次の目的地
「ぐぅぅ……こ、ここは?」
俺はあまりの激痛に目を覚ました。目を開ければ夜空を見上げていた。そこに
「気が付いたのねマコト!」
ユフィーがやってくる。俺は起き上がろうとするが、あまりの激痛に体が動かせない。ユフィーの反対側には治療魔法師がいる。まだ治せないのかこの役立たずは!
「ここは何処なんだ? ……そうだ! あの魔族は何処へ行ったんだ!?」
俺はユフィーへ聞くとユフィーは首を横へ振る。
「彼は去って行ったわ。ここには残らないって」
……なんで残って欲しかったみたいな言い方をする。そんなにあの男がいいのか! 一度捨てた男だぞ!
「ユフィー。お前あの男に残って欲しかったのか!」
俺が怒鳴り声をあげると、周りの兵士たちがこちらを見てくる。だが俺はそんなことを気にせずユフィーに迫る。
「お前は一度捨てた男にいて欲しかったんだろ! そうなんだろ!」
「違うわよ! どうしてそうなるのよ。私はただ事実を伝えただけで……」
ユフィーはそう言うが俺は信じられない。俺がユフィーを睨むと顔を逸らすし。
「ちっ! おい、貴様! 治療が遅いぞ! もっと早くしないと斬り刻むぞ!」
俺が役に立たない魔法師にそう言いエクスカリバーを持った瞬間、謎の激痛が胸を締め付ける。
「ぐがぁぁぁあ!」
な、なんだこれは! 今まではこんなことがなかったのに!
「マコト! 大丈夫なの!」
ユフィーが心配気に寄り添うが、俺はそれを振り払う。少しすれば痛みも引いてきたがなんだったんだ今のは……。
「大丈夫なの、マコト?」
「……大丈夫だ。今まではあんな痛みは無かったのになんだったんだ?」
俺がそう呟くと、ユフィーが話し出す。
「エルが制約の焔っていうものをあなたに使っていたわ。なんでも勇者だと思えない行動をすれば激痛が走るって。酷い場合は体が燃えだすって言っていたわ」
……なんだそれは。勇者だと思えない行動だと? いつも勇者として行動していた俺がなぜ痛むんだ! あの野郎絶対に許さない。ぜったいに殺してやる。まずはこの縛られているものを解除しないと。どうすればいいのか。俺がそんなことを考えていると
『マスター。私の能力なら解除する事が可能です』
とエクスカリバーが教えてくれた。
「それは本当か! どうやったら解除出来るんだ? 今すぐやってくれ!」
『今すぐはできません。マスターの魔力が圧倒的に足りていませんので発動する事が出来ません。方法としてはマスターの魔力量を増やすか。他から集めるかです』
「他から集めるってどういう事だ?」
『簡単に言えば他の人から集めるという事です』
成る程。とにかく大量の魔力が必要になるんだな。俺のためにならみんな喜んで魔力を提供するだろう。とりあえずデンベル公爵に相談してみるか。待っていろよ魔族!
◇◇◇
僕は2年前ワンディールさんに出会った森へとやってきた。懐かしいねここも。少し中へ入っていくと
「エル! 無事だったのね!」
とマリアさんたちが僕に気が付いたみたいだ。父上も母上もアルとビルとその家族も侍女たち、それにカグヤやリュウジもいるが、みんな無事みたいだね。
「みんな怪我とかはない? 大丈夫だった?」
僕がみんなに聞くとみんな首を縦に振る。良かった。大丈夫みたいだ。
「……エルは大丈夫なの?」
「え?」
僕がみんなを見ているとマリアさんが心配そうに見てくる。ミルさんもクラリスさんもだ。僕は自分の体を見てみる。何処にも怪我なんて無いみたいだけど。
「違うわよ。あなたの顔色よ。物凄く青いわよ。……あの女に会ってきたのね」
そう言いながら俺の頬を触れるマリアさん。そんなに顔色悪いのかな。それにあの女ってユフィーの事だろう。もう吹っ切っているはずなんだけどね。
「大丈夫だよマリアさん。それよりどうして此処に? ゲートで移動してなかったの?」
「それがね……」
とマリアさんが振り返る。そこには
「ようやく戻ってきたわね、エルさん」
と笑顔のローナさんが立っていた。なんでこんなところにいるんだ?
