いたいのいたいのとんでいけ
いちごぱんつ生活も、あまり長くは続かなかった。
PPを稼ぎ過ぎてすぐにカンストしてしまった、というわけではない。
どういうことかというと。
「きょうはねー、ねこさんがいいのー」
はいよー。
俺は少しばかりPPを消費して、ぷりんとおぷしょんを「にゃんこ」に変更した。
≪ぷりんとオプションが変更されました≫
≪クラスチェンジが発生しました≫
≪いちごぱんつ Lv10 → にゃんこぱんつ Lv3≫
シス子ちゃんのかわいい声を毎日のように聞けるのはイイネ!
『ええよなー』
要するに「ぱんコレ」で「ぱんてぃ系」となっていたぱんつの各種は、色オプション、柄オプション、ぷりんとオプションを自由に切り替えることが出来たのだ。
これにより、少々PPは消費するものの、LvがMAXにならなくてもかなりの種類のぱんつになることが出来るようになったのだ。
「純白ぱんてぃ」をはじめとした色系では各色にちなんだ属性魔法を。
「いちごぱんつ」をはじめとした柄系では柄にちなんだいろいろな攻撃スキルを。
「にゃんこぱんつ」をはじめとしたぷりんと系では少し特殊なスキルを。
それぞれ大量に習得することになったのだ。
しかも、一度変身したぱんつのスキルはどのぱんつでも使える。
スキルは増えていく一方で、把握できないものもでてきたくらいだ。
『まぁ、代わりに各ぱんつのレベルはなかなかあがらなくなったけどなー』
それは仕方ないよなー。
ぶっちゃけ、レベルMAXにしなくても別のぱんつに進化可能ならそもそもレベル上げる意味がないよね?
ぱんつのレベル上がったからって、スキル増えるわけでもないしさー。
『ぱんコレと同じなら、進化条件に関わってるんと違う?』
ふむー?
まあ、今は気にすることねーよな。
さっちゃんの方もすっかり日替わりぱんつに慣れてしまって、最近では朝起きたときに、リクエストしてくれるようになってるし。悪いこととはないよなー。
『いまさらだけどさ、さっちゃんもママさんも、俺らが普通のぱんつじゃないってことを平気で受け入れとるよな?』
そだなー。
最初のころはママさんから何度か不審な目でみられたけど、今は俺が何やっても「あらあら、まぁまぁ」みたいな感じだしなー。
『なんていうか、俺らが居ることわかってるみたいだよな?』
まあ、スキル使いまくりな時点でバレてるだろなー。
『なんで受け入れられるんやろな?』
え、不思議ぱんつだからじゃね?
なんかママさんの話聞きかじった感じだと、俺らみたいのはパンタロゥっていう不思議アイテムなんだろ?
『いや、常識でかんがえてみ? なんか知らんけど意思が宿ってるぱんつとか、キモくね? お前がさっちゃんの親だとしてさ、娘のぱんつにどこの誰とも知れない変態男の魂が宿ってると知ったら……』
俺なら速攻で灰にしちゃるね! そんなぱんつ!
『だよなー』
んじゃ、妙な疑いをもたれそうなことはやめとこうぜー。
俺ら自分たちじゃなんもできんし、ママさんに捨てられたら終わりやで?
『おまいはまず、ママさんのお風呂覗くのをヤメレ』
あれ、なんか電波状況が悪いのかな。なんかよく、きーこーえーなーい。
わりとインドア派なさっちゃんなのだが、珍しく今日はお外で遊んでる。
ママさんもあんまり外に出ないし、二人ともちょっと運動不足なんじゃね、って思ってたから少し安心だ。
浴びすぎると将来皮膚ガンとかになるらしいけど、やっぱお日様浴びないとビタミンDがね。
『でも色白で深層の令嬢なさっちゃんもよくね?』
いいなー。
けどやっぱ少しはお日様浴びた方がいいよ。
……それはいいんだけど。
『うんこマンな』
おう、うんこマンはなぁ……。
なんで珍しくさっちゃんがお外で遊んでいるかというと、近所のうんこマン・たっくんが「遊ぼうよ」って襲撃かけてきたからなんだよなー。
『まあ、この村ってさっちゃんとうんこマンくらいしか子供いないからしょうがないんじゃね?』
若いヤツが少ないってわけでもなさそうなのに、子供が少ないって変なとこだよなー。
『だよなー?』
しかし、うんこマンの視線が気になるなー。
『気になるなー。なんやチラチラ俺らの方を見てるし』
うんこマンはさっちゃよりふたつかみっつくらい上だよな。
……そろそろおにゃのこのおぱんつに興味持つ年頃なんかな。
『あれだ、さっちゃんがさ、”ねこさんぱんつ、かわいいでしょー?”っておぱんつ見せて回るのがいけないんじゃね?』
あれが、うんこマンの煩悩を刺激したかもなー。
さっちゃんまだ羞恥心とか薄いんだよな。三歳くらいだししょうがない気もするけど。
『うんこマンには気をつけんと、またさっちゃんのおぱんつ脱がそうとするかもしれんぞ?』
あ、また目が合った。
やっぱ狙っとるな、あいつ。
忘れるなっ! 貴様がぱんつを覗き込むとき、ぱんつもまた貴様を覗いているのだということをッ!
