ゆーしゃとおぱんつ
元気になった勇者ねーちゃんは、俺が股間のタワシを消し飛ばしたことに気が付くこともなく、周辺に散らばった荷物をかき集めると、枯れた木の枝を集めて火を起こした。
鍋に水を入れてお湯を沸かし始めたようだ。
「……ふう、落ち着いたらまた、腹が減ったな」
どうやら先ほどの腹の音は、下していたからというばかりでもなかったようだ。
まあ、しっかり食って、体力回復してくれやー。
『しっかし、このねーちゃんも不思議だよな? 腹下して用足してたにしては荷物とかあっちこっちちらばりすぎやろ? 鎧とか木の上に引っかかってたし』
確かに謎だよな?
バク宙でもしながら、ずびずばーしたようなンコの散らばり具合だったし。
初めて会った時ほぼマッパ状態だったのもおかしいしな。
『はだかだったのはあれじゃねえ? たまに全部脱がないとずびずばーできないやつおるやろ? ああいうタイプなんでね?』
なるほどなー。
しかし、人気がないとはいえ、ここまで脱ぐもんかねー?
『あー。ってか、よく考えたら、このねーちゃんの鎧だと着てたらしゃがめなくねえ?』
おー。そか、そうだな。ンコ座りしようとしたら、太ももが鎧にあたるな。
なっとくー。
……ってか、それだと鎧の下マッパだったってことか?
なんにしても変なねーちゃんだよな。
まあ今は俺らを装着してるわけだが。
『まあ、しばらくはこのねーちゃんに付き合うしかねーんだし、細かい詮索はよしとこうぜー?』
おう。
しかし、このねーちゃんは中身も装いも西洋風だよな?
さっちゃんとこはなんか日本風というかアジアンな感じだったけど、勇者ねーちゃんはいわゆるふつーのファンタジーものに出てきそうな、なんかいわゆる中世ヨーロッパ風の装備だよな。
胸鎧に小手、具足、長剣ってか。
騎士ってほど堅苦しい感じは無いみたいだが……。
『冒険者とかおるんかね、この世界?』
シラネ。
でもまあ、このねーちゃんと一緒なら、これまで使い道のなかった攻撃スキルとか、役に立つかもなー?
『スキルロック解除しといた方がいいんじゃね。って、おや、虫の知らせが反応しとる』
え? なんか危ないこと起きそうなん?
『……勇者ねーちゃんが煮込んどる鍋が真っ赤っかに反応してるんだが……?』
「ふふーん、そろそろ煮えたかな~♪」
にんまりとした笑みを浮かべて、なにやらどす黒い色をした鍋の中身を見つめる勇者ねーちゃん。
え、ちょっと。
……マジで、これ食う気ですか?
って、いったい何入れたのさこの鍋っ!?
『なんか荷物から、携帯食料みたいなの鍋に投げ込んでたで? たぶんインスタント食品的な感じだとおもうんだが。お湯で溶かすとスープみたいになるヤツとちがうかな』
ちょ、黒から紫色にかわったんだけどっ!?
なんか変な煙でてるぞ?
「……うむ、ではいただくとしよう」
ってか、くうなよっ!
ねーちゃん! そんなの食うんじゃねーよっ!?
「あむ……ごっくん」
そのとたん。
……ぱたり、と勇者ねーちゃんが倒れた。
≪にゃー。にゃにゃにゃー。Lv55≫
≪にゃー。にゃにゃー。Lv55≫
≪にゃー。にゃんにゃん。Lv3≫
≪にゃー。にゃんにゃ。Lv3≫
またずびずばー垂れ流しやないかーーーっ!?
腹下した原因、絶対そのスープやろっ!?
ってか毒なんじゃねーかっ? それ~っ!?
『止めるまもなかったな……』
まさかあんなのを食おうとするとかおもわんやろ?
まあ、とりあえず。
汚物消去あ~んど、消臭ッ! さらに癒しの白、手加減バージョンだッ!
