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聖魔合一 ~魔神の眼を持つ勇者~  作者: あんずじゃむ
第一章 魔族襲来編
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第011話 反撃~VS鱗の魔族②~

第009話、第010話のタイトルを変更しました。

第009話 襲撃~命がけの戦い~ → 第009話 襲撃~VS蜥蜴の魔族~

第010話 合流~まもるということ~ → 第010話 合流~VS鱗の魔族①~

 空に浮かぶ鱗の魔族。

 こちらを警戒しているのか、手を出してこない。

 僕の後ろではリューネ母さんが敵の攻撃を防ぐ障壁を作っているため、今の膠着状態は悪くなかった。

 じっと僕は魔族を睨み付けたまま耐えた


「アガアアアァァ!!」


 いつまでも動きのない状況に耐えかねたのか、鱗の魔族を雄叫びをあげ、こちらへ突っ込んできた。

 太く長い右腕を振り上げている。


『受け止めろ』

「わかってる!」


 母さんが障壁を張り直すまでこの場を大きく動けない僕は、少しだけ前に出る。

 翼を使い、その巨体を急降下させてきた魔族を待ち構える。

 すぐにその細かい鱗が生えた腕と僕の剣が交差した。


「さっきよりも固いっ?!」


 受け止める、否。再度切り落とすつもりで振り切った剣が受け止められる。

 かちあった衝撃に僕の体が右へずれるが、なんとか踏み留まる。


『反対側も来るぞ!』

「!?」


 魔族の左腕が振り下ろされようとしているのを視界に入れ、すぐさま剣の位置をずらす。

 相手の懐へ潜り込むように深く踏み込む。

 敵の攻撃が当たらず、しかし僕の必殺の位置。


「くらええぇ!!」

「ガアアアァァアアア!!?」


 しかし、翼を使って急旋回した魔族はまたもや右腕を犠牲にし、僕の間合いから空へ逃げる。

 僕の剣を敵の体ではなく、肩口に切り込み右腕を切り落とすだけに終わる。


『力任せに見えて、高速での移動も出来るのか。あの翼が厄介だな』

「まずは確実に動きを止めないとだめってわけだね」


 またもや空に飛びあがった魔族がこちらを警戒しながら、腕を生え変わらせようとしていた。

 切られた肩口から最初よりも明らかに太そうな腕が生えてくるのが見えた。

 後ろでは母さんの障壁が完成するのを感じた。

 ここから反撃だ。


「先生。力を貸してください。――氷の精霊よ。我の求めに応じて力を示せ!氷河による停滞を此処に!」


 薄い青い色――水色の巨大な魔法陣が空を飛ぶ魔族の下に現れる。

 そこから光を感じた魔族は腕が生え変わるのを待たず。こちらへ向かってきた。

 魔族の大きな口が開き、その奥が一瞬光る。

 村を焼き尽くあいた閃光が放たれようとしていた。

 しかし、ごっそりと僕の魔力を飲み込んだ魔法陣が強く輝き、僕の魔術が完成する。


「――氷王の顎(セルシウスケージ)!!」


 魔法陣上の空間に氷山が現れる。下から順にすべてを凍らせるそれは、魔法陣の直上にいた魔族も例外ではなく、足元から順に、腰も、体も、翼も、腕も、頭も、すべてを氷山が飲み込む。

 氷の檻に囚われ、それ以上進むことが出来なくなった魔族は氷の中で突撃の態勢のまま固まった。


「ハッ!!」


 剣を両手で持ちながら、氷山の中の魔族に向かって全力で振り下ろす。

 氷山ごと、魔族は真っ二つになり、氷山が砕けるのと同時に魔族も粉々に砕けた。

 氷が散らばり、火の粉が舞う中、一瞬で息が白くなった。


「……ふう」


 魔力の大量消費に目の奥、頭が痛む。左手で眼帯のついた左目を押さえる。

 空洞になっている眼孔が酷く痛んだ。

 と、そこへ、ぱちぱちぱちと場違いな拍手の音が広がる。


「素晴らしい魔術、そして剣技ですね。聖気を辿ってみればこれはまた。憎き聖騎士の一団程度と思って来てみれば、このような掘り出し物が見つかるとは。私も運がいい」

「誰だ?」


 闇の中から拍手とともに歩いて出てきたそれは人の形をしていた。その姿は姿勢の良い長身に貴族のような礼服を着ており、幅広のシルクハット帽子。両手には白い手袋をしているが、他はすべて黒尽くめだ。帽子の下には白い髭の蓄えた老人、人間の男のものだ。

