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辺境のチート薬師ですが、気弱な法務官(実は極悪策士)に溺愛されています〜ヤンキー聖獣と悪党を合法的に社会抹殺〜  作者: 月神世一


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第一章 バディ結成と、極悪ヒーローの覚醒

喋るキャベツと走る人参、そして最悪の来客

「ギャアアアアアッ!!」

 朝っぱらから、鼓膜を突き破らんばかりの絶叫が裏庭に響き渡った。

「こらっ、待ちなさい! 今日はどうしてもあんたの根っこが必要なの!」

 私が息を切らして追いかけているのは、見事な二本足で猛ダッシュするオレンジ色の野菜――『人参マンドラ』だ。

 ポポロ村の特産品の一つであるこの人参は、引っこ抜くと「ギャーッ」と煩い悲鳴を上げて逃げ出すというとんでもない生態をしている。

「ギャ! ギャアアアア!」

「ちょこまかと……っ、そこまでよ!」

 タローマン製の機能的なエプロンドレスの裾を翻し、私はスライディングキャッチで人参マンドラを捕獲した。ジタバタと暴れるそれをしっかり小脇に抱え、ふうと額の汗を拭う。

「おはようございます、ミオさん。今朝も元気ですねえ」

「あ、村長。おはようございます」

 通りかかった村人が笑いかけてくれる。私は薬師寺澪ミオ・ヤクシジ、二十二歳。

 前世は日本のしがない薬剤師だったけれど、気づけばこの『アナスタシア世界』に転生していた。

 今ではここ、ルナミス帝国とレオンハート獣人王国、そしてアバロン魔皇国の緩衝地帯である『ポポロ村』の端っこで、小さな薬局を営んでいる。

「さて、今日の仕込みを始めますか」

 店内に戻った私は、捕まえたばかりの人参マンドラの根を少しだけ切り取り(本体は土に返せばまた生えてくる)、作業台の上に並べた。

 他にも、収穫の瞬間に「隊長が昨日キャバクラでぼったくられてましたよぉ!」と命乞いしながら三面記事ネタを叫ぶ『ネタキャベツ』や、エロ本を取り上げると「我が身を食べたまえ」と突如賢者モードに入る『たまんネギ』など、この世界にはトンチキな植物が山ほどある。

 だけど、私のユニークスキルにかかれば、これらは最高級の薬の材料になるのだ。

「【成分解析アナライズ】」

 私が呟くと、視界に半透明のウィンドウが浮かび上がり、植物の分子構造や有効成分がずらりと表示される。

 前世の薬学知識と、この世界で得たチートスキル。

 抽出した成分をマナ(魔力)を触媒にして組み合わせる。

「【錬成合成アルケミスト・ラボ】!」

 淡い光が作業台を包み込み、一分後には、鮮やかなエメラルドグリーンの液体が入った小瓶が完成した。

「よし。ポポロ村秘伝『月光薬』の、ミオ特製・量産型バージョン。完成!」

 本物の月光薬は、聖なる泉と月兎族の力が必要な伝説の秘薬だ。私はそれを成分解析し、完全とはいかないまでも、あらゆる傷や病を治す『疑似月光薬』を錬成することに成功していた。

 チリンチリン。

 ドアベルが鳴り、お客さんが入ってくる。

「ミオ嬢ちゃん、いるか? 昨日、マグローザ漁船から命からがら逃げ出してきた奴がいてな、酷い傷なんだ。あんたの薬、売ってくれ」

「はいはい、冒険者さんですね。ちょうど出来立てがありますよ。代金は銀貨二枚です」

「助かるぜ! 嬢ちゃんの薬は、ルチアナ教会の治癒魔法より効くからな!」

 こんな風に、私の薬局は今日も平和に……そしてそこそこ繁盛しながら営業していくはずだった。

 ドンッ!!

 突如、店のドアが蹴り破られるかのような勢いで開かれた。

 和やかだった店内の空気が、一瞬にして凍りつく。

「おいおい、こんな辺境の小汚い店で、随分と景気のいい話をしているじゃないか」

 現れたのは、仕立ての良さそうな、しかし成金趣味丸出しの派手なスーツを着た男だった。その後ろには、剣や鈍器で武装した柄の悪い私兵たちが数人、ニヤニヤと下品な笑みを浮かべて立っている。

 男は土足のままズカズカと店内に上がり込むと、陳列されていた薬瓶を値踏みするように手に取った。

「あんたたちは? ここは薬局よ。冷やかしなら帰ってちょうだい」

 私が毅然と言い放つと、男は鼻で笑った。

「冷やかしなものか。俺はルナミス帝国屈指の大商会、『ゴルド商会』の幹部、ザックス様だ。今日は、辺境でくすぶっている哀れな薬師に、素晴らしいビジネスの提案をしに来てやったんだ」

