第6の聖獣、鉄槌を下す。〜物理最強のヤンキー聖獣と、消し炭になった悪党〜
第6の聖獣、鉄槌を下す。〜物理最強のヤンキー聖獣と、消し炭になった悪党〜
監査長室の空間が、ガラスの割れるような凄まじい音を立てて裂けた。
紫銀色の雷光がチリチリと空気を焦がす中、聞き慣れた『便所サンダル』の足音を響かせて現れたのは、黄金のリーゼントに特攻ジャージ姿の男。
第6の聖獣にして次元超越者、麒麟――リキ兄貴だった。
「……おい。誰の許可得て、俺のマブダチに刃物向けてんだ、あァ?」
部屋の空気が一瞬にして凍りつく。
ただそこに立っているだけで、魂を押し潰されるような圧倒的な『神気』。神に近しい存在が放つ本気の怒りに、買収されていた騎士団長は白目を剥いてその場に気絶し、デスクの奥にいた監査長はガタガタと震えながら拝むように平伏した。
「り、リキ兄貴……!」
「おぅ、ミオ嬢ちゃん。間に合ってよかったぜ。ルナキンでテイクアウト待ってたら、テメェのピンチの気配がしてよ」
リキ兄貴は私に軽く片手を上げた後、地べたを這いずっているザックスを見下ろした。
「ぐ、ひぃぃ……っ、ば、化け物……っ!」
私の投げつけた『人参マンドラ抽出・超麻痺パウダー』によって身体の自由を奪われていたザックスだが、聖獣の威圧感による本能的な恐怖で、無理やり首だけを持ち上げて後ずさろうとしていた。
だが、その手にはまだ、私を殺そうとした猛毒塗りの短剣が握りしめられている。
「往生際の悪い野郎だ。テメェみたいなドグサレはなぁ、法律で裁く前に、まず『根性』を叩き直してやらなきゃいけねェんだよ」
リキ兄貴が右拳をギュッと握りしめる。
瞬間、バチバチィッ!! と眩い紫銀色の雷撃が、彼の拳に集束し始めた。
数億ボルトにも達する無次元の聖なる雷。直撃すれば、物理的にも魔法的にも、対象の存在そのものを一瞬で消し飛ばす絶対破壊の力だ。
「おい小僧、嬢ちゃんの目を覆ってやれ。少しばかり焦げ臭くなるからな」
「は、はいっ!」
リキ兄貴の言葉に、アルトさんが咄嗟に私の背後に回り、両手で優しく私の目を覆った。
彼のペンダコのある少しひんやりとした手が、私の視界を塞ぐ。けれど、指の隙間から強烈な光が漏れ出し、空気が焦げるような匂いが部屋に充満するのが分かった。
「ひ、ひぃぃぃぃッ! や、やめろ、俺はゴルド商会の……ッ!」
「ゴタクはいい。テメェの薄汚い魂ごと、消毒してやらァ!!」
リキ兄貴の雄叫びとともに、彼が右の拳を真っ直ぐに突き出す。
「【聖雷・鉄拳制裁】!!」
ドゴォォォォォォォンッッ!!!
監査局の頑強な石造りの建物全体が、まるで大地震でも起きたかのように激しく揺れた。鼓膜を突き破るような爆音と、部屋中を白く染め上げる閃光。
アルトさんの腕の中で、私は思わずギュッと身を縮めた。
「……もう、いいですよ。終わったみたいです」
アルトさんの落ち着いた声で、私の目を覆っていた手がそっと外される。
おそるおそる目を開けた私の視界に飛び込んできたのは――見事なまでの『消し炭』だった。
「あ……あわわわ……あぁぁぁ……」
ザックスは生きていた。
リキ兄貴の放った『聖雷』は、ザックスの身体スレスレで寸止めされ、彼自身には一切の危害を加えていなかったのだ。
しかし、その余波とコントロールされた雷撃により、彼が着ていた高級スーツ、身につけていた魔法防具、そして手にしていた猛毒の短剣……その全てが、一瞬にして真っ黒な灰と化し、パラパラと床に崩れ落ちていた。
残されたのは、文字通り『丸裸(黒焦げのパンツ一丁)』になり、恐怖のあまり腰を抜かして泡を吹いている、哀れな中年の姿だけだった。
「チッ、嬢ちゃんたちの前だから手加減してやったが。……次に俺のマブダチに手を出そうなんてフザけた真似を考えたら、今度は魂ごとあの世行きだぜ。分かったか、コラ」
「ヒィィィィィッ!! お、お助けェェェェッ!!」
リキ兄貴がサンダルの踵を鳴らして一歩踏み出しただけで、ザックスは完全なパニックを起こし、自ら白目を剥いて気絶してしまった。
「やれやれ。やっぱり、圧倒的な物理暴力の前には、どれだけ策を練っても敵いませんね」
アルトさんが、丸眼鏡をクイッと押し上げながら苦笑する。
だが、その声はどこかホッとしたように優しかった。
「アルトさん……」
「怪我はありませんね、ミオさん。……本当に、無事でよかった」
アルトさんが私の肩を抱き寄せる。気弱な法務官の、心からの安堵の吐息。
法廷では彼が私を守り、彼が守りきれない物理的な脅威は私が麻痺薬で迎撃し、最後は頼れる聖獣が全てを消し飛ばす。
私たちは、お互いの弱点を補い合う、最高の『共犯者』なのだと改めて実感した。
バタンッ!!
