」
「実は少々事情が変わりまして……。このまま屋敷に向かうのは危険であると判断しました」
え、危険?
物騒な言葉に驚く僕に対し、クリスさんはあるものを見せてきた。
それは宝石の付いたナイフのようなもので、綺麗だけど武骨な……本能的に怖いと感じるモノだった。
「これは“魔装具”というもので、魔力を通わせて使う“兵器”です。普通の賊が持っている代物ではありませんし、用意できるとも思えない……大規模な組織が裏にいる可能性を示す、確かな証拠です」
魔装具って、確か前にも――そうだ、アスカルさんが着てた鎧が魔装具だとか聞いた気がする。
「そんなに危ないモノなの……?」
「魔法の威力を数倍に高めるタイプもあれば、ある程度の詠唱を放棄して魔法を発動できるタイプもあったりと種類が多いので一概には言えませんが……。このナイフは私の剣と同じく属性魔法を剣に通して効果を発揮するタイプで、完成度も高くかなり危険な物です」
『かなり危険な物』という言葉に息を呑む。
ただ、話はそれで終わりではないらしい。
クリスさんは更に表情を険しくしてから言葉を続けた。
「間違っても、一般に普及している物ではありません。しかし、あの賊は全員がこれと同じものを持ち、統一していた――もはや賊というより、軍ですね、これは」
賊というより軍、それがラーファを狙っていた組織の正体なんだ……。
予想が半ば当たっていた形になり、嫌な汗が出てくる。
でも、そんな危ない相手から守る為には怯えてなんかいられない。
僕は怖がる気持ちをどうにか追い出して、クリスさんを見つめた――んだけど。
クリスさんは表情を崩さずに、次の瞬間には信じられないことを話し始めた。
「この件は決して小さい問題ではありませんし、“教本”にもこういったことが他国で起きた場合は迅速な帰還を考慮すると書いてありました。それに今回の任務において私達は専門外であり下っ端です。たとえ納得できなくてもヘンゼル上四位が退却を命じたならば従う義務がありますし、仮に勇者である縁殿が反対をした場合でも“無理やり”帰還させられることになるはずです。そして、その場合……元凶であるラーファさんを聖都へと置いていく可能性は、低くありません」
「ラーファを見捨てるってこと……!?」
あまりにもひどすぎる内容に、思わずクリスさんへと詰め寄る。
けれど、クリスさんは僕の言葉に首を振ると――何故か目を逸らしながら、言葉を続けた。
「だからこその別行動なんです。私だけがヘンゼル様の屋敷へと赴くことで、帰還の命令をその場で出せないようにしつつ、その間にこの国で一番安全な場所――大聖堂にラーファさんを連れていくことで安全を守るというのがいいのではないかと、そう思ってですね……」
それは、つまり。
「クリスさんも、協力してくれるってこと……?」
「そういうことに、なりますね」
クリスさん……!
やっぱり、クリスさんはわかってくれてたんだ!
嬉しくなってクリスさんを見上げると、クリスさんは苦笑いと共に頬を掻いた。
「騎士としてあまり褒められた行為ではありませんが、こういう時に縁殿が頑固なのはわかっていますし……私もラーファさんを見捨てたいわけではありませんから」
その言葉に、僕の心は感謝の気持ちでいっぱいになった。
ヘンゼルさんに怒られちゃうかもしれないのに……。
「クリスさん、ありがとう!」
この優しさを無駄にしちゃいけない!
僕はクリスさんに頭を下げた後、気合を入れてサラの方へと振り向いた。
「サラ、準備できてる?」
「ん、あぁ、大丈夫よ。あらかた珍しいものは回収できたし、いつでも出発できるわ!」
回収って、なんのこと――って、嘘でしょ。
振り向いた視線の先には、黒フードの懐から魔装具を取り出すサラの姿があった。
静かだなぁとは思っていたけど、まさか“物を盗んでる”なんて思うわけないじゃん。
思わずあ然としてサラを見つめていれば、何を勘違いしたのかサラは僕に向かって偉そうに胸を張ってきた。
「絵本にね、“盗賊の持ち物は倒した人の物”って書いてあったの。ふふん、あたしの初戦果……羨ましいでしょ?」
うわぁ、むかつく。
どうやら、サラは僕が見つめている理由を羨んでいるからだと思ったらしい。
勘違いも甚だしいよ、うん。
「僕には盗んでるようにしか見えないけど……?」
「盗みじゃなくて報酬よ!悪い奴を倒したご褒美なんだから、あたしが貰って当然なの!」
サラはそう言って胸を張ってから、いそいそと黒フードから奪い取った品々をローブの内側にしまい込んだ。
もうその振る舞いからして犯罪臭がすごいけど……サラの話が本当だとするなら、これは盗みではなくゲームでいう所のドロップアイテムのようなモノ、ということらしい。
僕としては、いくら相手が盗賊だったとしても、許されていたとしても、勝手に奪うなんていけないことに思えるというか。
悪いことをした人だからって悪いことをしていいわけじゃないし、できれば返してあげてほしいんだけど……。
「……行こう!」
ただ、今は説得よりもラーファの命が優先……だから。
そうだ、悪いのはサラなんだし、僕は悪くない――なんて、言えるわけないよね、うん。
うぅ、これって勇者的にはマイナス点かも。
内からこみ上げてくる罪悪感に襲われながら、僕はサラを連れて大聖堂――聖都の中心にある大きい塔まで走り出した。
最初は追っ手を警戒していた僕達だったんだけど、運がよかったのか道中誰にも襲われることはなく。
僕達は順調に大聖堂まで近づき――気付けば、あと数十メートルという所まで辿り着くことができた。
「近くで見ると、尚更でかく見えるわね……」
フヨフヨと飛びながら着いてくるサラに頷きを返しながら、視線を前へと戻す。
見上げた先では、太陽を反射して神々しい光を放つ大聖堂が天に向けてそびえ立っていた。
もうすぐ、ゴールだ!
僕は走る速度を早め、そうして大聖堂の入り口が見える場所まで辿り着き――
「……え?」
けれど、その直後に……僕達は足を止めることとなった。
疲れたわけじゃないし、追っ手が来たわけでもない。
ただ、“通れなかった”だけ。
「貴様ら、要件を言え。何が欲しい?何を求める?……何が目的だ」
足を止めた僕達に対して黒い装束を着た人型の動物――昨日見た、豚獣人の狼版のような“ヒト”が、大聖堂の入り口から威圧的な言葉を放ってくる。
でも、僕達が足を止めたのは、それだけが理由じゃない。
「なによ、こいつら……」
サラが絶句している。
もちろん、僕もだ。
そう、僕達の目の前には。
剣と鎧を携えた“大勢の騎士達”が、大聖堂を守るように立ち塞がっていたのだから――




