第83話 人生ゲームは自分の人生ではできないことをするから面白い
笛吹はバッグからゲームに接続するコードを取り出し、甲斐甲斐しくセッティングに勤しんでいる。それを待っている俺たち。
つーか、今更ながら、ハードソフトに加え、周辺機器まで持ってくるってとんでもねえな。
「なあ、笛吹。なんというか、移動中さぞ重かっただろう。心中お察しします」
「明日、筋肉痛確定だよ」
笛吹は振り返りもせず、もくもくと作業しながら答えた。
というか、作業中、笛吹はずっと四つん這いになっているから、ずっと彼女のデカケツがこちらに突き出されている、というかなり危うい状況になっている。
そんな状態なのも気にもせず、笛吹は作業を続けている。
しばし、そのデカケツに目を奪われていると。
唐突な肘が俺の脇腹にクリーンヒットしてきた。
「いった! 何事⁉」
「今、笛吹さんのお尻、見ていたでしょ? もうこれで今日の夜だけで重ねた罪は四つ目ね。旅行でようやく正体表したわね」
赤槻警察、強すぎるだろ……。
「お待たせ、さぁ、始めよう」
結局、笛吹が全部準備してくれました。
俺たちの目の前には、いつの間にかコントローラーが用意されている。
というか、コントローラー四つも持ってきたのかよ……。
笛吹のバッグは四次元ポケットか何かか……?
「じゃあ、プレイヤーネームを決めてくれ」
すっかり主導権を握っている笛吹が、回し始める。
……ゲームをやるとキャラ変するのは、旅先でも相変わらずらしい。
笛吹は相変わらず、ゲームで使用するニックネーム『フブキ』。
比屋根は当たり前のように、自分の真名? である『ヒヨテリウス』を使っている。
赤槻は名前ではなくなぜか苗字をそのままで、『あかつき』。
そして俺はつまらないと思うかもしれないが、普通に下の名前の『はるみ』。……いや、人生ゲームって考えれば、一番俺が至極真っ当だろ。
こいつらが滅茶苦茶なだけだろ。
この人生ゲームは、子どもブロック、学生ブロック、若者ブロック、大人ブロックの四ブロックに分かれていて、ゴールまでに資金を一番多く持っているプレイヤーの勝利となるらしい。
なんとも生々しいゲームルールだな、おい。
ルーレットの結果、一番手笛吹、二番手比屋根、三番手俺、四番手赤槻という手番となった。
「よしっ、ではぼくからだね。うーん、流石に、このサイコロ、目押しはできないか」
……いや、流石に、無理があるだろ。
……というか、その発想する時点で、恐ろしすぎるだろ、この子。
笛吹が操作する『フブキ』は、サイコロの出た目の分だけ歩いて、マス目に止まる。なるほど、そのマスに応じてランダムでイベントが起こる感じか。
想像以上に面白そうだ。
さて、笛吹はどんなイベントが起こるんだ。
「なになに……? 運動会で一番を取った。体力ステータスが上がった」
「お前、絶対そういうタイプじゃないだろ!」
と、真っ先に突っ込むほど、笛吹が運動会で一番を取るなんて、おかしすぎる光景だ。
なるほど、こういうプレイヤーに合っていないイベントが起こるのが、人生ゲームの醍醐味だ。
「次は我の番だな。覇道を歩ませていただこう!」
さて、比屋根はどんな人生になるのだろうか……興味、ありまくりです。
「ふむふむ。テストで百点を取った。知力ステータスが上がった」
「お前はそっち系なんかい!」
【悲報】万年の魔女・ヒヨテリウスさん、勤勉タイプでした。
「よし、ようやく来たぜ、俺の番!」
さあ、お待たせしました。
俺こと、青山春海の出番だ。
ここから始まる人生って希望しかないだろ。叶うならば、人生をやり直したい・
ダイスを振って、出たマス分歩く。
「えーと、何々? 町の版画コンクールで入賞した。センスステータスが上がった。やった! これ、滅茶苦茶良くない?」
うお、絶対に現実の俺が合わせない能力、キタコレ。
よしっ、俺は今日からセンス系として生きていこう。
もう、誰にもバカにされない。カリスマと呼ばせてやるぜ。
「そういえば版画なんてあったわね」
なんか、赤槻が明後日の方向で話題を進め始める。
でも、確かにそう言われれば、懐かしいワードだ。
「確かに、あったわ。それ以降、全く見なくなったけど」
「あれ、何だったのかしらね」
「それな……って、次はお前の番だぞ」
「分かっているわよ! えいっ」
と、掛け声をしながらサイコロを振る赤槻。
なんだかんだ、可愛げがあるんだよな、こいつ。
「えーと、何々、お年玉、百万円を貰った。ラッキーだわ」
「貰いすぎだろ! どこの資産家に生まれたんだよ!」
どんな金銭感覚しているんだよ、と思ったけど、ゲームなんで細かいことは気にしない。
そんなこんなで、何ターンか重ねて、子どもブロックが終わり、いよいよ学生ブロック。
皆はどんな人生を歩むのか⁉
人生ゲーム編、続く。




