プロローグ
僕は一人森の中で佇んでいた。
「クソ! なんでだよ! なんで何だよ! ユフィー……」
あのときのあいつの愉悦に満ちた顔と、その顔を横で見惚れている元婚約者の顔が忘れられない。
あの顔を思い出す度に胸が締め付けられる。
今日の王都のパーティーが始まるまではなんともなかったのに。
どうしてこうなったんだろう、と何度思っても時間は戻ってくれない。
僕の運命は今日1日で変わってしまった。
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僕が住む国はグランディーク王国といい、大陸の中でも大きな国になる。
その大国の中でも僕エルフリート・シュバルツが生まれた家『シュバルツ家』は王の次に権威のある公爵家にあたる。
まあ、僕の家が少し特殊な家ということもあるのだけど。
その特殊な家というのは、僕の先祖に異世界から召喚された勇者がいるという事だ。
勇者が召喚されたのは今から110年前になり召喚されたのは、ハヤテ・エンドウという名前だったらしい。絵とかなく伝承でしか残っていない。
この世界は人族、獣人族、亜人族、魔族と4つの種族で成り立っている。人族と獣人族、亜人族は協力し合っているのだが、魔族とは昔から戦争をしている。
その頃は魔族が強く色々な国が滅ぼされたらしい。その事を懸念したその時代のグランディーク国王が古の魔法である召喚魔法『勇者召喚』を行った。
そして召喚されたのが先ほど話した、ハヤテ・エンドウだ。
ハヤテ・エンドウのおかげで劣勢だった連合軍が、押し返して元の魔王国との国境まで戻す事が出来たのだ。
その功績が認められ、ハヤテ・エンドウはグランディーク国王から公爵の位をもらい家名をシュバルツ家にしたわけだ。
そして僕はそのハヤテ・シュバルツの血をより濃く受け継いでいる。なぜわかるかというと、伝承であった、ハヤテ・シュバルツと同じ黒髪黒目で生まれてきたからだ。僕の両親からでは生まれない色だったので最初はビックリしたらしいが、父がその伝承を覚えていたので問題にはならなかった。
もう一つ理由があるのだが、それは、勇者だけが使えたと言われる光魔法が使える事だ。
そのため、周りからは勇者再来などと言われ続けてきた。
僕もその期待に負けない様に努力はしてきたつもりだ。
その甲斐あって12歳から16歳まで入る学園の中でも学問、武術、魔法、総合と全てにおいてトップに近い成績を残す事ができた。
その中でも気心知れた友人たちとバカな事をしながら、学園生活を楽しんだり、幼馴染で婚約者であるユフィーリア・グランディークとも楽しんだりと順風満帆な生活を送っていたのだった。
勇者召喚がされるまでは。
数年前からまた、魔族が活動し始め、被害が出る国が相次ぐ様になってきた。その事を危惧したこの国の軍部はすぐに軍を派遣したが、その結果は惨敗。幾つかの国が滅ぼされる事となった。
この結果は110年前と同じだという貴族も現れて、こうなったら110年前と同じ様に勇者召喚をするしか無いと言い始めた。
もちろん国王と僕の父は止めた。何故なら先祖である勇者ハヤテ・シュバルツの遺言に二度と勇者召喚をしないで欲しいとあったからだ。
だが、その事は関わりのある王家と、子孫であるシュバルツ家にしか伝えられていなかったため、そのまま貴族たちが押し通す形となり勇者召喚の儀が行われた。
そして召喚されたのが僕たちと同い年ぐらいの少年少女の3人だった。
1人目は僕の一つ上でマコト・テンジョウインという名前だ。見た目は茶髪の髪の毛で誰が見てもイケメンだと答えるだろう顔立ちをしていた。勇者担当になったメイドたちの目もハートになっていたし。この時に隣にいるユフィーの雰囲気の変化に気付いていれば今日の出来事に何か変化があったのかもしれないが……
2人目はリュウジ・ササキという名前の男で、僕と同い年との事。見た目は黒髪短髪でマコトは違うワイルドな感じの少年だ。このリュウジもイケメンだった。もちろんメイドはハート目。
そして3人目は唯一の女子でカグヤ・シノノメという名前だ。黒髪ロングでスタイルは出るとこは出て引っ込むとこは引っ込む感じの抜群のスタイルだった。男性陣はみんな見惚れるほどだった。僕はどうかって? 隣に婚約者がいるのそんな事思ってる暇なんてなかったよ。
僕達は勇者たちと同年代という事で紹介された。僕だけ黒髪黒目なのをびっくりされたけど。
それから何日かは勇者たちと行動していたが、急遽領地に戻らなくいけなくなり戻る事となった。この時のこの事を、今思えば不思議な事だった。だって、僕だけでなく他の友人たちも領地に戻らなくいけなくなったのだから。
それから数日後のある日シュバルツ家に王様と宰相が訪れた。2人は元々父との親友だ。子供の頃からの腐れ縁だと、父が笑いながら話していたのを覚えている。
そんな2人が自ら訪れた理由はやっぱり勇者召喚を止められなかった事だ。勇者再来と言うだけ言っておきながらこんな事になってすまないと、王様に頭を下げられた時は驚いた。だから僕は勇者召喚は別にやっても良かったと思ってる事を伝えた。
