ほんとうはこわいぱんつまほう
「……」
勇者ねーちゃんは、しばらく目を閉じて周りの気配を探っているようだった。
体調がまともで、戦闘に関することだったらかなりカッコイイ。
腹下しで倒れてた時にはヘッポコ剣士だったけれど、こうしてみるとかなり出来そうな雰囲気だ。
周辺察知のスキルより先に気が付いて起きるとか、わりと常人離れしてるし。
さて、剣の腕前の方はどんなもんなんだろうなー?
「……ふむ」
ねーちゃんは目を開けると、握っていた剣から手を離した。
そのまま地面に置いて、またじっと気配を探る。
『オイオイねーちゃん、もしかして気のせいとか偶然で目を覚ましたってヤツかもしかして』
そらあかんなー。
イヤ、まだ警戒は解いてないっポイな。
『森の中だからわかりにくいけど、ゴブたんらしき敵影はけっこう近づいて来とるで?』
ふむー?
いきなり武器を手放すとか、何考えてるんやろ。
さっきまで殺る気まんまんだったのになー?
「……自分のものではない、借り物とはいえ、」
お、なんかねーちゃんが独り語りはじめたで?
「伝説に聞くパンタロゥの力を、この目で見てこの手で試したい、と思うのは当然ではないだろうかと思うのだが……うむう、自重すべきだろうか?」
別にいんじゃね?
というか、装着者のねーちゃん自分でスキル使えるってことなんかな?
『さっちゃんもいくつか使ったことあったろ?』
そういやそだなー。
まあ、攻撃系スキルはほとんど全部ロックかけてたからな。
この機会にねーちゃんに試してもらうかね。
『おう。いんじゃね?』
ってわけで、夜中に光るとまずそうだから、PONPONうぉーまーでポカポカにしちゃる。
「……パンタロゥに力強さを感じる。それは、協力してくれるという意味でよいのだな?」
おう、ねーちゃんの好きなようにやっておくんなましっ!
「……では、まずはこれを試してみるとしよう。ぱんつ・フォール!」
――は?
ねーちゃんがぱんつ・フォールを唱えた瞬間。
俺はどことも知れない場所に浮かんでいた。
ここどこよ?
なんかずいぶん寒いし、星が見える。
……って、うちゅーくうかんってヤツこれまさか。
足元の方に、青緑の星が見えた。
上空、何万キロですかッ!?
『おーい、ぱんつ担当きこえるかー?』
お、おう、どないなっとんのこれ?
『あと3秒くらい』
何が?
『落ちるまで』
は? と思った瞬間、強力な力で引っ張られた。
え?
見る見るうちに、青緑色の星が大きくなってゆく。
って、俺、今、流れ星に、なってゆーーーーー!?
『ナムアミダブツ』
≪にゃにゃーLv5≫
≪にゃんにゃんLv5≫
――プラスチックでできた、BB弾とかでもさ、超音速でぶつけると鉄板ぶち抜けるんだってな?
超音速で地上に叩きつけられた俺は。
ゴブたんの一匹を消し飛ばして、地面に小さなクレーターを作った。
ただの布きれ程度の質量では、流石に森を消し飛ばすとまではいかない。
しかし、凶悪な破壊力を持ちつつも、ピンポイントでゴブ一匹だけを葬り去るというのはまたなかなか恐ろしいものがあった。
「ギャギャーッ!?」
「ギャグー!?」
生き残ったゴブたんたちが騒いでいる。
途中で耐熱と耐火とか上がってなかったら、俺も燃えつきてたんじゃないかねー?
……てか、ぱんつ・フォールこわっ!?
ぱんつ・ふーるとか言っててごめんチャイ。
マジ攻撃魔法だわこれ。でもって身体がもたないのでもう二度とごめんだわー。
しぬわー、マジで。
とりあえず自己再生でほころんだとこ繕っておかなきゃなー。
「サモン・サーぱんつ」
おわ。
ねーちゃんの声が聞こえたと思った瞬間、俺はねーちゃんに穿かれていた。
「……ふむ、強力ではあるが、少し時間がかかるし、いちいちぱんつを脱ぐのはな」
ちょ、俺らよりぱんつ魔法使いこなしてねえ? このねーちゃん。
『そもそも俺らはPP稼ぐために、せんすおぱんちゅばっか唱えてただけで、使いこなすなんてそんなたいそうなことしとらんやろ?』
ぐは、言われてみればそうだわ。
ふぁいあーぱんつとか、危ないから一度も使ったことないしな。
「クリエイト・ぱんつ」
ねーちゃんが腕を振るうと、空中にいくつものおぱんつが生み出された。
これまで俺らがたどってきた、かぼぱんやいちごぱんつなど、色取り取りの様々なぱんつが宙を舞う。
「センス・ぱんつ」
それぱんつ光らすだけの魔法やろー?
そう思ったのだが。
宙に浮いたぱんつは発光せずに、森の奥にいたゴブの方から反応があった。
『まさか、本来の使い方って、ロックオン的なかんじなのか?』
「ファイアー・ぱんつ・フォール」
宙に浮いたさまざまなぱんつが、炎を上げてガトリングガンのごとく撃ちだされた。
瞬く間に森の木々を打ち抜いて、その先に隠れていたのこりのゴブたんをも灰にする。
……マジかー?
『マジなんかー』
勇者ヤバイ。マジヤバイ。
ってか、ぱんつ魔法ってつなげて使えるんかっ?
なんか別の魔法っぽくなってなかった?
『クリエイトして、ロックオンして、撃ちまくりとか。これ一人で大軍相手にできるんじゃね?』
ヘッポコねーちゃんかともってたらマジこわい。
おしっこちびりそう。
≪……にゃー。にゃにゃにゃー。Lv56≫
……ってねーちゃんがしゃばだばーしとるやないけっ!
汚物消去やー。
「……恐ろしい、ものだな。これが、パンタロゥの力、なのか」
いや、ねーちゃんの力ですから。
俺らだけだと、ぱんつ・ふーるですから。
『いや、あながちそうとも言えないんじゃね?』
ん。どゆことさ?
『もしかしたらパンタロゥってゆーのは、着用者に魔法やスキルを使えるようにする、魔法の装備品のことなんじゃね?』
つまり?
『俺ら単体でも、ねーちゃん単品でもこんなすっごいことにはならんくて、俺らとねーちゃんが一緒だからこんなことになってるんじゃねーかと』
ふむー。
何にしても、このねーちゃんが悪いこと考えたら、止められる奴いなさそうだなー。
『混ぜるな危険。勇者とパンタロゥってかー』




