ダンゴールの街とギルドと依頼
30話です。
頑張っちゃいました。
休日の更新なのでゆっくりとお読みください。
30話 - ダンゴールの街とギルドと依頼
日が昇って2時間ほど。
大体午前7時くらいにおなかがすいて目が覚めた。
瞬はまだ寝ているみたいだ。
素振りでもするかと宿の裏手にあるちょっとした広場に向かう。
主人に聞いたら快く木剣を貸してくれた。
かなり重たいけど鍛錬にはちょうどいいかも。
いままでずっとやっていた型に沿ってゆっくりと剣を振り、身体を馴染ませていく。
型を一巡したら最初の位置に戻りまた最初から。
身体が慣れてくるのに合わせてどんどん剣を振る速度を上げていく。
剣が風を切る音が聞こえ始め、そのうちそれも聞こえなくなる。
身体から汗が流れ出る頃には剣は目に見えないくらい早く、鋭くなっていた。
ふと視線を感じた方を見るとさっき木剣を貸してくれた宿の主人がタオルを持って扉の前で待っていてくれた。
「お客様。そろそろ朝食のお時間でございます。」
おおう、もうそんな時間か。
「ありがとうございます。一度部屋で湯を浴びてから伺います」
さすがにご飯を食べるのに汗臭いのはダメだろう。
ついでにおこさまを起こさないと。
「おーい、瞬、おきろー」
瞬の部屋の前で呼びかけたら「着替えたらそっちいくー」とのことなので部屋に戻り風呂で身体を洗う。
汗臭いのも取れた所でちょうど瞬が部屋に来た。
珍しく男物の服で。
「どうしたの、熱でもあるのか?」
「なにがさ!別に僕は好きで女物着てるんじゃないんだけど?」
「またまたー」
ちょっとダブついた黒いズボンに膝上くらいまでくるくらい長い、白と黒のしましまのカジュアルシャツ。
シャツも男物だからかなりダブついているそれを腰の辺りで赤い紐で縛って腰の横で結んでいる。
髪の毛も俺みたいに後ろ髪を縛ってちょんまげみたいになってる。
似合ってはいる。
似合ってはいるんだが。
なんの心境の変化だろう?
「まぁいいや。朝飯食べたらギルドいくぞ」
「なんか腑に落ちないけどもういいや。了解」
朝ごはんは普通のプレートランチっぽく固定メニューだった。
白パンとサラダとワンタンっぽいのが入ったあっさり醤油味のスープとサイコロステーキ。
おかわりが欲しくなるところだが、どうせギルドに行く途中の屋台で食べるんだし、と思って控えめにしておく。
部屋の鍵を受付に渡し、預かってもらってギルドへ出発。
「さぁどんな屋台が俺を待っているのか!」
「ほんとよう食べるねぇ」
別に、全部食べてしまってもいいんだろう?
鳥、豚、牛の肉串は当然として、白身魚のフライや揚げ芋、蒸かし芋、ピザっぽいパン、フルーツが山盛りになっているクレープっぽいものなどで腹を満たし宿を出てから2時間程たったところでギルドへ到着した。
ギルドから先に見える屋台はまた後でにしよう。
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ギルドはアルファミラのものとは違い、木造で2階建て。
ただし、1Fのホールはアルファミラと同じく酒場を兼務しているが、あっちで思ったカオスといった感じはしない。
酒を飲んでいる冒険者は壁沿いに集まって呑んでいるが、馬鹿騒ぎをするわけでもなく、あくまで普通にお酒を楽しんでいるように見える。
神威が「なんだ、今回はいつものなしか」とか残念がってるけどそんな毎回同じようなことにはならないでしょうよ。
カウンターであいている人は白髪短髪の老紳士っぽい受付の男性と、腰くらいまでの髪の長さを持つ綺麗な赤毛の女の子がいる。
神威は躊躇なく赤毛の女の子の方にいってしまった。
老紳士の方に向かい、ギルドカードを出しつつ挨拶をする。
「はじめまして。瞬・浅井と申します。このたびダンゴールで依頼を受けようと思いまずはご挨拶に伺いました。」
すると老紳士は「ほう」といいギルドカードを受け取り、机の横に置いてある水晶みたいな石の上に乗せる。
「お若い割りに昔の冒険者のしきたりを良く知っていましたな。」
ん?
