↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/54

地下の惨状

 僕はここの領主であるガラネス伯爵に、兵士たちに連れ去られた女性たちの元へ案内させる。後ろには侍女が2人ついてもらう。相手は女性だからね。この戦争が始まったのは3日前だと聞く。それより前に軍が来て準備をしていた期間を含めれば1週間ほどだろうか。


 屋敷の中を伯爵に案内して貰い数分ほど。兵士の話だと地下にいるという話だったのでそこまで連れて行ってもらう。地下の入り口には兵士が2人立っており


「これはガラネス伯爵。もしかして楽しまれに来ました? 女どもも1週間近くヤれば大人しくなりましたよ。少し従順過ぎて面白みに欠けますけど。やっぱり、反抗的でないと。伯爵の元夫人や元令嬢みたいに」


 ぎゃははは! と気持ちの悪い笑いをする兵士たち。それよりも聞き捨てならないのが、なんで伯爵の夫人や令嬢がこの中にいるんだ? 伯爵に言うって事は……。


「伯爵、あなた。自分の家族を……」


 僕が言おうとした瞬間、


「お、お前たち! こいつは侵入者だ! 今すぐ殺せ!」


 と伯爵が叫ぶ。兵士たちは驚きはしたが、雇い主の命令に逆らうわけにもいかないので剣を抜く。


「侵入者なら仕方ねえな。死んでもらうぜ!」


 と剣を突いてくる。僕は右横へずれ避ける。そして左手で顔面を掴む。


「うぐっ! ば、ばなぜ!」


 顔面を掴んだまま持ち上げる。兵士の足が地面につかないくらいまで。足をばたばたさせるが、僕は離す気はない。僕はこのまま頭から地面に叩きつける。


「ヒィィ!」


 おっと、後ろにいた侍女たちには少し刺激が強過ぎたようだ。そしてもう1人の兵士の方を見ると、ガタガタと震えていた。その兵士に僕は一歩一歩近づく。それに伴い兵士は一歩一歩と下がってしまい、壁際まで下がってしまった。


「ひっ! く、来るな! 来るなぁ!」


 恐慌状態に陥った兵士は剣をデタラメに振り回す。危ないな、もう。僕はその中を進み、そして、剣を掴みへし折る。兵士は剣と僕を見比べて座り込んでしまう。


「侍女の2人は目を瞑った方が良いよ」


 僕が2人の方を見て笑顔で言う。2人は頷いて目を瞑ってくれる。僕は兵士の方を向きなおし


「死ね」


「ひっ! た、助けっ!」


 グシャ!


 頭を踏み潰す。このままだと侍女の2人に目を瞑ってもらった意味がないから


「レーヴァテイン、兵士の死体を燃やし尽くせ」


『了解しました』


 そしてレーヴァテインから焔が吹き荒れ兵士が燃えていく。黒炭すら残らない程に燃やし尽くす。これなら大丈夫だろう。


「もう目を開けても大丈夫だよ」


 僕がそう言うと目を開ける2人。でも心なし顔が青い。……あっ、耳を塞いでもらうのを忘れていたから音を聞かれちゃったかな? それは悪い事をしたな。まあ、それは後にして


「ほら伯爵。兵士みたいになりたくなかったらさっさと案内しろ。あと、さっきみたいなことを次にやったら時も同じ目にあうと思え」


 その言葉に伯爵は頷くだけ。まあ、こいつの声なんて聞きたくないから良いんだけど。そしてこの扉を越えた先に連れ去られた女性たちがいると言うが。


「あ、開けます」


 伯爵が開けた先に入ると……うっ、なんて匂いだ。地下牢の湿気やカビの匂いに、汗や排泄物の匂いがする。こんなところに女性たちが閉じ込められているのか。


 中を歩いて行くと両脇に部屋があり扉を開けると……なっ! 部屋の広さは、シングルベッドが二つ置ければ良いぐらいの大きさの部屋に女性が6人ほど。歳は10歳半ばから30歳ぐらいまで様々だ。服は着ておらず布切れ一枚を羽織っているだけ。