 ゴルド商会。食料から武器まで何でも扱う大陸屈指の大企業だ。しかし、その裏では強引な地上げや借金の取り立て、違法まがいの契約で暴利を貪っているという黒い噂が絶えない。

 ザックスと名乗った男は、懐から一枚の羊皮紙を取り出し、バンッとカウンターに叩きつけた。

「お前が作っている『疑似月光薬』とやら。その製造方法と販売権を、我がゴルド商会が独占管理してやる。お前は俺たちの下請けとして、一生薬を作り続ければいい。光栄に思え」

 横目で契約書を盗み見た私は、危うく鼻で笑いそうになった。

 そこに書かれていたのは、利益の九割を商会が搾取し、私にはわずかな生活費しか支払われない、完全な奴隷契約だった。

「……お断りします。私はこの村の人たちや、本当に薬を必要としている人たちのために作っているの。あなたたちみたいな悪徳商会に、私の薬を独占させる気はありません」

 私がはっきりと拒絶すると、ザックスの顔から薄ら笑いが消えた。

「おいおい、小娘。自分が誰に口を利いているのか分かっているのか? ゴルド商会に逆らって、ただで済むと思っているのか?」

「出ていってください。営業妨害でルナミスの自警団を呼びますよ」

「自警団だと? ハッ、あいつらなら既に俺の袖の下で大人しくしてるさ」

 ザックスが顎をしゃくると、後ろに控えていた私兵たちが一斉に武器を抜き、私を取り囲んだ。

「さぁ、大人しくこの契約書にサインしろ。さもなければ、この小汚い店ごと、お前の両腕をへし折ってやる。腕がなくなれば、大好きな薬作りもできなくなるからな」

 圧倒的な暴力による脅迫。

 チートスキルを持っているとはいえ、私はただの薬剤師だ。戦闘訓練なんて受けていないし、魔法で攻撃することもできない。

 男たちの放つ闘気と殺気に、じわりと嫌な汗が背中を伝う。

(どうしよう……っ)

 私兵の一人が、脅すように作業台の上の薬瓶を叩き割った。ガチャンという鋭い音が響き、緑色の液体が床にぶちまけられる。

「さっさとサインしろ。俺は気が短いんだ」

 ザックスが私の胸ぐらを掴もうと、汚い手を伸ばしてきた。

 思わず目を瞑り、身構えた、その瞬間――。

「あ、あのぅ……」

 震える、情けない声が店内に響いた。

「営業時間中の乱暴狼藉は……やめて、いただけないでしょうか……?」

 目を開けると、ザックスと私の間に、一人の青年が立ち塞がっていた。

 丸眼鏡に、タローマン製の安っぽいスーツ。少し猫背で、いかにも線の細そうな体つき。

 彼は、ルナミス帝国地方監査局の下級法務書記官であり、私の店に毎日のように胃薬を買いに来る常連客――アルト・クレイマンだった。

「あぁん? なんだお前は。引っ込んでろ、モヤシ野郎!」

 ザックスの手下が、アルトの胸ぐらを乱暴に掴み上げる。

 農家のおばちゃんよりも非力なアルトは、子猫のようになす術もなく宙に浮き、ガチガチと歯の根を鳴らして震えていた。

(アルトさん……っ!)

 絶体絶命のピンチ。

 まさか、気弱で争いごとが大嫌いな彼が、こんな物騒な連中の前に飛び出してくるなんて。

 だが、私はこの時まだ知らなかった。

 震えるアルトの丸眼鏡の奥の瞳が、恐怖ではなく、獲物を値踏みするような『極悪な光』を宿していることに。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

ついに始まりました、チート薬師ミオと、極悪(?)ヘタレ法務官アルトの合法的ざまぁ物語!

第1話はいかがでしたでしょうか?

「ゴルド商会のザックス、ムカつく!」「アルトどうなっちゃうの!?」と思っていただけたら嬉しいです。

次回、アルトの【真の恐ろしさ】と【強烈なギャップ萌え】が炸裂します!(※作者一押しの見せ場です!)

そして、あの最強ヤンキー聖獣も便所サンダルを鳴らしてやってくる……!?

スカッと爽快な大逆転劇をお約束しますので、ぜひ楽しみにお待ちください!

【読者の皆様へ大切なお願い】

もし「面白そう!」「続きが読みたい!」「アルトの反撃が見たい!」と少しでも思っていただけましたら、

ページ下部にある【☆☆☆☆☆】の星を【★★★★★】に押して応援していただけないでしょうか?

また、【ブックマークに追加】を押していただけると、最新話の更新がすぐに分かります!

皆様の星とブックマークが、アルトの悪知恵を加速させ、作者の執筆スピードを爆上げする最強の『月光薬』になります!

何卒、応援のほどよろしくお願いいたします!

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