 しかし、感じる威圧は先ほどの魔族と同じ、いや、先ほどの魔族以上のものだった。


「これは失礼。名乗り遅れました。私はブリジストン伯爵と申します」

「……伯、爵?」

『魔族の爵位級だ』

「なっ!?でも、人の姿で!?」

「ふふっ、良い反応ですね」


 嬉しそうに人の姿をした魔族が笑う。

 僕の間合いから数歩分外の位置で止まった魔族は、隙だらけに見えて、どこから攻め込めばいいのかわからない。

 圧倒的な強者の威圧を感じた。信じられない魔力の量が魔族から放たれている。何もされていないのに、よろめいて後ろへ下がってしまった。


「私の配下をこうも簡単に殺戮されるとは驚きました。4人も連れていた配下も倒されて、今立っているのは私一人。まさかこんな小さな村でここまでの被害が出るとは想定していませんでした。これは私の失態ですね」

「リキッド、逃げなさい」

「母、さん?」


 振り返ると障壁を張るリューネ母さんが蒼白な顔で震えていた。

 リエルも泣きながら震えている。腰を抜かして座り込んだ彼女の足元は水分によって染みが広がっていた。


「子を守る母ですか。フフフ、どうみても守られているのは母親の方ですが。いやいやしかし、全盛期を過ぎたとはいえ、あの古種族(エルフ)の姫までいるとは今日はなんという喜ばしい日なのでしょうか」

「なんで、人の形をしている!?」


 愉悦を隠しきれていない人の姿をした醜悪な化け物に対して、金切り声で叫んだ。

 僕の醜態を見て、化け物は更に嬉しそうに嗤う。


「そんなことを聞くのでいいのですか?まあすぐに終わっても面白くないですからね。答えてあげましょう。人の形をしていないと、こうしてお前たち人間とまともに話すことが出来ないからですよ。おおっと、魔族の体のままでは発声が出来ないという意味ではなく、お前たち人間が人の姿をしたものとしか対話をしようとしないからです」

「対話?話がしたいのか?」

「ええ。ええ、そうです。お前たちだって家畜に話しかけるでしょう?私だって家畜と話したい。死ぬときはどんな気持ちなのか。蹂躙されるために何十年も生きてきてどんな気持ちなのか。私は知りたい」

「悪趣味だな」

「魔族ですから」


 嬉しそうに、愉しそうにブリジストン伯爵は笑う。


「それにしても、あなたはまだ幼いのに、落ち着いていますね。歴戦の戦士でも私の魔力に当たれば恐怖で震えあがってしまうのに」


 確かに、僕の体も震えていた。

 しかし、さっきまでの戦闘のせいでひどく興奮しているせいか。あまり恐怖は感じていなかった。


「もしや、力の差がわかってしないのでしょうか?」

「そんなに強いのか?」

「ええ。私は強いですよ。この通り」

「がっ!?」


 一瞬のうちに僕のすぐ隣に魔族が立っていた。

 移動するところが見えなかった。

 剣を振るう前に魔族の掌底によって体が10メートルほど吹き飛ぶ。ボールのように何度かバウンドして僕の体が止まった。

 殴られた腹がちぎれたかと思った。腹に受けた衝撃で胃の物が逆流し、倒れたまま吐き出してしまう。

 手に持っていた剣がさっきまで僕が立っていたところに落ちていた。


「さっきよりも反応が鈍いですね」

「う、あっ!?」

「リキッド!!」


 倒れたままの僕の腹を蹴り上げ、浮いたところを再び衝撃が襲い体が吹っ飛ぶ。また先ほどと同じように遠くまで体が転がった。

 僕を呼ぶ母さんの叫ぶ声が遠く聞こえた。


「ふむ。まだ幼いとはさすが聖気を扱っているだけありますね。普通なら体がばらばらになってしまうのですが」


 顎に手を当てて考えるように魔族が俯く。

 体のどこかがおかしくなったのか僕の口からは汚物でなく血が出ていた。

 体中が痛くて、もはやどこが痛いのかわからない。朦朧とする意識の中、しかし意識だけは手放さないように必死で激痛に耐える。


「リキッド!逃げなさい!早く!!」

「先ほどからうるさいですね。黙って障壁の中に中で震えていればいいものを」


 魔族が母さんたちの方を向く。

 人の姿をしていたそれが帽子を右手で外す。そこには二本のねじまがった太い角が生えていた

 顔が人の髭を蓄えた老人のそれから、黒で塗りつぶしたような醜く歪んだ魔族のそれに代わる。

 母さんの方へ数歩近づき、大きく裂けた口が開くとその中が光る。


「やめろおおおっ!!!」


 魔族の口から迸る閃光が一撃で障壁を、そして障壁ごと僕の家族と家を吹き飛ばした。



お読みいただき、ありがとうございました


話が長くなり、しかも難産だったため、昨日中の投稿が間に合いませんでした。

続きは今夜中に投稿します。


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