だって一緒に戦う仲間が増えたら魔族との戦争も早く終わるかもしれないし。そうなったら、ユフィーとも直ぐに結婚できるしと。その事を伝えたら王様はとても喜んでくれた。一ヶ月後に他国に勇者たちの紹介をするパーティーをする事を教えてもらい2人は帰っていった。
僕とユフィーは離れ離れになったときは、魔導具で連絡を取るようにしていた。けれども勇者召喚が行われた日から、連絡の取れる機会が少なくっていた。取れたとしても短い時間だけ。様子が変だと思いながらも、勇者たちの相手に疲れているのかなとか思ったりして過ごしていた。
そして他国に紹介をするパーティーの日となった。
この日は王宮に着いてからはユフィーと一緒に参加するようにと王様から言われていたので、ユフィーを待っていた。
その待っていた僕に近づいてきたのは、2人の男たちだった。2人とも僕の学園からの友人で1人目はアルフォード・クライスターでクライスター侯爵家の長男で、剣術が得意な男だ。もう1人はビルモンド・ロイスターでロイスター侯爵家の長男である。こちら魔法の使い手で特に風魔法を得意としている。
「よう! エル! 元気だったか?」
「やあ、アル。もちろん元気だったよ。ビルも久しぶり」
「久しぶり。まあ一ヶ月そこらで変わられても困るがな」
「まあ、そういうなって。社交辞令みたいなもんだろ? そういえばエル、ユフィーはまだ来ていないのか?」
「そうみたいなんだよね。今日は一緒に参加する様に王様から言われてるんだけれど」
「しかし、もう直ぐパーティーは始まるぞ?幾ら何でも遅すぎないか」
アルもビルもそう心配してくれる。やっぱり見に行こうかと思った時に、王様が入ってきた。
「この度は我が国に集まっていただき有り難く思う。昨今では魔族との戦争が激化し、滅亡してしまう国は増え続けておる。その対策のため、我が国で110年前と同じ勇者召喚の儀を執り行った! その召喚された勇者たちを紹介しようと思う! では勇者たちをよ! 入って参れ!」
そういった王様は僕の方を見ると怪訝な顔をしていた。やっぱりユフィーがいない事は知らなかったみたいだ。
そんな事を考えていると勇者たちが入ってきた。
先頭はリュウジで次にカグヤが入ってきた。だけど様子が少し変だ。2人ともとても困った顔をしている。何故なんだろうと思っていたが、理由は直ぐにわかった。
その理由とは、マコトとユフィーが腕を組んで入ってきたからだ。
その瞬間僕の心臓は止まった様に思えるほど驚いてしまった。なんでユフィーとマコトが腕を組んでいるんだ? 色々な事を思うが何も思いつかない。
「おい! ユフィーがなんで勇者と腕組んでんだよ! おい! エル!」
アルがそう言って肩を揺さぶってくるが僕の耳には入ってこない。頭が全然回ってくれない。ビルも無言だが心配そうにこちらを見てくる。
王様も王妃様も父上も驚いて固まってしまっていたが、王様が動き出した。
「おい! ユフィー! 何故お前が勇者たちと一緒に出てくる? お前にはエルフリートと一緒に参加する様伝えたはずだ」
「ごめんなさいお父様。でもわたくしはこのお方と一緒にパーティーに参加したかったの」
「どういう事だ?」
王様が聞くと答えたのはマコトだった。
「国王様。ご無礼を承知でお話しさせていただきます。私とユフィーはまだ会って一月ほどしか経っておりませんが、愛し合っております! どうかお認め下さいませ」
「そうなの、お父様! わたくしとマコト様は愛し合っているのです!」
この瞬間僕の中の何かが壊れた様な気がした。
「ユフィー! どういう事なんだ? 僕達は結婚しようと話していたじゃないか? 何かの間違いだろ? なあ、ユフィー?」
俺は、何とか絞る様に話しかけたが、返ってきた答えは残酷なものだった。
「ごめんなさいね、エル。私は少しもあなたの事が好きじゃなかったの。ただお父様に言われたから仕方なく婚約者として過ごしていたのよ」
「そうらしいぞ、エルくん? そうだ! ここでエルくんに婚約破棄して貰えは話は上手くいくんじゃないか!」
「それはいい考えですわね! さあ、エル。お願いしますわ」
この時のマコトの顔が僕を蹴落とした事による喜びに溢れていた。
王様や王妃様、父上にアルたちまでも何か言おうとしていたが、それより先に僕は耐えれなくなった。
直ぐに会場を後にした。後ろから僕を呼ぶ声が聞こえるが、何も頭に入ってこない……
ただただ走り続けた。
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そして今に至る。
これからどうしていこうか。
正直に言うともうこの国には居たくない。
あの2人の顔を見るのが何より嫌になってしまった。
父上や母上、アルたちには申し訳ないがあの2人に会うぐらいだったら出て行ったほうがマシだ。
そんな事を思っていると突然声がした。
「やっと泣き止んだか、小僧。全く、こっちは振られて落ち込んでいるときに、猛スピードでこっちに来るから誰かと思えば突然泣いて叫び出すし。ビックリしたぜ」
この男との出会いが、僕の運命を変える。
いきなり暗い感じになりましたが頑張って投稿したいと思います!よろしくお願いします!
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