 その上、お風呂どころか、布で拭いたりもできていないのだろう。何かに濡れたまま、地面に寝転ぶため、黒ずんでいる。


 僕が女性たちを見ていると、僕が扉を開けたためか、みんなが僕を見てくる。そして、この部屋でも一番の年長の女性が、


「も、もう時間ですか? き、今日は下の子たちの調子が悪いんです。だ、だからお願いですから私たちで勘弁して下さい。お願いします」


 と土下座をしてくる。他に2人ほども同じようにしている。それを見ていた一番年の低い子だろう女の子がごめんなさい、と呟きながら泣いている。


 気がつくと僕の手のひらから血が流れていた。余りの怒りに思いっきり握りしめていたみたいだ。僕はしゃがみ込み、土下座をする女性の頭を上げさ抱き締める。


「もう、大丈夫だから。もうそんなことしなくて良いから、ね?」


 抱き締めた瞬間ビクッと怯えられたけど、僕がそう言うと、安心したのか泣き出してしまった。それに引きづられて他の子たちも泣き出してしまう。


 他の部屋も見てみると、全部で90人ほどの女性がいた。中には10代前半と思われる少女もいたり、僕が近づくだけで、泣き叫んでしまう女性もいた。まだどうなるかわからないが、唯一の救いだったのが「殺して」という女性がいなかったことだ。


 昔に一度依頼で盗賊の討伐をした時に、盗賊のアジトに捕まっていた女性を何人か助けた事がある。その時、アジトにいた内の半分の女性に「殺して」と言われたのを思い出す。僕やアルは何も言う事ができず、言われた通りにやった。盗賊を殺した時とは違う、無抵抗な人を殺した感触が、今でも思い出される。


 しかし、侍女2人じゃ足りないね。


「君たちの2人以外に侍女は?」


「き、今日出てきているのは私たちを含めて15人になります」


「そう、なら全員連れてきて。あとお風呂あるでしょ。沸かすから案内して」


「わ、わかりました」


 慌てて戻る侍女たち。すると誰かが僕のマントを引っ張る。そっちの方を見ると


「わ、私も手伝いますわ。私はここに来てまだ日が浅いので、他の方よりは体力が残っていますから」


 と他の人より何処か気品のある30代前半の女性が言う。そばには目を真っ赤に腫らしている10代前半の少女が立っている。


「もしかして、あなたたちは……」


「はい、私はここの領主であるガラネス伯爵の元夫人です。この子は私の娘です。この度は私たちを助けてくださりありがとうございます。もう少し遅かったら初めの方に捕まっていた方たちは、生きることを諦めていたでしょう。本当にありがとうございます」


「今回は偶々だ。それより、それなら少しみんなを見ていてください。僕は少し離れますので」


 僕がそう言うと元夫人は頷いてくれる。僕は一旦マリアさんたちのところへ戻ろう。必要な物資もあるだろうし。おっと、その前に


「あなたは捕縛させてもらう。シャドウバインド」


 ガラネス伯爵を影魔法で縛り上げる。これなら逃げられないだろう。女性たちのみんなは恨みがあるだろうけど、手出しはさせない。1人が出したら歯止めが効かないだろうからね。


「それじゃあ、お願いしますね。光の道(テレポーション)」


「はい……え? 消えた……」


 僕は、亜人国ディスパーニャの砦へと戻ってきた。熱探知で探すと……お、まだ砦にいるようだ。逃げなかったのかな? 取り敢えずマリアさんたちのところへ行こう。


 砦を歩く事数分。お、いたいた。


「マリアさーん、ミルさーん、クラリスさーん、後カグヤー」


 僕が手を振って呼ぶと4人が一斉にこっちを見る。あれ? なんか怒ってる? 4人ともドシン、ドシンと音が鳴るような足取りでくる。そして


「いったいどこへ行っていたのよ、エル! 心配したじゃない!」


「許さない」


「そうですよ! びっくりさせないでください!」


「ちょっと! 私だけ扱いひどくないっ!」


 と4人に怒られる。1人だけ違うことでだけど。あれ? 伝言は頼んだはずなんだけど。


「僕、ここの兵士に伝言頼んだはずなんだけどなぁ」


「伝言の内容がちょっと入ってくるじゃわからないでしょ! どこに行くかちゃんと言ってから行きなさい!」


 大事なところが抜けていたみたいだ。僕は3人に謝り許してもらう。カグヤには謝らない。カグヤが何か怒っているが、話が進まないので本題に入る。ガラネス伯爵領での事を全て話すと4人は


「ひどい! 女をなんだと思っているのよ!」


「ぶっ殺す」


「許せません!」


「そいつの◯玉潰してやる!」


 と、怒ってくれる。僕も同じ気持ちだよ。ただ、カグヤ恐い。


「それじゃあ、僕と一緒にガラネス伯爵領まで来て「ならん!」……は?」


 僕が4人に来てもらうように頼もうと思ったら、何処からか割り込まれる。そっちの方を見ると、そこにいたのはこの砦の隊長だった。


「なぜ、ダメなんでしょうか?」


「お前たちは我々の援軍に来たのだろう。なら我々の手伝いをしてもらわねば」


 それを聞いた僕たちはとんでもない顔をしていただろう。僕たちの援軍は否定的だった癖に。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。