第40話 猫耳こそが至高、異論はない
俺の命令により、笛吹と比屋根はまんまと猫耳カチューシャを頭にかけた。
これが王の特権!
すべては俺の思い通りだ!
「変装になるのう。潜伏活動にはぴったりじゃわい」
「この装備品はどのステータスが上がるんだい?」
小柄な比屋根はスコティッシュフォールド的な愛くるしさがあるし、スタイリッシュな笛吹はアメリカンショートヘア的な気品さがある。
うーん、眼福眼福。
「二人とも可愛いぞ! さぁて、ラストは赤槻だ」
「はぁ、嫌よ!」
「王様の命令は……」
「チッ! やればいいんでしょ、やれば! こんなの貴方の性欲を満たしたいだけじゃないの!」
赤槻はやいのやいの言いながら、猫耳カチューシャをつけた。
セクシーな赤槻はペルシャ猫のような妖艶さを醸し出していた。
「素晴らしい! やべー、どうしよっかな。流石に、コンプライアンス違反かな~。いや、今回ばかりは俺が王様! 俺がルール! よーし、命令するぞー。お三方、俺に『お帰りなさいにゃー、ご主人様』と言ってくれ!」
「はっ、キモ!」
「さすがに恥ずかしすぎるよ……」
「何を言うか、主は我だぞ!」
この提案に大ひんしゅくを受ける。
そんなことは分かっていた。
でも……。
「王様の命令は絶対!」
俺と言う名の王の鶴の一声により、三人は観念したらしい。
「「「お帰りなさいにゃー、ご主人様」」」
うん。今日が命日でもいいや。
赤槻が「覚えてなさい」と怨嗟交じりに呟いた。
「最後は赤槻だな」
「分かりました」
次の王様は赤槻か……。
あんな奴に権力を握らせたら、嫌な予感しかしない。
しかも、先ほどのことがある。絶対に報復を受ける。
「私の標的はただ一つ、青山春海、貴方よ」
ほら、な。やっぱり嫌な予感、的中。
しかし、赤槻の命令は想像の斜め上をいくものだった。
「これから私は女王様、貴方は下僕。分かった?」
「じょ、じょ、じょ、女王様⁉」
「返事は『はい』以外、許さないわよ。いい? この下僕ぅ」
「……はい」
赤槻は俺のあごを人差し指でクイッと上げる。
その女王様っぷりに、俺の身体に下僕が勝手にインストールされた。
「『女王様のためなら何でもします』。ほら、言いなさい!」
「……じょ、女王様のためなら何でもします」
「『女王様に足を踏まれたいです』。ほらっ!」
「……じょ、女王様に足を踏まれたいです」
「ふぅん。そんなに私の足に踏まれたいんだ?」
「はいっ……」
ダメだ。俺は赤槻女王様の言いなりだ。
ニタニタと意地悪い笑みを浮かべる赤槻。こいつの方が万年の魔女・ヒヨテリウスだろ。
「頬に畳を擦り付けて、ひれ伏しなさい!」
「はいっ……ふぬぅ!」
命令通りの態勢をするや否や、赤槻の足が俺の顔面を踏みつける。
そのままぐりぐりと、地面に押し付けられる。
痛い……けど、気持ちいいいいいい!
なんだ、この感覚!
虐げられているのに、俺の肉体は熱くなっていくぅ!
赤槻のゴミを見るような目、たまらねえええええ!
「どう、気持ちいい?」
「はいっ、気持ち良いですうううう!」
「このヘンタイ!」
「ひん! もっと、言ってえええ!」
「こんなこと言われて、嬉しいの? キモっ! このヘンタイ! ヘンタイ! ヘンタイ!」
「はい、私はヘンタイですっ!」
「『私は下卑た豚です』って言いなさい!」
「私は下卑た豚ですっ!」
「卑しく鳴きなさい!」
「ぶ、ぶひいいいん!」
なんだ、これは……!
俺の身体に革命が起きてるぞ……!
快感が身体を駆け巡る……!
「……コンプライアンス違反だ」
気づけば、二部崎先生が赤槻の肩をポンと叩いていた。
冷静になって考えれば、合コンでキスする王様ゲームより過激になっていた気がする。
流石にやりすぎたな、赤槻。
「きみもだ。青山」
え? 俺も?
周りを見渡すと、あの笛吹と比屋根がドン引きしていた。
あっ、一線超えちゃってた……。




