51話 梟の罰
第3部開始です。第1部終了直後からの描写となります。
獣人や亜人たちが国家の枠組みを超えて集う大陸最大の自治区、「自由部族連合」。
旧太陽王国の人間至上主義から逃れてきたゾラやバムにとって、そこは同胞たちが肩を寄せ合って生きる「理想郷」のはずだった。
「……なんなんだろうな、自由って。」
泥濘むスラムの路地裏で、ゾラが歯鳴りを漏らす。
道端には、粗悪な麻薬に溺れて虚ろな目をした獣人たちが転がっている。
通りを肩で風を切って歩くのは、重武装したゴロツキの集団だ。彼らは屋台から強引にみかじめ料を巻き上げ、抵抗する老いた山猫の獣人を容赦なく蹴り飛ばしていた。
「やめろッ!」
ゾラが斧に手をかけ飛び出そうとしたが、バムの老いたーーーしかし無骨で、冷たい手が制止した。
「待て、ゾラ。……屋根の上に3人、教会の屋上に2人だ。」
バムが顎でしゃくった先には、路地の上から見下ろすように立つ、クロスボウを構えた複数の影があった。
「だが、『自由』とは、無法のことではないはずだ……。戻ろう、団長に報告だ。」
ーーー「梟」の一団は、粗末ながら20人程度が寝泊まりでき、不測の事態でも防衛のしやすい郊外の屋敷を借り上げて拠点としていた。
「バムの判断が正しいね。この街において、自由とは弱肉強食そのものだ。チンピラが暴れるたびに倒したところで意味はない。」
「団長!同胞が痛めつけられてるんだぞ!」
ゾラが声を上げる。
「力で叩き潰しても、明日には次の腕自慢がその席に座るだけだ。」
レノは屋敷の窓から、冷徹な目で街を観下ろしていた。
「弱肉強食だからこそ、変えるには圧倒的な強者として、徹底的にやらなきゃいけない。」
レノは傍らに控えるミラに視線を向けた。
「例の調査結果は?」
「三大ファミリーと呼ばれるギャングが、それぞれ『麻薬』『歓楽街』『流通』の利権を分割統治しています。
表向きは協定を結んでいますが、裏では互いのシマを狙って小競り合いが絶えません。
例えば歓楽街を仕切るマッシ一家は客向けに麻薬を捌いており、これを麻薬を仕切るガリアノファミリーが糾弾していますが、証拠は見つからず、目立った衝突にはなっていません。
また、表向きは街の領主はフローノ家が代々担っていますが、先代がギャングから資金を借りてから、あまり機能していないようです。
現領主も暗殺を恐れてなのか、ほとんど国外で生活していて、いくつかの名家が寄り合い的な組織を作って外交は担っているようです。」
ミラが淀みなく答える。
「結構。ミラ、では予定通り次の調査を。」
「承知いたしました、団長」
ミラが艶やかに微笑み、コツコツと音を立ててドアから去っていく。
バムがレノに向き直る。
「団長。どうするおつもりで?」
「躾の時間だ。」
いつもありがとうございます。
しばらくは土日更新(週2回)とさせてください。




