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 甲高い叫び声が聞こえたのは間違いなかった。それは少し遠く頭上から聞こえてきた。


 咄嗟に後ろを振り返った直後にその行動の過ちに気づく。川辺にうち果てられたすでに遺体となっている人間の側にいたのは自分一人。顔を認識されてしまえば、一貫の終わりだった。ーー母が繰り返し言っていたように。


 川瀬愛姫は羽織っていた薄手のコートのフードを被ると、すぐにそこを後にした。橋の上からひっきりなしに続く叫び声に肝を冷やしながらーー。


 ーー薄暗がりの下で回転するいくつもの赤灯と瞬間的に焚かれるフラッシュが、その状況をかろうじて映し出していた。どこから聞き付けたのか数十人もの野次馬が自然と半円を作り、穏やかに流れる川の手前の惨状を見ていた。ヒソヒソと言葉を交わしたり、指をさしたりしながら。


「自殺?」「顔がぐちゃぐちゃに潰れてる!」「男……かな」


 そんな会話に混じって一際大きな声が発せられ、大きな眼鏡を掛けた川瀬は反射的にそっちへ首を動かした。


「私、見たんです! 人がいた! たぶん、制服、高校の、来てたんです!」


(ヤバい……!!)


 人込みに紛れてその場を去ろうと視線を移したその先にーー。


 目を合わせてはいけない存在がいた。

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