「内務査察部隊である! 逆賊ザックスと、買収された地方騎士団長を捕縛……え?」
遅れて部屋に突入してきた査察部隊の騎士たちが、部屋の惨状(丸裸で黒焦げになっているザックスと、泡を吹いている騎士団長)を見て、ポカンと口を開けて固まった。
「あ、お疲れ様です。対象は既に制圧済みですので、連行をお願いします」
アルトさんがすかさずヘタレな下級役人の顔に戻り、ペコペコと頭を下げる。
我に返った査察部隊が、手際よくザックスたちを拘束し、引きずっていく。
「彼らの行き先は……やはり、マグローザ漁船(蟹工船)ですかね?」
「ええ。ゴルド商会の不正は本国で徹底的に解体されますし、ザックスたちはシーラン海の荒波に揉まれながら、一生をかけて借金を返済することになるでしょう。船内通貨である『K』を稼ぐため、せいぜい地獄を見てもらうことになりますね」
アルトさんが、去っていく悪党の背中を見送りながら、極悪な笑みを浮かべた。
完全なる社会抹殺と、物理的なトラウマの植え付け。
私たちの平穏な日常を脅かした輩は、もう二度とポポロ村の土を踏むことはできない。
「よォし、片付いたな! 俺ァもう腹が減って限界だぜ。嬢ちゃん、今夜は祝勝会だ! ルナキンでステーキ奢ってくれや!」
リキ兄貴が豪快に笑い、私の頭をガシガシと撫で回す。
「もう、リキさんったら。……でも、助けてくれたお礼はしないとね。アルトさんも、今日は私のおごりよ。ルナキンの全メニュー、好きなだけ頼んでいいわ」
「本当ですか? ふふっ、それなら僕は……一番甘いデザートと、それから、ミオさんの隣の席を所望します」
アルトさんが私の手を取り、悪戯っぽく微笑んだ。
戦いが終わり、いつもの温かい時間が戻ってくる。
私は彼の手を強く握り返し、最高の共犯者と、最強の聖獣と共に、ポポロ村の夕暮れ空の下へと歩き出した。
いかがでしたでしょうか!?
リキ兄貴の【聖雷・鉄拳制裁】が炸裂!
悪党を殺すのではなく、服と武器だけを綺麗に消し炭にして「丸裸で土下座(気絶)」させるという、最高に情けなくスカッとする物理ざまぁが完了しました!
そして、雷光からミオの目を覆ってあげるアルトの過保護っぷり。
法と知略のアルト、チート薬学のミオ、物理最強のリキ兄貴。この3人が揃えば、どんな悪党も絶対に敵いませんね!
ザックスたちの悲惨な末路(蟹工船行き)も無事に確定しました。
次回は、第一章の最終回【エピローグ】です!
平和が戻ったミオ薬局で、アルトの極悪っぷりは鳴りを潜め、元のヘタレ法務官に戻る……と思いきや?
二人の甘〜い関係の行方にご注目ください!
【読者の皆様へ、作者から全力のお願いです!】
「リキ兄貴のざまぁ最高!」「服だけ消し炭はエグいww」「アルト過保護すぎ好き!」
と、少しでもスッキリ&キュンとしていただけましたら……
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