魔剣コクバ
修正
2対の短剣⇨1対の短剣
ローナさんにミルさんも一緒に連れて行く様に言われた。出発の準備にだけでなく、迷宮にもだ。何故か聞いてみると可愛い子が多い方が良いでしょ? って言われてしまった。それは可愛い子が多い方が良いけども……実力もあるから大丈夫だし、ヘルガーさんには了承済みとのこと。そう言われてしまえば、僕には何も言えない。マリンティアさんも了承しているし。
そんなわけで今は3人でこの城の中にある武器庫までやってきた。
その間は気まずすぎて誰も話さない。何故ならミルさんが物凄く引っ付いてくるからだ。それはもう、じゃれる様に引っ付いてくる。それを見たマリンティアさんは物凄くイライラしているし……
「さあ、着いたわよ!」
そういう、マリンティアさんはやっぱりイライラしている……
「わかったよ、マリンティアさん。ミルさん、少し離れてくれると有り難いんだけど……」
「ヤダ」
「ヤダって、そんな子供みたいな」
「今はあなたに私の匂いを付けているところだから」
それはどういう事なんだろう? そんな疑問を持っているとマリンティアさんが教えてくれた。
「あなたあまり獣人族と関わった事がないのね。獣人族って言うのは気に入った相手や家族に自分の匂いを付けて自分のもの、自分と親しい人ってアピールするのよ。あなたはミルにそれをされているの」
と、マリンティアさんはジト目でこちらを見てくる。
「えっ! ミルさんそんな重要な事を僕にしていたんですか? ミルさん! それは好きな人や大事な人にしないと!」
そう言って離れようとするが、ミルさんは余計に抱きついてくる。なんで!? 今日会ったばかりなのに何故こんなに気に入られているだろう?
「あなたの側にいると落ち着く。お父さんと同じ匂いがするから」
……そうなんだ。それを聞いたマリンティアさんは笑い出す。
「良かったわね、エル! 匂いが好かれて!」
こういうところはあの人の娘だと思ってしまう。
そういながら武器庫に入っていくマリンティアさん。ぼくもミルさんを引き剥がすのを諦めて一緒に入っていく。
城の中だけあって大量の武器が保管されていた。剣や槍、弓に籠手、ハンマーや斧など様々な武器所狭しと並べており、見ていると楽しい。中には鞭や、誰が使うんだろうっていう様な大鎌などがあった。
「この中には普通に集めた武器もあるんだけど、お父様が趣味で作った武器もあるから気をつけてね」
なんと! ヘルガーさんは武器も作れるらしい。
「ヘルガーさんって武器作れるんだ?」
「長く生きていると色々なものに手を出したくなるみたい。それでドワーフに鍛冶の仕方を教えてもらったのよ。100年近く作り続けたみたいだから結構良いものも作っているみたい」
へえ〜、そんなに良いものもあるんだ。探してみようかな?
「だけど、お父様の魔力が高いのと魔族で闇魔法が得意なせいか作ったもの全部に、何らかの能力が付与されているの。俗に言う魔剣とか魔槍とかそういうものね。呪いを受ける代わりに攻撃力を上げる魔斧とか、血を媒体に能力を上昇させる剣とか」
……前言撤回で。普通が一番だね。さあ、探し始めるか。
そんなこんなで色々探してみるがピンとくるものが少ない。マリンティアさんはミルさんの装備を一緒に探してあげている。マリンティアさんは自分のがあるとの事。
武器庫を歩いて行くと、一つの箱が目に入った。僕はその箱を開けてると中には漆黒の剣がはいっている。その剣を持ってみると、黒い感情が流れていくようだ。これはやばい! そう思い、光魔法の『鎮静の光』を自分に使用。ふう、何とか落ち着いたな。
そう考えているとちょうど2人がやって来た。
「あ、2人とも。良いものは見つかった?」
「コレ」
ミルさんがそう言いながら見せてくれたのは1対の短剣だった。
「これは……属性付与がされている?」
「よくわかったわね。この短剣はお父様が作った武器で炎剣フレングス、水剣ディーネ。火竜と水竜の牙で作ったみたい。切れ味は抜群だし、それぞれに魔力を流す事で火と水を発動する事が出来るわ。その代わりなんだけど、防御力をほとんど無くなるっていうペナルティがあるんだけどね。まあ、スピードで翻弄しながら攻めるミルには合っているかも」
なんと扱いの難しい武器なんだ。相手を攻撃するにも短剣だから近づかないといけないし、近づくと攻撃されるから防御力が無ければとても危険だ。
「エルは見つかったの?」
ミルさんの使う武器に驚いていると、マリンティアさんに聞かれた。
「あ、僕はまだなんだけど、この武器が気になるんだ」
そう言いマリンティアさんに箱の中を見せる。
「これは確か……お父様が作った魔剣ね。名前は確か魔剣コクバだったかしら。闇魔法の中にある影を使う魔法を使えるんだけど、持った人は感情が乗っ取られるみたいよ。あなた大丈夫なの?」
「少し危なかったけどね。光魔法を使ったら何とか抑えられたよ」
「へえ〜、光魔法ってそんな事までできるのね。大丈夫そうならその武器にする?」
「うん、これにするよ。もともと剣を使っていたし」
武器を選び終えた僕たちは、そのあとは着ていく防具を選んだ後、持っていく食料をなどの準備をするために街へと出た。
よろしくお願いします!