毎回光の柱立てるのもあれだしネ! 省エネってやつだネ!
MPとか減らないけどさー。
『エコやねー』
おう、電気を大切にネっ! って、電気関係なかったわー。
「……むう、一瞬意識が飛んでいたようだ、すまない、また助けてもらったのだろうか。やはり疲れているのだろうな」
おう。ねーちゃん、もう少し考えて行動しちくり。
「さて、冷める前にと……」
だから食うなよッ! お前学習能力ねーんかっ!!
おぶつ、消去、だーっ!
ひゃっはー! 汚物は消毒だーっ!
「む……!? なにをするのだパンタロゥ。食べ物を粗末にするのは良くないぞっ!?」
アレは食い物じゃ、ねーだろッ!
ひと口食っただけでずびずばー垂れ流して倒れるとか、毒だろっ!?
実際、耐毒とか上がってるしさっ!?
「……もしや」
ねーちゃんが、俺のゴムの部分をちょっと引っ張って伸ばした。
「少しは痩せろ、とでも言っているのだろうか……?」
ちげーよっ!
『……アカン、このねーちゃんだめぽー』
「ふむ。すると、まさか」
もう何でもいいからクソして寝ちまえよ……。
「食料が古くなっていたと、教えてくれたのだろうか。言われてみれば、少しばかり味がおかしかった気もするな……?」
あれが少しで済むもんなんですかッ!?
どうみても人間の食べ物じゃなかっただろ!?
「……すまない、先の無神経な言葉は忘れて欲しい」
おう、わかってくれたんならもうどーでもいいよ……。
『なんか疲れるねーちゃんだわー』
ハゲ同。
勇者ねーちゃんは、あれが最後の食料だったのかしばらく名残惜しそうにしていたが、スープはあきらめてなにかの樹の枝のようなものをかじり始めた。
なんとなく、ハッカのようなすーすーする匂いがする。
ガム替わりなんかね?
『もしかしたら、キシリトールとかみたいな、歯磨き替わりなのかもな? それか単純におやつ代わりみたいな』
まあ、腹減ってるならなんかかじってると気がまぎれるんやろ。
しばらく枝をかじっていたねーちゃんだが、暗くなってきたし寝て腹をごまかすことにしたようだ。
荷物から何か厚手の布を取り出すと、くるりと腰の周りに巻く。
巻きスカートというやつだろうか。
鎧の下はマッパなのかと思っていたが、この巻きスカートを穿いていたようだ。
さらにはマントでくるりと身を包んで、荷物の袋を枕替わりにころりと地面に横になった。
「おやすみだ、パンタロゥ。よい夢を……」
おう、オヤスミー。
俺らは寝たりしないんだけどナー。
よし、よく眠れるようにPONPONうぉーまーでポカポカにしちゃろう。
『ねーちゃん、ずいぶん慣れとるなー』
まあ、俺らが夜番してればそんな危険はないだろ?
周辺察知とか全部オンにしてる?
『おう、ばっちりやで。今んとこ周囲になんの反応もないなー』
周辺察知とかもこのねーちゃんだと範囲広がってる感じだなー。
半径200メートルってとこかね。
「……っ!」
あん?
ねーちゃんいきなり起き上がってどうしたんだ?
『トイレちゃう?』
いや、俺おぱんつやし、そういうのはわかるんだが。違うっポイ。
って、剣もってるし。なんか警戒しとるんか?
『あ! 周辺察知に反応ありや。敵対反応が3。こっちにまっすぐ向かってきてるっぽ』
ちょ、俺らのスキルより先にねーちゃん気が付いたのか。
すげーな!
しかし、まっすぐ向かってくるって、もしかしてさっきのゴブが仲間でも連れてきたんかな?
「……雑魚が、わたしの睡眠を邪魔するとは」
ねーちゃんが、口の端を吊り上げて不敵に笑った。
「睡眠不足は、美容の大敵なんだぞ」
ンコ垂れ流しねーちゃんが、今さら美容とかワロスー。




