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第75話 ホテルのWi-Fi使ってするゲームは格別【笛吹風雪視点】

「なぁ、ブリュンダスト。ヘルケルベロスとレッドクリムゾンはどこに居るのじゃ? 全然、帰ってこないではないか」


 部屋には、ぼくと比屋根サンの二人しかいない。


 二部崎先生や九重サン、赤槻サンや青山クンさえも、どこかへいってしまった。


 ……まあ、ぼくには関係ない話だ。

 オンライン大会に向けて、構築を組まなければ。


 ぼくは我関せず、といった具合で、携帯ゲームをプレイする。

 バックの中では、悲しそうに、せっかく家から持ってきたテレビゲームの筐体がこちらを見ている。


 ……本当は皆とテレビゲームをやりたかったけれど、この感じだとできそうにないな。

 少し寂しいけど、仕方がない。

 彼らには彼らの予定がある。

 陰キャのぼくは、それを押しのけてまで、誘う勇気なんてない。


「……なあ、聞いておるのか、ブリュンダスト!」


 ようやく、話しかけられていることに気づいた。

 ぼくの背後で喚いているのは、比屋根日和。

 部活仲間であり、実はオナ中でもある、いつも魔女コスプレをしている奇妙な中二病少女である。


「ちょっと静かにしてくれないかい? もうすぐで構築が完成しそうなんだ」

「なるほどのお。隣で見ても良いか?」

「構わないよ」


 ぼくがプレイしているのは子どもに大人気の国民的モンスター育成&対戦ゲーム。

 可愛らしいモンスターを育てるという子ども向けゲームである側面、その奥深すぎる対戦要素に子どもから大人に至るまで廃人を量産してしまう魔のゲームでもある。


「我も昔、そのシリーズやっておったぞ。へー、なかなかに進化しているんじゃなあ」

「うん。グラフィックも以前とは比べ物にならないくらい、進化しているよね」

「ふむふむ。なあ、対戦やってみてくれないか? ブリュンダストのバトル、見たいぞ!」

「そろそろこの構築を実際に回したいと思っていたから、ちょうどいい」


 オンライン大会に向けて、ランクマッチにもぐる。

 ランクマッチとは、世界のプレイヤーと順位を競う、オンラインのモードである。

 オンライン大会に出場する強力なプレイヤーとの対戦もできるので、大会の練習にはうってつけだ。

 ランクマッチを始めると、すぐにマッチングし、対戦画面に移行する。

 遥か遠く離れた旅先のホテルでも、いつもプレイしている自宅と同じように対戦できるあたり、オンラインの偉大さを感じる。


「ふむふむ。貴公のパーティーはそんな感じか。バランスの取れたいいパーティーじゃな」

「分かるかい?」

「特にこの『アイスレン』とやらの氷のモンスターを入れているあたり、ブリュンダストっぽくていいのう」

「だろ? この子はぼくの嫁モンスターだからね。ほら配置も右上にしているこだわりっぷり。うん? 好きなモンスターを入れて勝てるほど大会は甘くないって? ふっっふっふ。甘く見てもらっては困る。この『アイスレン』さん。何と、堂々ティア1の環境モンスターなのだ」

「急に饒舌になって、どうしたのじゃ、ブリュンダスト……。はっ、もしかしたら、完全覚醒⁉」

「この相手だったら『アイスレン』を選出できそうだな」

「おっ、出陣させるのじゃな」

「そういうこと。あとは、相手のパーティー的に、この子とこの子かな。よしっ、選出完了。対戦始まるよ」

「戦じゃ、戦じゃ~」

「対戦よろしくお願いしま~す」

「対戦前の挨拶。ブリュンダストは律儀じゃの~。そういうところも好きじゃぞ」

「ふぁっ⁉ 急に何を言うんだい……! 照れるではないか……!」

「む。『アイスレン』は先陣ではないのじゃな」

「『アイスレン』はうちの切り札。切り札とは最後に切るから切り札なのだ」

「なるほど。敵にとどめを刺すという特性は持ち主であるブリュンダストに似たのじゃな」

「今更だけれど、ブリュンダストはどういう設定のキャラクターなんだ……」


 そんなやり取りをしながら、試合は終盤へと移行する。

 他の二体でしっかりとお膳立てをして、計画通り、最後に『アイスレン』を召喚する。


「ついに来たな、『アイスレン』! 乾いた大地を凍てつかせろ!」

「……変な口上を勝手に付け加えないでくれるかい?」

「アイスバーン!」

「……勝ったよ」

「流石はブリュンダストじゃ! 我のブリュンダスト!」


 興奮しているのか、比屋根サンはぼくの身体を抱きしめてきた。


「い、痛いからやめたまえ……!」


 その後、二戦して順当に勝利した。

 勝ち逃げしたいので、ぼくはランクマッチをやめ、ゲーム画面を閉じた。


「なあ、ブリュンダスト。せっかく二人きりになれたこのタイミングで、話したいことがあるのじゃが」

「奇遇だね。ぼくもそう思っていたんだ」


 そう。ゲームを切り上げた理由は、もう一つあった。


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