森で出会ったのは……
僕は森で1人の男とであった。そして今までの姿を全て見られていたらしい。
「あ、あなたは誰ですか?」
「俺かぁ? 俺の正体を知ったやつは生かしては置けんぞ? それでも知りたいか?」
そう男が言った瞬間、景色が変わった様に思えた。なんて密度の高い殺気だ? 僕は立っているのがやっとのくらいの殺気を当てられている。こんなの今までの戦った中でも強かった王国騎士団長が赤子に思えるほどだ。
「ほう、3割ほどとはいえ、この威圧に耐えられとは中々鍛えてるじゃねえか?」
3割ほどだって? この男はどれだけ強いんだ? やばい! 立っていられなくなってきた。
「おっと、そろそろ解除するか。ほれ、もう大丈夫だぞ、小僧」
男がそう言った瞬間体が軽くなった気がした。はぁはぁ…… 全身は汗で濡れていて、気が付いたら座り込んでいた。
「 あなたは一体何者なんですか? うちの騎士団長よりも圧倒的に高い威圧なんて」
「俺を人間の物差しで測るんじゃねえよ。まあ、俺の威圧に耐えれたから教えてやってもいいがな」
人間の物差しで? という事は人間じゃないのか? でも他の種族には見えないし。
「俺の名前は、黒竜王ワンディール。それが俺の名前だ」
まさかの予想外な出会いだった。人間では無い言い方だったから魔族か何かかと思っていたら、まさかの竜種だった。竜種は知能を持たないワイバーンから、名前付きの竜までいる。その中でも特に強いのが色付きの名前を持つ竜だ。そしてこの男はその中でも頂点にいる様な存在だ。
「黒竜王とは、確か110年前にその時代の魔王と一緒にいた方ですよね? なぜその様な方がこの人間の国へ? まさか攻め込む為に?」
そう、それが気になった。いくら関わりたく無い国になってしまっても、好きな家族や友人は存在する。その為にもこの事は確認しておかないと。
「その気はねえよ。俺たち竜種は基本的に中立なんだよ。付きたい奴の方に付く。それが俺たち竜種の考え方だ。今人族に攻めている魔王はいけすかねえ野郎だからな関わってねえのよ。俺はただ振られた悲しみを振り払おうと色々なところを飛んでいただけなんだわ。それで今日はたまたまこの森に来たわけだ」
へっ? まさかの解答に僕は驚いてしまった。
「そんなに驚くことか? 俺たち竜種だって子孫は残さなければいけない。そして知能があれば恋愛だってする。その辺はお前たち人間と一緒だな」
それから何故か、黒竜王の振られた話を延々に聞かされ続けた。何でも白竜王と付き合っていたらしいが、若い青竜の女性(?)と遊んでいるところを白竜王に見られたらしい。そして振られてしまったらしい。その辺は人間と変わらないんだなと思ってしまったり。
そして僕がこんなとこで泣いていた理由も聞かれた。今更隠す理由も無かったので全て話した。泣いているところ見られているし……
「そうかそうか! お前も大変だったな。そんなクソ勇者とクソ王女は今すぐ殺しに行くか?」
するととんでも無いことを言い出した。
「いやいや! 大丈夫ですよ! そりゃあ色々と悔しいし、憎く思う事もあるけど、残している家族な迷惑はかけたくないです」
「けっ! そういう甘いところあいつに似てやがるぜ」
「あいつ? あいつって誰ですか?」
「ああん? お前あいつの子孫だろ? その見た目にその魔力そっくりだぜ?」
見た目に魔力? もしかして
「もしかして勇者ハヤテ・シュバルツですか?」
「そういえばあいつ改名したんだっけな。そうだ。勇者ハヤテの事だ。あいつも中々甘いやつだったな。お前たちの事を殺したく無いから帰ってくれ、とか言い出すから俺と魔王がキレて即戦闘。三日三晩は戦い続けたな」
「それで勇者ハヤテが勝ったと?」
「そんなわけあるか! 結果は相打ちだ。まあ、2対1で戦って引き分けにもっていく分確かにあいつの方が強かったが。それでも俺も魔王も隠し玉が無かったわけじゃ無いからあのまま戦っていたらこの国は今頃、地図には無かったな」
衝撃の事実! 伝承では書かれていなかった真実を聞いてしまった。
「じゃあその時の魔王も生き残ってるのですか?」
「ああ生き残ってる。まあ今は魔王の椅子に座っているだけだが。あいつ、あの戦争の後変わったからな」
「どういうことですか?」
「魔王な国ってのはな、今は3つに分かれてるんだよ。1つはお前たちと戦争している魔王ザガンが率いる魔国イルファーナ。2つ目が中立をうたっている魔女王ファリイスが率いる魔国イルレイス。そして現魔王の中で最強の魔王で俺の相棒、魔王ヘルガーが率いる魔国ベルヘイムと別れている。
魔王ザガンの国は魔族主義の国で他族を許さないって国だ。だから人族の国に戦争を仕掛けている。魔女王ファリイスは他種族を認めるが、関わりもしないという感じだな。隠れて貿易とかはしているみたいだが。そして魔王ヘルガーは昔の戦争以降は他種族の可能性も面白いとか言って、全種族の共存を図ろうとしている。だからヘルガーの国は魔族だけでなく他の種族も住んでるぜ」
なんと! いろいろと衝撃的な事実が出てくる。魔王が3人もいることにもびっくりだが、魔族と他の種族が共存している事にもびっくりだ。
「それで、お前はこれからどうするんだ?」
そういえばそうだった。おれはもうこの国に戻りたく無い。だけどあの2人だけは許すことが出来ない。せめて見返したい。でもどうすれば……
「僕はあの2人を許すことが出来ません。何とか見返してやりたいです。だからその方法を探すために旅をしようと思います」
「なら、俺と一緒に来るか? 魔国ベルヘイムならお前も来れるだろう。そこで俺が鍛えてやるよ。今のお前はハヤテの100分の1の実力も無いし。ヘルガーも鍛えてくれるかもな」
まさかの提案に僕は口が開きっぱなしだった。というか、勇者ハヤテってそんなに強いんだな。この僕でも国の中では結構強い部類なんだけど。
「いいんですか? 僕なんかが行っても?」
「あの国の他種族は何か事情があって追い出された奴や、山に捨てられた孤児を拾って増やしてるから、お前が行ったって特に問題になりはしない。俺が拾ったようなものだからな」
そう言って大声で笑いだした。
「そうですか。では、よろしくお願いします! ワンディールさん」
「おう! それじゃあ、行くか!」
そう言ってワンディールさんは黒く光だし、竜の姿へと変わった。全長20m近くの巨体に僕は尻もちをついてしまった。
「この姿でよく見つかりませんね」
「そりゃあ、雲より上を飛べば見つからんだろ。さあ、背中に乗れ!」
そして僕が背中に乗ったのを確認するとワンディールさん羽ばたき出した。
さよなら父上、母上。国を離れる僕をお許し下さい。
「グガアァアアア!」
咆哮を上げたワンディールさんは勢いよく旅立った。
こうして僕の新しい運命が回り始めた。
本日もう1話投稿します!
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「転生少年の成長記 〜努力すればするほど強くなれる⁉︎〜」の方もよろしくお願いします!