冒険者のしきたり?
わけがわからないよ。といった顔をしていると目の前の老紳士が説明してくれた。
「知っていたわけではないのですね。昔は冒険者が拠点を移す場合。また拠点外での依頼を一定期間を通して受ける場合は今のようにギルドに挨拶をするのが決まりだったのですよ」
ほう。
しらなんだ。
「すみません。知りませんでした。まぁこの街では一週間ほど滞在する予定なのでしきたりが必要かどうかはわかりませんが、しばらくの間、お世話になります。」
「承りました。私はロランと申します。当ダンゴール支部のマスターをしております。」
ぎ、ぎるどますたーですか。
「ギルドマスターとは思いませんでした。改めまして。瞬・浅井と申します。以後もよろしくお願いします」
「ふむ。家名の響きがサクラザカに似てるな。知り合いかね?」
桜坂?
こっちにきてた日本人かな?
「いえ、面識はありません。」
「そうか。まぁいいじゃろう。それで今日はなにか依頼を受けていくのかね?」
依頼か。
そうだなぁ。別々じゃなくて今回は一緒に受けるのもありだねぇ。
「向こうでいちゃついている連れと一緒に何かを受けようとは思っているのですが、何かお勧めの依頼はありますか?出来れば3日程度で終わるもので。」
ロランさんは向こう側の受付で仲良く話している受付嬢の子と神威を見ると、「またか」とため息をはく。
「なにかあったんですか?」
「あの子は将来が有望そうな冒険者を見ると素性を聞き出したり性格や資産などの判断をし、合格だった場合はああやって仲良く話をして最終的にモノにしようとしているんだよ。ここは婚活の場じゃないんだがな」
「え、なにそれ怖い。」
「だが仕事は出来るから注意以上のこともできなくてなぁ。ここ最近はおとなしかったんだがなぁ」
こめかみを押さえどうしたもんかと考え込んでいるロランさん。
まったくしょうがない。
「神威ー」
カウンターの向こうまで届くくらいの声で神威を呼ぶ。
神威と受付嬢の子がこっちを向いて状況を把握したらしく、受付嬢の子はばつが悪そうな顔になる。
「ハウス!」
「誰が犬じゃ!」
プリプリと怒りながらこっちに歩いてくる神威を見て密かに成功。と思ったのは内緒。
「なんだね、お子様。大人の語らいを邪魔しよってからに」
「あの子、肉食系なんだってさ。」
「別に肉食系だろうとなんだろうとあの程度の体型じゃ俺の琴線には触れないから問題ない。あと15kg肥えてから出直してまいれ」
おおう。そんなでかい声で宣言しよって。
何人かの受付嬢が自分のおなかを再確認しとる。
さっきまで神威と楽しく話してた子も顔を真っ赤にして裏の部屋に入っていってしまった。
「で、よろしいかな?」
ロランさんが僕ら二人に依頼書を二枚出してくる。
忘れてた。
「あ、はい。これがお勧め依頼ですか?」
「三日でという制限があってCランクが受けられる依頼というとこれしかありません。」
神威と二人で依頼書を覗き込む。
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依頼ランク :C
依頼内容 :鉱石を掘りに行く間の坑道での護衛
依頼期限 :受注から3日を目安。
報酬 :金貨1枚。
完了条件 :依頼主による完了確認
依頼主 :素材屋クル
備考 :坑道内で魔物が出現する可能性あり。
遭遇した場合、魔物素材の買取額は割り増しで買い取ります。
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依頼ランク :B
依頼内容 :剣狼の討伐
依頼期限 :受注から3日を目安。
報酬 :金貨1枚。
完了条件 :剣狼討伐。討伐の確認(全身の毛皮提出)。
依頼主 :ダンゴール領子爵リリン
備考 :毛皮に傷が少ない場合、割り増しの用意あり。
