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ばーじょん情報  作者: のーふ
9/11

Ver.0.0.8 "イフォネ"

少し用語が出てきます。著者の私も智己くん状態。知らない方でも読めるように書いていくつもりですのでご安心を

「部活っていっても何するんですか? 先輩がなにしてるかも分からないです」


「うーん、そうだねー。簡単にいうと人工知能かな。その持ってるiPonに入ってるOsiriみたいなやつ」


「なるほど……。難しいことしてるのは分かりました」


 部活が始まった。智己はほぼ直感に近いもので入部したため部活の概要を理解していない。香枝の実力もまた彼にとって未知数だ。


「でも、それはただプログラ厶されたことを出力しているだけなんだよね。だから同じこと聞いてもしつこいとは言われない。返答も不自然ものが多いしね」


「たしかに会話にならないこともありますね」


「だから私はより人間に近づけるためにがんばっているのだ!」


 初めて評価されようとしていることに喜びを隠せていない。それもそのはず在籍している学校には評価できる人間などいないのだ。


「これに話しかけてみて」


 香枝が開いた画面には物理の教科書見たことのあるようなオシロスコープ、智己には理解のできないプログラミング言語などで埋め尽くされていた。一つのウィンドウを残して。


「こんにちは」


 智己が有線接続されたマイクに挨拶する。すると唯一白かったウィンドウに文字が記される。


『こんにちは』


「挨拶返してくれました! 元気ですか」


『気分はありません』


「……」


「人工知能の方が冷静だね」


 智己はてっきり元気だと返してくれるものだと思っていたが、予想を裏切られる。案外サバサバとした人工知能だった。


「と、まぁこんな感じで会話が出来るわけです。まだまだ未完成だけど」


「僕こんなの作れそうにないですよ……。ペットじゃないですけど名前的なのはありますか?」


「たしか、『イフォネ』って設定にしたと思う。理由忘なんだっけ」


 今までずっと力と時間を注いで作り上げた物だが名前を忘れてしまっている。それほど中身に凝った作品だった。


『よろしくね、イフォネ』


『よろしくお願いします』


 香枝の人工知能イフォネには日常的な対話が出来るまでにあった。音声、画像認識、デザインなどのステータスを捨ててインプットされている辞書に全てを注いでいる。対話だけを見れば企業の作ったものには劣らない品質だった。


「いやー、凄いですね。これの未完成部分はあるんですか? あれ、先輩?」


 智己が見入っている間にそばにいた香枝がいなくなっていた。すると玄関から重そうな本を数冊落としながら近づいてきて、机に広げた。


「ごめんね、家に戻ってた。これ私が勉強したプログラ厶関係の本だから勉強しといてね」


 広げられた机はいたって狭くない。それを埋め尽くし机の厚みを増すほどの本の量。学校の勉強のような内容の参考書だったらやる気さえ起きない。

 智己が近くに流れてきた本を何冊か手に取り眺めてみる。ゆるい絵のついた初心者向けの本から英和辞典のようなプログラミング言語。どれも無傷では済んでおらず熟読されたとは智己でも簡単に予想がついた。


「これを読んでパソコンを使いながら学んでいけばいいんですね」


「私が覚えた頃は基本的に本だったかな。今ならサイトとか使ったらいいかも」


「いつ理解出来るか分かりませんががんばります」


 智己には久しぶりに目標ができた。しかも普通の勉強のように受動的ではなく、自らやりたいと思ったこと。死んでいた目は蘇生されたようだった。


「じゃあ私はこっちのパソコン借りるね。データ移し次第そこのノーパソ使っていいよ」


「それ僕の……」


 やはり智己のパソコンは取られてしまった。先程会話した時は処理に時間がかかっていた。それを体感した智己は宝の持ち腐れのように感じてしまい、諦める。香枝は反対に移行にかかる時間の間も画面を見つめニマニマしていた。



 智己はパソコンや本で『プログラム』のことを調べながら雰囲気をつかみ始める。智己が選んだ言語は『C言語』という昔ながらのコアなファンの多い言語と『Python』という近年人気の出てきた人工知能に向いた言語を学ぶことに決めた。もちろん香枝は学んだ上で助言した。

 学べる初心者向けのサイトや分かりやすい本を香枝から教わり少しづつ進めていった。

 英語の勉強をしている様で順調かと思われたが壁がすぐに立ち塞がることになった。


「先輩、この課題がクリアできないんですけどなにが違うんですか?」


「どれどれ、えーと……。ここのクォーテーションかな」


「あっ、つけ忘れてました」


 智己はサイト内の課題を一つずつ香枝の助言と共にクリアしていく。智己が足をもちろん引っ張っているのは分かっていたが、香枝は快く教えてくれた。

 二人とも教える以外の会話はなく熱中する。部屋には人の気配はない程でキーボードの叩く音やクリック音で溢れていた。

 時は体感以上に早く過ぎる。進み具合が悪く不完全燃焼のようでまだまだ続けたいと口には出さなかったが意見は一致する。時計を見ると、学校では授業が終わって部活も終了時刻に近づいていた。



────────────────────────

クォーテーション・・・「'」「"」引用符ともいう。主にひらがなやアルファベットを囲うのに使われます。

C言語、Python・・・プログラミング言語。世界の言葉のように多数あるコンピューターのための言語のうちの一つです。

iPon・・・この世界における端末名

Osiri・・・iPonに搭載された人工知能

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