「どうしたんですかローナさん?」
「少しエルさんに用があってね」
とウィンクしてくる。それを見たアルがデレ〜とした顔になる。まあローナさんとても綺麗だからなあ。銀の長髪に褐色の肌。はち切れんばかりの胸にスカートから見えるすらっとした足。僕もマリアさんたちがいなかったら見惚れていたよ。
「僕に用ですか?」
「ええ。申し訳無いんだけど、亜人国ディスパーニャに行ってくれないかしら」
「亜人国ディスパーニャと言えばゼルテア帝国を川で挟んだ反対にある国ですか?」
亜人国ディスパーニャはその名の通り亜人種に属する種族が生きる国だ。エルフやダークエルフにマーメイド、ドラゴノイドやドワーフなど様々な種族が住む国だ。この国は各種族の長が会議に出席し、その中で多数決で選ばれたものが代表としているはずだ。
「ええ。ディスパーニャとは前から交友があってね何かあったら助け合う中なのよ。ほら亜人種って魔族って判別する人間もいるでしょ? ゼルテア帝国みたいに。そんな人たちから守る為に協力し合ってきたのよ」
へぇ〜。そんな繋がりがあったなんて知らなかった。
「それでね、今回隣の国のゼルテア帝国がこんな時にディスパーニャに戦争を仕掛けてきたのよ。総数5万の大軍で。ディスパーニャは元々数の少ない種族が集まった国だから寄せ集めても1万程にしかならないのよね。一人一人が強いのだけど、向こうもいろいろ魔道具を使ってくるらしくて、苦戦しているみたい。それで救援の要請があったの」
魔族が攻めてくるかもしれないのに他の国に戦争をする? 何を考えているのだろうか? それとも攻めてこられても対策を取っているのか? うーん、考えてもわからないな。
「その戦争の目的ってわかっているんですか?」
「ええ、ゼルテア帝国が以前から欲しがっているものがあるのよ。ゼルテア帝国は持ってなくて、他の国が持っている、エルさんが腰に下げているそれと同じものを」
……神具を狙っているのか。ということは、ディスパーニャには神具があるってことか。
「なるほどですね。それを止める為に行けということですか?」
「それとついでに親睦も深めてきたら? 今後国を作るにしても他の国々と友好でいるのは大切な事よ」
確かに。今回助ければ、今度何かあった時に助けてもらえるかもしれないしね。
「わかりました。行きましょう」
「ありがとう、エルさん!」
とローナさんが抱きついてきた。ちょっ! やめて下さい! マリアさんたちが凄い形相で見てきているで!
「それじゃあ案内役が来ているから紹介するわね。ほら来なさいエステル」
そしてやってきたのは身長150ぐらいのエルフの女の子? だった。
「あなたが新しい魔王だね! 僕の名前はエステル・グリーンピットって言うんだよ! よろしくね!」
と手を出してくるエステルさん。……女の子? 僕はローナさんを見る。ローナさんは苦笑いをしながらも答えてくれる。
「この子ったら女の子なのになんでか男口調をするのよね。見た目も肩までで、髪も切り揃えてボブになっているし、胸もぺったんこでしょ? だから男の子に間違われるんだけど、れっきとした女の子だから気を付けてね。この子、私の親友の弟子だから手を出すと、エルさんでもどうなるかわからないわよ?」
とクスクスと笑ってくる。手出さないから。ほらそんなこと言うからマリアさんたちが睨んでくるじゃ無いか!
「あ、あとこの子年齢42歳の子供だから」
……え? 僕は思わず二度見してしまった。この小さい子が42歳? 見た目10歳ぐらいなのに。それにエルフの中だと子供なんだ。
「何見ているのさ! 僕の方が年上なんだからね!」
と両手を上に上げて怒ってくるエステルさん。なんか子供が起こっているみたいでかわいい。僕は思わずエステルさんの頭を撫でてしまった。
「よろしくお願いしますね、エステルさん」
「頭を撫でるなぁ! ……でもよろしく」
……やっぱり子供っぽい。そんなやり取りをしながらも僕とエステルさんは握手をして、一緒に行動する事になった。僕たちは亜人国ディスパーニャへ行くことへとなったのだが、どんな国なのか楽しみだ!
これで第2章終了になります。
次から第3章に入りますのでよろしくお願いします!
次の投稿は週明けの15日の月曜日の夜にしたいと思います。
評価等よろしくお願いします!