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うーん。
どっちがいいもんかね。
というかBランクの依頼が受けられることを今のいままで忘れてた。
あんまり貴族にかかわりあいたくないなぁ。
3日で終わらなさそうだしランクが上なのにCランクと同じ報酬額だしなんかいろいろめんどくさそう。
「Cランクのでいいよね?」
「貴族がイヤだからだろう。」
ばれてーら。
「ま、護衛の方でよかんべ」
「ありがと。後は詳細聞いてから決めるんでもいいですか?」
ロランさんに依頼主の事を聞こうとすると、ロランさんは酒場の一角を指差した。
「あそこで一人で酒を飲んでいるのがクルですよ。彼のところに行って詳細は聞いてください。依頼の受注はそれからで大丈夫ですよ」
指差した先には酒を飲みながらつまみとはいえない量の食べ物を食べている一人の小太りさんがいた。
食べっぷりを見てると神威の同類だな?うん。
クルという青年の座っている席に近づき、依頼の詳細を聞きたい旨を伝えると、テーブルの上に広げられている料理を端に寄せ、椅子に座るように手で指示される。
その間、右手はフォークで残っている料理をどんどん口へ運び消化していく。
ものすごい食べっぷりだ。
食べ終わるのを待ったけど実際5分も待っていない。
なんということでしょう。匠の華麗な技により、テーブルの上に広げられていた推定5人前の料理は一瞬で彼の腹の中へ。
皿も積み上げられ綺麗に片付けられたテーブルが出現しました。
そして、そこ。神威。
物欲しそうな目で食べ物がなくなった皿を見るな。
恥ずかしい。
「いやおまたせ。お恥ずかしいところを見せてすまんね」
「いえいえ。私は瞬、こちらは神威と申します。依頼を受けようと思っていますが詳細をお聞かせ願えますか?」
「ご丁寧にどうも。クルと申します。採掘中の護衛依頼ですな?私が坑道で掘っている間、魔物を寄せ付けないでいただければそれだけで大丈夫です。」
「ふむ。なるほど。神威はどう?」
「問題ない。それにしても素材屋とは珍しい商売ですね」
「だろう?武器も服も料理も総ては材料あってのもの。今はまだ一人でやっている程度の規模だが近いうちにもっと大きくしていくんだ。」
「よい夢ですね。がんばってくださいね」
熱く夢を語っているクルさんを暖かい目で見つつ、今回依頼を受けた場合にありえそうなイベントを想定しておく。
「魔物が現れるかも、といっていましたが、どのような魔物が出るとか情報はありませんか?」
「多いのは巨蟻系。たまにバット系や芋虫のような虫系も出る。殺人蟷螂みたいな凶悪なのが出たこともあるが20年に一度とかいう頻度だな」
ふむ。
ならなんとかなるかな。
「わかりました。依頼を受けようと思うけど神威は大丈夫?」
神威に目をやると、なにか考えながらクルさんに質問を投げかけ始めた。
「依頼期間は三日ということですが、坑道に篭りっきりですか?」
「はい、その予定です。毎度戻ってくるのは時間がもったいないです。坑道まで半日、掘り起こす場所まで半日。掘削で1日、で帰ってくるのに1日で考えています」
「なるほど。では食料は別途用意した方がいいですね?」
「はい。こちらの魔法の鞄にも食料は入れていきますが、3人分とまではいきません。もし魔法の鞄をお持ちでしたら私の分も食材を持って行っていただければその分追加費用は出しますがいかがでしょうか?」
「問題ないですよ。こちらの魔法の鞄はまだ空きがありますので。50食分程度あればいいですか?」
「三人分でそれだけあれば十分足りると思います。食材の買出し費用として先に金貨1枚を渡しておきますね。あ、これは報酬とは別途なので安心してください」
うん、ちょっとまとうか。おまいら。
計算がおかしいぞ?
