ギルドクエスト:第1話『隙間男』とプラスチックストロー
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剣と魔法ではなく、塩とお札とライフハックで都市伝説をバッタバッタと(?)解決していく、オカルト・ギルドファンタジーの開幕です。
※ホラー要素を含みますが、基本的には頭を空っぽにして読めるドタバタ怪異退散ものです。
それでは、第1話「隙間男とプラスチックストロー」をどうぞ!
【依頼名:深夜三時の『隙間男』の駆除】
「――で、今回の依頼主は郊外の住宅街に住む主婦だ。報酬は金貨三枚。ただし、失敗すれば依頼主だけでなく、君たちも『隙間』に挟まることになる」
ギルドの薄暗い地下室で、受付係の男がため息をつきながら一枚の羊皮紙を放り投げた。
羊皮紙には、こう書かれている。
【クエスト概要】
対象:都市伝説級怪異『隙間男』
依頼内容:対象の出現ポイントを特定し、その「幅」を広げて消滅させよ。
難易度:Cランク
「へえ、今度は都市伝説か。剣の腕より、足の速さが試されそうだな」
そう言って不敵に笑ったのは、新人冒険者のレイ。俺――シオンは、手元のタロットカードのような呪具を確認しながらうなずいた。
この世界では、人々の恐怖や噂が澱のように溜まると、実体を持った「怪異」になる。
物理攻撃は一切効かない。ルールを誤れば一瞬で命を落とす、危険で厄介な敵だ。
深夜二時。
俺たちは依頼主の家ではなく、その近所にある古いアパートの一室に潜り込んでいた。
『隙間男』の噂が最初に発生した場所だ。
「来たぞ……」
レイが息を呑む。
アパートの廊下の蛍光灯が、チカチカと不気味に点滅し始めた。
そして、壁とタンスのわずか数センチの隙間から、黒い影が滲み出すように現れた。
人間の形をしているが、ペラペラの紙のように異様に薄い。
そいつは、ギョロりとした不気味な目をこちらに向け、這うように近づいてくる。
『……スキマ、ハ、ナイカ……?』
掠れた、耳障りな声が響く。
それが何を意味するか、この街の人間なら誰でも知っている。
『隙間男』は、家の中のわずかな隙間に隠れ、目が合った人間の影をその隙間に引きずり込んで押し潰す怪異だ。
「シオン、どうする!? 斬ってもすり抜けるぞ!」
レイが短剣を構えるが、手が微かに震えている。
「落ち着け。あいつの弱点は『隙間』そのものだ」
俺は腰から、あらかじめ用意しておいた「ある道具」を取り出した。
それは、どこの家庭にもある、蛇腹式のプラスチック製「大きなストロー」、そして――「大量の強力な瞬間接着剤」だった。
「は? なんだそれ」
「怪異だって、物理的な『広がり』には勝てない。……行くぞ!」
俺は隙間男が這い出てきた壁の隙間にめがけて、思い切り接着剤を流し込み、さらにストローを差し込んで息を吹き込んだ。
物理法則とオカルトのルールが混ざり合う、ギルド特製の荒技だ。
『ギエエエッ……!?』
隙間男の動きがピタリと止まる。
「隙間」を埋められ、さらに空間を強制的に広げられたことで、ペラペラの体が耐えきれずにメキメキと音を立てて歪んでいく。
「いまだ、レイ! 仕上げだ!」
「お、おうっ!」
レイが懐から取り出した特製の「合わせ鏡」を男の正面に突きつける。
鏡に映った隙間男は、自分の歪んだ姿を見た瞬間、恐怖のあまりキャパシティを超え、パチンとシャボン玉のように弾けて消えた。
あとに残ったのは、静まり返った廊下と、ほんの少しの焦げ臭い匂いだけだった。
明け方、ギルドに戻った俺たちは、無事にクエスト達成のハンコをもらった。
「いやぁ、まさかストローと接着剤であいつを倒すとはな……」
レイが冷や汗を拭いながら苦笑する。
受付の男が、次の羊皮紙をピラリとめくりながら言った。
「お疲れ。次はもっと厄介だ。『喋る首だけの自動販売機』の討伐依頼が入ってる。ジュースを買おうとすると、小銭の代わりに『自分の歯』を要求してくるそうだ」
俺たちは顔を見合わせ、苦笑しながらも、新たな武器と塩をカバンに詰め込んだ。
――さて、次の怪異は、どんなルールで俺たちをビビらせてくれるのだろうか。
第1話、最後までお読みいただきありがとうございました!
初回からさっそくストローと接着剤という謎の武器が登場しましたが、いかがでしたでしょうか。
現代の都市伝説を、冒険者たちがちょっと変な知恵と呪具で攻略していくスタイルで連載していきます。
次回は「喋る自動販売機」のお話です。小銭の代わりに要求されるものとは……?
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