ミルファ・ロウ
そこに、先ほどヘルガーさんに追い出されたはずのグレイたちが立っていた。
「何のようですか?」
僕が、そう聞くとグレイは、
「そんなの決まっているだろう! お前のような小僧にマリンティア嬢は似合わない。私の隣にいてようやく輝けるのだから!」
と、自信満々に言い出す。隣にいるマリンティアさんの表情を見てみると、ものすごい嫌悪感を表している。なんで気づかないんだろう。
先ほど、食事の時にマリンティアさんに聞いたのだが、 この人は若手の中でも実力があり、女性からはかなりモテるらしい。見た目は確かにイケメンだ。金の長髪を後ろでくくって、普段は優しそうな表情をしている。そして、特徴的な2本の角が羊の角のように生えている。
種族は悪魔族といい、すでに下位悪魔から上位悪魔に進化している。
それ程の実力がありながら、ヘルガーさんに認められないのはやっぱり魔族主義を掲げているかららしい。
「そんな小僧と一緒にいても何も良いことがありません! さあ、マリンティア嬢! 私たちと行きましょう!」
「嫌よ!」
「……」
すぐに即答されるグレイ。少し哀れだ。表には出さずに心の中で笑っておこう。
「ププ」
「何がおかしい!」
僕が心の中でそう思っていると、後ろに控えている2人に笑わられていた。折角我慢したのにダメじゃないか。
「グレイ様。マリンティア様はグレイ様のことは眼中にないみたいですよ」
そう言ってまた笑い出す、左側にいる牛頭の魔族。種族は牛人族。まあ、見た目通りだね。背丈は2メートル近くあり、背中には僕の背丈ぐらいある大きな斧を背負っている。
「確かに、そんなドヤ顔で見られても困るだけだし」
そう言ったのは、牛頭とは反対にいるトカゲ頭だ。種族は爬虫人族で背丈が牛人族よりも大きい。この2人が大き過ぎて僕と、マリンティアさんは見上げなければならない。首が少し痛い。
「な! 私はそんな顔をしていないぞ!」
本人は気づいていないようだ。その顔を見るたびにマリンティアさんの顔が引きつっていくのを……
「ええい! とにかく貴様のような小僧にマリンティア嬢を任せられるか!」
「ええっと、マリンティアさん? こういう場合はどうしたら良いのだろう?」
僕がマリンティアさんに聞くと、
「こういう場合は決闘するのが一番ね。魔族の国は良くも悪くも実力主義の国だから。この男みたいにね」
そう言って指をさすマリンティアさん。確かに少し変わっているような気がする。後ろの2人が補佐役みたい。
「それは良い考えだ、マリンティア嬢! では小僧! 決闘だ!」
これはやっぱり受けないといけないのだろうか? 出発前に戦うのはちょっとなぁ〜
そんな事を考えていたらそこに
「あなたたち何をしているのです!」
ローナさんがやってきた。隣にはまた見たことがない女が立っている。獣人族のようだ。耳と尻尾が生えてるからね。
「あっ! ローナ! それにミルも!」
「何をしているのですか、マリア様。これからのためにエルさんに彼女を紹介しようと思い訪れたら、何か言い合っているし」
「ローナ様! 今から私とそこの小僧の決闘を行います! 立会いをお願いします!」
「ダメです。エルさんとマリア様はヘルガー様からの任務があります。今日はその任務の準備をするよう言われていますので、エルさんにそんな時間はありません」
またしても即答されるグレイ。そして笑う部下2人。少しグレイが可哀想に思えてくるのは僕だけだろうか?
そんなことを考えているとグレイが
「小僧! 絶対に貴様のことは許さないからな! 覚えていろ!」
と、悪役っぽい事を言って立ち去るグレイたち。結局何がしたかったんだろうか?
「はぁ、実力はあるんだからあれで少しで頭が良ければまだマシなのに」とマリンティアさんは溜息をつく。
「まあ、無事だったのですから良いじゃないですか。それより紹介しても?」
「そうね。じゃあ私が紹介するわ。彼女の名前はミルファ・ロウ。獣人族のなかでも珍しい金狼族って言う種族なの」
たしかに金髪で金色の目をしている。少し眠たそうな雰囲気があるが、目には強い意志がある。とても整った顔をしているから少し無表情に見える。
「ミルファさん。僕の名前はエルと言います。よろしくお願いします」
僕は笑顔で手を差し出す。握手を望んだんだけどミルファさんはじっと僕を見てくるだけだ。どうしたんだろうか? ミルファさんも美女だからそんなに見られると照れてしまう。
「ミルファさん?」
「ミルでいい。みんな私の事をそう呼ぶから」
そう言いながらもまだずっと見てくる。何か付いているのか? もしかして、食事の後が? それならかなり恥ずかしい! そんなものをつけたまま、グレイたちと話していたなんて。
「急に慌てだしてどうしたのよ?」
「えっ? だって僕の顔に何か付いているんでしょ? ミルさんがこんなに見てくるんだから」
そう言うと、マリンティアさんは笑い出した。
「ああ、その事ね。これはミルの癖なのよ。気になる相手はじっくりと観察するの。自分が納得いくまでね。良かったわね、気に入られて」
良いのかな? まあ、マリンティアさんがそう言うんだし良いか。そんな姿を見てミルさんがクスッと笑ってくれたように見えたのは気のせいだろうか?
これが、僕とミルの出会いだった。とても眠そうだったね。
よろしくお願いします!
追記 7月2日
感想で今回の話がかなりおかしいとの指摘があり、もう一つ考えていた方に変更しました。ミルもヒロインの1人でもう少し後に出すか、今回のように出すか迷っていました。変更前を読んで頂いた皆様には申し訳ないのですが、変更後の話で進めていきたいと思います。
今後ともよろしくお願いします!