50食って、一日5食で10人前だぞ?
神威のことだから僕の分は普通に1人前3食x3日分で、9食分としてカウントしてそうだから実質は20食分づつは食べる気なのか。
20食を3日で、って事は1日約6食。1食2人前。
あれ、意外と普通だった。
計算が出来てなかったのは僕だった件。
「では市場で買出ししてきますので1時間程お時間をください。その間に準備をしておいていただければ。」
「わかりました。こちらの準備は出来ていますのでまたここにお越しください」
神威がそういって席を立ち場をしめ、さきほどの老紳士のところで依頼の受注をしに動く。
食材の買い物は神威に任せて僕は宿屋に行って3日ほど留守にすることを告げる。
するといない間の三日分の料金は取らないという気前のいい事を言ってくれたのでお言葉に甘える。
まぁ部屋の中に重要なもの何も置いてないし、誰か他の人に貸してても問題ないしね。
先にギルドでクルさんと話ながら待ってると、1時間程で神威も買出しから戻ってきたのでさっそく鉱山行きの馬車に乗って移動を開始する。
鉱山行きの馬車は街と鉱山を1時間置きくらいの間隔で常時運行しているらしい。
まぁ鉱夫さんとかも街に戻ってきたり行ったりするだろうしね。
鉱山はダンゴールの町から馬車で半日くらいの停留所から、歩いて2時間ほどのところに入り口があるらしい。
停留所から鉱山までの山道も切り開かれていて馬車も通れそうな道になっているけど、多分鉱石を乗っけたのばっかりが通ってるんだろうね。
路面のわだちがすごい。
「さて、ここが鉱山の入り口です。」
まだ日が高いうちに岩山に掘られた洞窟のような場所につき、クルさんが説明してくれた。
けど、クルさんはそこから入っていかず「こっちです」と山肌沿いに移動を開始した。
そこには人が一人、ギリギリ立って通れるくらいの穴が掘られている。
「ここですか?」
「はい、私が掘っている独自の坑道です。最初は狭いのでお気をつけください。」
クルさんは横向きにお腹をひっかけないような体勢を取り、坑道の中へ入っていく。
それに続いて入っていくが、坑道の中はところどころで明かりを出す石が埋められており、たいまつなどの明かりは必要なさそう。
坑道に入って30分ほどで一度休憩所なのか、適度な広さの場所に出たのでそこで本格的にもぐる前にご飯や休息をしておく。
神威が出してくれた食材を受け取り簡単なご飯を作っていく。
クルさんも神威もガツガツと食べるのは見てて気持ちいいけど、きっと僕が量を調整しないと帰りに食べるものなくなりそうだよね。。。
ご飯を食べて一息つくときに、入り口と出口にクルさんが結界を貼る石を置いてくれたので気にしないで休めるのは助かるね。
掘るときもこれを使えばいいんじゃないかって思ったんだけど、効果範囲が狭い上に、使い切っちゃうと再チャージに結構なお金がかかるそうだ。
夜眠るときにも使いたいとのことなので出来るだけ使う機会は減らしたいんだろうね。
クルさんは一眠りして、神威もうとうとしてる空間にいると僕まで眠くなってくる。
なんで寝てる人の傍って眠くなるんだろうね。
少し休んだら本格的に潜ることになるから今のうちに寝ておかないとダメだよね。
うん、寝ないとダメなんだ。
少し寝よう。少しだけ。。。
ほんとは29話と同時投稿しようかと思ったのですが分けました。
次もできるだけ早くかけるようにしますねー




