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とあるいちにち

 ママさんの朝は早い。

 ママさんはまだ日も昇らない真っ暗なうちに起きる。時計がないので正確な時間はわからないが、4時か5時くらいだろうか。

 ママさんが起きて一番最初にするのは、お祈りだ。

 太陽が昇る方向を向いて、膝をつき、手を組んで一心に祈りを捧げる。

 それは太陽に対する何らかの信仰なのだろうか。それとも、ここにはいないパパさんに向けたものなのだろうか。

 祈る理由は不明だが、闇の中毎日欠かさず祈りを捧げるその姿は非常に美しいものだった。


 祈りを捧げたあとは、窓を開けに行く。

 ガラスの窓なんてこの村にはない。全て木で出来たもので上辺に軸があり、下の方につっかい棒を立てて開けるタイプの窓だ。

 順に窓を開けてゆくと、だんだんと風通しがよくなり、昇り始めた朝日が差し込み部屋の中が少しづつ明るくなってゆく。

 ママさんとさっちゃんの家は、結構広い。二人で住むには少し広すぎるくらいだ。

 基本的に部屋というものがなく、柱がいくつも立ってはいるが基本的にワンルームだ。

 その広い部屋を、屏風というか何か植物で編まれた衝立ついたてのようなもので簡単に仕切っている。

 土間があり、床は地面から1メートルほどの高さにあり、板張りだ。

 天井板は無く、はりがむき出しになっていて、昔の日本家屋風の建物だ。

 窓を開けると次は朝ごはんの支度だ。

 土間に下りて炊事場に向かい、まずは顔を洗う。

 水道、というほど便利なものではないが近くの川から水を引いていて、大きな水瓶みずがめにたまるようになっているのだ。

 鼻歌を歌いながら、かまどまきを突っ込み、間に小枝をいくつも差し込んで、天井からぶら下がる火紐から種火を付ける。

 火紐というのは、油を浸した紐で、まるで線香のように炎を上げることなくじりじりと燃え続ける紐だ。ここから乾いた木の葉っぱのようなものに火を移し、竈に投げ込んで火を起こす。

 虫よけの成分でも入っているのか、まあ蚊取り線香のようなものでもあるらしい。

 鍋に水を張り、まな板からトントンと小気味の良い音が聞こえ始める。

 静かな朝のはじまりだ。

『……なんでドキュメンタリー風なん?』

 え、たまにはよくね?




 さっちゃんの朝は遅い。

 ママさんが日が昇る前に目を覚ましていろいろ家の仕事をするのに対して、さっちゃんはお日様がだいぶ高くなるまで寝床でごろごろだ。

 ベッドのようなものは無く、何かの草で編まれたちょっと分厚い畳のようなものを板の間に敷いて、その上からシーツのような布を被ってオヤスミしている。

「ほらー、そろそろ起きなさいさっちゃん!」

「んー」

 ママさんの声にも生返事で、ぱんつ丸出しで大股びらき。

 ちょっと寝相悪いぞさっちゃん。

 夜の間は寝冷えをしないように「PONPONうぉーまー」で適度にお腹を温めていたが、そろそろいいだろう。

 寝ぼけ眼で起き上がるさっちゃん。

「おしっこー」

「はいはい」

 ママさんに抱かれて、部屋の隅にある衝立の向こうに連れて行かれるさっちゃん。

 おトイレは意外なことに水洗だったりする。

 すぽーんと俺を脱ぎ捨てて、さっちゃんが地面に掘られた溝の上にしゃがみこんで用を足す。

 近くに用意された水瓶から柄杓で水を溝に流すと、きれいさっぱりという感じだ。

『幼女の放尿シーンとか、興奮するな!』

 変態やな。

「ぱんたーろー!」

 はいよー。

 俺を穿いたさっちゃんのご要望にお応えして、おまたを綺麗に汚物消去。一応、さっちゃんもおしりふき用の布とかでぬぐってはいるのだけど、俺の汚物消去にはかなわない。

 いつでもさっちゃんのお尻を清潔に、つやつやすべすべに保つのが俺のお仕事なのだ。

『ぬはは、これぞぱんつ道!』

 まあ、通気性とかばつぎゅんだしな!