さっちゃんのおぱんつに劣情の眼差しを向ける者に禍いあれッ!
『なんのこっちゃ』
「あっ」
不意に。
ざくん、とした衝撃があった。
ちょうどさっちゃんは疲れたのか、木陰のベンチに座ろうとしたところで。
古い木製のベンチは、ゆるくなった釘が突き出ていた。
ボロボロにさびた釘は、ただの布である俺の身体を簡単に貫いて。
さっちゃんの柔らかなお尻を、傷つけた。傷つけてしまったのだ。
……なんて、こったっ!!
『さっちゃん!』
「……ううー」
じわり、と涙目になるさっちゃん。
俺の身体が、さっちゃんの血で赤く染まる。
けっこう傷が深い。
さびた釘などで傷ついた場合、破傷風などの危険もある。
こんな、こんな危険から守るために、俺らは頑張ってたはずなのに!
耐久性のステータスは、防御力とは違うって言うのかよっ! こんな簡単に破れやがって俺の馬鹿!
ああ、ちくしょうっ!
『……落ち着け。白パンの”癒しの白”が使えるんじゃね?』
ああ、そうだった。
すべてを癒す、安らぎの白っ!
純白ぱんてぃのスキルを発動させる。使う機会がないのですっかり忘れていたが、「ぱんコレ」と同じであるなら回復魔法だ。
HPを回復する魔法が、実際の魔法としてどういった形で発動するのかはわからなかったが、使わない理由は無い。
行くぜ、癒しの白っ! さっちゃんのおしりを、癒してくれっ!
「……さっちゃん、どうかしたの?」
「うああん、うあああん。おし、おしり、いたいの」
立ち上がってぽろぽろと涙をこぼすさっちゃんの服に血がついているのに気が付いたのか。
うんこマン・たっくんがさっちゃんの服の裾をつまんで引っ張り上げた。
――見てんじゃねえよっ!
白い光が、さっちゃんのおしりを覆い尽くした。
ちりちりと癒しの力が、さっちゃんのおしりを癒していく。
血で汚れた部分は汚物消去で消し飛ばし、破れた部分を自己再生で修復する。
いたいの、いたいの、とんでいけーっ!
「……あ。いたく、なくなったのー」
ぱちくりとまばたきをするさっちゃん。
そして、さっちゃんの服の裾をつまんだまま、全てを見ていたうんこマンは。
「わ、わ、わー」
びっくりした顔で、その場に尻もちをついて後ずさった。
「さ、さっちゃん、そのぱんつ、何?」
「ぱんたろーなのー!」
にこにこさっちゃん。
釘の刺さったところを手で触って、元通りになっていることを確認したあと。
さっちゃんはぷりん、とおしりを振った。
「すてきでしょう? さっちゃんのおぱんつー」
「変だよ、それ。あ、もしかして、前に、アチチってしたのももしかして……」
「あちち……?」
流石にさっちゃんは小さすぎて覚えていなかったようだが、うんこマンはオシメの時に俺が「PONPONうぉーまー」で指をアチチにしてやったのを覚えていたらしい。
「……」
なにかもごもごと言いかけて、「帰る」ってうんこマンは逃げるように去って行った。
「……?」
一人残されたさっちゃんは、何が何だかわからない様子で首を傾げていたが、「おうちかえるのー」ってスキップしながら家路についた。
『……なあ、うんこマンの目の前でスキル使ったのまずかったんじゃね?』
なんでさ?
早く治してあげないと、さっちゃんがかわいそうだったじゃねーか。
『……前にもちらっと言ったけどさ、この世界魔法とかスキルとか使えるの、もしかして俺らだけなんじゃね? そんなのバレたら、なんかよくないこと起きそうな』
ガキのたわごとって、言われるだけだろー。
気にスンナ。
しっかし、スキルとかいろいろ覚えたけど、無駄に攻撃スキルばかりで役にたたねと思ってたけど、初めてさっちゃんの危機を救えたんじゃね?
もっと”癒しの白”みたく実用的なスキルないもんかね。
「おひっぷアップ」だとか、「お通じヨクナール」とかさー。
シス子ちゃん、どない?
≪……審議中≫
≪まだ不要と判断されました≫
まあ、さっちゃんまだ三歳やしな。美容系はまだ将来の話かもな。
『ってゆーかさ、覚えるのが攻撃系のスキルばっかなのは、もともとの「ぱんコレ」が部隊組んでバトルするゲームだったからなんじゃね? この先ずっと戦闘系スキルばっかな希ガス』
……。
…………?
……ッ!!!
そういや、そういうゲームだったーっ!?




