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HUE ~だいだらぼっちが転んだ日~  作者: 宇白 もちこ
第九章 献身と自由
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9-6

 桂班は、元々使っていた各自の部屋を使うことを許され、四蛇、潮、目有、ワロにも部屋が与えられた。

 句朗が久しぶりに自分の部屋に入ると、私物がまだ残っていた。ベッドに腰かけると、桂班として過ごした日々を思い出す。一度白紙に返ったこともあり、そんなに長い時間を過ごしたわけではないが、自分にとって帰る場所と呼べるのは、ここだけだ。


 ここに滞在するのは、足並みがそろうまでの数日の予定だ。ことが終わってからは、ここへ戻って来られるのかは分からない。

 句朗は名残惜しむように、本部を見て回った。


 句朗には、先日から、心に引っかかることがあった。


 ワロと初めて会った時のことだ。初めて見る奇妙な生き物に、句朗は目を輝かせながら近づいた。笑顔で挨拶したものの、ワロは句朗を見るなり、まるで肉親の訃報を聞いたときのような、暗い瞳で見つめてきたのだ。

 一つ目の生き物の表情は、人間にとって分かりにくいものだが、ワロの顔色の変わり方は顕著だった。初めは、ワロドンとはそういう生き物なのかと思ったが、それ以降の接し方は普通で、彼は優しく、人間と感覚の近い生き物のように思えた。


 句朗は、ワロが自分の魂を見て、何か不吉な情報を得たのではないかと勘繰っていた。例えば、極悪人だとか、ひどい境遇で生まれ育ったとか、句朗の正体を知らせるのに躊躇するような事情があるのではないかと疑った。

 句朗はもやもやした気持ちを抱いたまま、本部での時間を過ごした。


 みんなの怪我の具合が落ち着き、十分な休息を取れた頃、情報の整頓をするため、句朗の部屋に桂班と、ワロ、潮、四蛇、目有の計九人が集まった。


「俺の正体を教えてくれよ」

 鼓童が開口一番、ワロに掴みかかりそうな勢いでそう言ったが、彼は目を伏せ、それを断った。


「今はまだ、集中力が途切れないようにすべきじゃ。全て終わってから、ゆっくり故郷へ帰ると良い」


「でも、私たち命の保証はないじゃない。死ぬ前に知りたいわ」

 傘音が言う。


 ワロは困ったように視線を泳がせたが、結局彼らの身元を言わなかった。

 句朗は、ワロが口を開かなかったのは、鼓童らに話すと句朗の分の話もしなくてはいけなくなるからではないかと、考えた。もし句朗の身元を話した場合、それがみんなの戦力を削ぐほどの内容なのではないかと勘繰り、また落ち込んだ。

 句朗は不安で胸がいっぱいになり、膝を抱えて黙り込む。


 潮が、今回の作戦に関する、移動方法について話し始めた。


「庵霊院へは、スムヨアが白駒と黒駒を動かしてくれる。本当は雉子車があると良かったんだが、ちょうど庵霊院の方にあるらしい。だから、一度に向かう人数が限られるんだ。途中でザムザに寄って、又旅と茶々を拾う。乞除と佐治は、本人らの意思次第だが、少なくともヘドリアは一緒にくるつもりらしい」


 句朗の部屋は、九人で話すには少し狭い。遊戯室で話そうかとも思ったが、他の蒼羽隊がいるのはなんとなく気まずくて、ここにしたのだ。

 みな立ったまま、潮の話を聞く。


「黒駒の方に桂班が乗って、白駒の方にスムヨアを含む、他の人間が乗る。ザムザについたら、黒駒にヘドリアを乗せ、それが出たあと白駒が又旅たちを拾う予定だ。スムヨアとヘドリアを会わせないようにする必要があるからだ」


「どうして?」と入が尋ねる。


「スムヨアは、ヘドリアにどんな顔で会えばいいのか、分からないんだそうだ」


「ヘドリアに合わす顔がないというのは、無理もないんじゃ。わがままだと思わず、許してやってほしい」

 ワロがスムヨアを庇う。


「友や家族を殺されたお主らにこんなことを言うのは、間違っているし、困ると思うが、言わせてくれ。あの子らは、本当はいい子なんじゃ。運悪く妙なことに巻き込まれてしまっただけなんじゃ。もちろん、犯した罪は重い。それは分かっとる。でもわしはあの子らが少しでも救われるような方法をとりたい」


 ワロは一気に言うと、しばらく黙ってから「すまん」と謝った。


「俺たちは、最善のことをやるだけさ」

 四蛇が言う。


「そういえば、ヘドリアの幻覚の件は、どういうことだったの?」

 目有が尋ねる。


 ワロはさっきの、ヘドリアとスムヨアを庇う発言について既に後悔し始めているらしく、みなの顔を申し訳なさそうに見回してから話し始めた。

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