どくろといなずま
「よかったねぇ、おかあさん、わかってくれて」
ひかるがうれしそうにみかに言った
「うん、ひかるのおかげだよ、それに・・・」
とみかが話を続ける
「わたし今までお母さんのために勉強してた、でも今回、自分のために頑張ってみた、それで結果が
よくてすごくうれしくて、また次の試験もがんばりたいって思った、だれのためでもなく自分のためって、
そう気づかせてくれたのは・・・てんちゃんかな?」
てんが横でぽりぽり頭をかいて軽くおじぎをした
「またがんばってみるよ!将来、なんになるかは決まってないけど・・・」
「なれるよ!だって、みか、すごいもん、弁護士だって医者だって教師だってなんだってなれるよ!」
とひかるが言うとみかの表情が陰り
「うん・・でも・・そうでもないんだ・・・実は・・・」
と言って長袖のそでを肘の上までまくり上げると・・・
腕に、タトゥー、どくろといなずま、くっきりと、
ひかるがことばを失う
てんも無言でそれをみつめた
「むしゃくしゃした時、シャーペンやコンパスの先で彫ったんだ、これ描いてるときは、いやなこと
すべて忘れられた・・・」
ひかるがなんとか我にかえり言った
「あ、・・あ・・・でも、消すこともできるって・・・このあいだ・・テレビで・・・」
「50万!」
「え?」
「完全に消すには50万かかるって、調べたんだ、そんなお金持ってないし、今、お母さんに言ったら
こんどこそおかしくなっちゃう・・」
「・・・・」
みかがそでを戻し言った
「しばらくは隠し通すつもり、それで落ち着いたら話してみる、それしか方法ない・・かな」
ずっとだまっていたてんがひとりごとのようにつぶやいた
「・・・50万・・・・か・・・」