 さっちゃんが起きるのが遅いので、ママさんはご飯を温め直している。

 ママさんがお料理をするのは基本的に朝だけだ。お昼と夕方は朝に作ったものを温め直して食べている。

 朝、大鍋で料理をするときには土間の竈でガンガン薪を使っていたが、料理を温め直すときには囲炉裏のような場所に、固形燃料のようなものを並べて小鍋を使う。

『伊ロリとかなんかえっちな響きやな』

 お前は黙っとけ。でもイタリア幼女とかレベル高いなオイ。

 固形燃料は大きさで火力と燃焼時間が決まっているらしく、いくつかの大きさがある。

 干し草と家畜のフンを練り合わせたようなものらしく、燃やすと結構臭いがする。

 慣れたものなのか、さっちゃんもママさんも臭いは気にならないようで、ご飯を食べている。

「あむあむ」

「ほら、さっちゃん。こぼしちゃだめよ」

 さっちゃんは、ぽろぽろ口の端からご飯をこぼしている。いっぺんに頬張りすぎなんだよな。

 食いしん坊さっちゃんめー。

『汚物消去やー』

 ぱんつにまでこぼれてきたものを消し飛ばす。

 しかし大活躍だね! 汚物消去!

『いずれはうんこマンも消し飛ばしちゃる!』

 いいな! それ!



 ご飯が終わると、さっちゃんはお勉強タイムだ。

 毎日、というわけでもないけれど、ちゃぶ台に座ってママさんから何やら教えられている。

 今はまだ、文字を教えられている感じだろうか。

 意外なことに、紙や本といったものは結構普通にこの世界にもある。

 なんというか、あれだ、東南アジアとか南米の田舎みたいな感じだろうか。掘立小屋なのに中には日本製のテレビがあるみたいな、場違い感。

 さっちゃんたちのおうちは、すごく昔の日本風なのに、意外に工業製品っぽいものもあるのだ。先に上げた紙や本しかり、ブリキのおもちゃのようなものだったり。

 流石に電化製品的な物はないようだが、意外にモノがあふれているのだ。

 見たことがあるわけではないのだが、生活感からして昭和初期の日本、と言った感じなのだろうか。

『……まだドキュメンタリー続けるのん?』

 いいだろー、たまには。

「ふんふんふーん!」

 お勉強は終わったらしく、さっちゃんがご機嫌でお絵かきを始めたようだ。

「あらあらさっちゃん、上手ね」

「ぱんたろーなのー!」

 ぱんつの位置からはよく見えないが、どうやら俺の絵を描いてくれたらしい。

『おー、なんか嬉しいなー』

 だよなー。


「ぱんたろーは~、ぱんつなの~♪

 さっちゃんの~、ぱんつなの~♪

 すてきな~、ぱんつなの~♪

 だいすきな~、ぱんつなの~♪」


 作詞作曲さっちゃんの「ぱんたろーのうた」いただきました!

「まあまあ、上手ね、さっちゃん。ママのお歌はないのかしら?」


「ままは~、ままなのぉ~♪

 さっちゃんの~、ままなのぉ~♪

 すてきな~、ままなのぉ♪

 だいすきな~、ままなのぉ~♪」


「ありがとう、さっちゃん」

 ママさん、さっちゃんをぎゅーって抱きしめた。

『歌詞変えただけやん?』

 ばかっ! 即興でママさんのおうたを作れるさっちゃんの才能に恐れおののくがいいわっ!

『なんでやねん』




 ママさんとさっちゃんの夜は早い。

 ぶっちゃけ電気とかないので日が沈むと同時に眠りにつくような生活だ。

 夕方、日が沈む前に、少し離れた場所に建てられたお風呂場に二人そろってはいる。

 すぽーんとさっちゃんが服を脱いで、それから俺もすぽーんと脱ぎ捨てる。三歳にして大胆な脱ぎっぷりには少しばかり感心する。

『すっぽんぽんの幼女ハァハァ』

 だから、さっちゃんに邪な考え起こすなちゅーに。



 お風呂から上がると一日も終わりだ。

「まま、おやすみなのー」

「おやすみなさい、さっちゃん」

 こうしてママさんとさっちゃんの一日が終わる。

『……ところで、ママさんたちどうやって生計たてとるんやろな?』

 こら、いい感じで締めようとしてたのに余計なことゆーな。

『だからなんでそう、ドキュメンタリーにこだわるんやー』

 別にいいだろー?

 って、そういや言われてみればママさんとか家の仕事しかしてないよな?

『不思議なことに買い物とかも、週一くらいで玄関前に籠いっぱいに食料品とかおいてかれるけど、お金払ってるとこ見たことないやろ?』

 だよなー。

 なんか軍服っぽいの着たキレイなおねーさんが持ってくるヤツな。

 どこかのお店の制服かともってたけど、もしかしてパパさんが軍関係とかなんかな?

『シラネ。でもまあ、パパさん関係ってのはありそうやね』

 んー、それにママさんが外に出かけるのって、洗濯の時に川に行くくらいだし、だいたい俺らも一緒に洗われとるからなー。

 あとはだいたいうちの中だろ、ママさん。

『ママさんがさっちゃんから離れることないからなー』

 さっちゃんがまだ手のかかる歳だしな!

 子育てしながら働くとか無理だろうし。

 謎だなー。

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