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学校の死神(改)  作者: 化草野菜子
第七章 存在証明
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18/20

真実

「おっはよう! 雨花」

 

 美奈が元気に教室に入ってきた。

 明日から冬休みだ。

 

「なんか、いつも以上に元気だね?」

 

 雨花が笑いながらそう声をかけると、美奈は相変わらず幸せいっぱいな様子で口を開いた。

 

「うん! じ・つ・は、クリスマスに陽太とデートするんだー!」

 

「クリスマスかあ……」

 

 雨花はぼんやりとつぶやく。

 

「ねえ、せっかく部活も休みなんだから、雨花もデートしようよ! ラオと!」

 

「はあ? なに言って——」

 

 思わず大声を上げてしまい、周りから変な目で見られてしまった。

 雨花は慌てて声を潜める。

 

「なんで付き合ってもないのに、デートなの?」

 

「えー、まだ告ってないの? もうバシッと言っちゃいなよー」

 

 じれったそうにしている美奈に、雨花はブスッとうつむいて吐き捨てるように言った。

 

「無理だって」

 

「あ、もう好きなことは認めるんだ?」

 

 美奈は意地悪く笑う。

 

「あー、もう! なんで美奈って……はあ」

 

 雨花は苛立って溜息をついた。

 

「もう、雨花は少しは自分の気持ち伝えられる勇気、持ちなよ! そのうち離れちゃうかもよ?」

 

「そんなの、わかってるよ! それに……どうせもうすぐ、いなくなるし……」

 

 思わずそうつぶやいてしまった。

 

「……え? もしかして、ラオ、引っ越しちゃうの?」

 

「ああ! う、うん、そうそう!」

 

 雨花は焦ってそういうことにしておいた。

 不意に美奈が雨花に抱きつく。

 

「ごめん……なんも知らなくて……」

 

「や、いいよ」

 

「私、雨花に後悔してほしくなかったの……」

 

「……ありがとう、美奈。確かに、私って弱虫だからね」

 

 悲しげな表情の美奈に、雨花はにっこりと笑いかけた。



 

 放課後、いつものように雨花はラオを待っていた。

 

「よ、根岸!」

 

「あ、ラオ」

 

 雨花が振り向くと、ラオは大鎌を抱え直して、

 

「んじゃ行くか!」

 

 と歩き出した。

 しかし、雨花はその場に立ったまま拳を握りしめると、こう切り出した。

 

「ねえ、明日、ちょっと来てほしいところがあるんだけど……」

 

 ラオはきょとんとして振り返った。

 

「え? どこ? なんで?」

 

「いいから、とにかく明日——」




 

(——裏門のところで待ってるって言ったのに、遅いなあ……)

 

 雨花は寒さに震えながら、部活が終わってみんなが帰った後、一人で学校の裏門に残って待っていた。

 すっかり身体は冷え切り、木枯らしが吹いて白いマフラーがなびく。

 

「うぐっ!」

 

 グイッと不意に後からマフラーを引っ張られ、雨花は呻き声を上げた。

 

「あはは、すまん、すまん」

 

 後ろにラオが笑いながら立っていた。

 やっぱり制服姿だ。

 

「もう……まあ、とにかくついて来て!」

 

 雨花はこぼしかけた文句を呑み込んで、緊張しながら歩き出した。



 

 行き着いた先は——

 

「オレの家……?」

 

 ラオは茫然として立ち尽くしている。

 そんな彼に構わず、雨花は窓から中へ入った。

 そして振り向くと、未だ立ち尽くしたままのラオに声をかける。

 

「ラオも早く!」

 

「……やだ」

 

 ラオは表情を曇らせ、ポケットに手を突っ込んでそっぽを向いた。

 

「お願い! 知りたいでしょ? 本当のこと!」

 

「……本当のこと?」

 

 ラオは眉を潜めて、ゆっくりと窓の方へ近づいた。

 それでも、室内を直視できず、それ以上足を前に出せずにいるようだった。

 雨花がどうしたものかと、ラオの方へ身体を乗り出そうとすると、室内から声がした。

 

「ラオ……久しぶりやな」

 

 ラオは雨花の背後に目を向けて、その場で凍りついた。

 

「……兄ちゃん」

 

「根岸さん……やっぱり来てくれたんやな」

 

「はい、約束しましたから」

 

 ラオの兄は弟を真剣な眼差しで見つめた。

 

「ラオ……父さんを助けてやってくれ」

 

「父さん……? い、今更なに言っとるん——父さんは、オレを——殺そうと、したのに」

 

 ラオは、言葉を絞り出すのがやっとのようだ。

 つっかえながらも吐き捨てるようにそう言うと、兄から顔を背けてしまった。

 

「それはな、確かに父さんの心の弱さのせいもある……けど、それにつけ込んだ悪霊が、父さんをあそこまでおかしくさせたんや!」

 

「え?」

 

 兄の必死の訴えに、ラオは驚いて彼に視線を戻した。

 

「……それ、本当か?」



 

 ラオの兄は、雨花に話したことをラオにも話して聞かせた。

 話を聞き終えたラオは、動揺を隠せずにいる。

 

「辛いのはわかる。でも、父さんを助けてやれるのは、死神であるお前だけなんや……頼む」

 

「わかったけど……」

 

 ラオはうつむいて、固まったまま声を絞り出す。

 

「ちょっと……夕方まで待ってくれ。気持ちの整理したいし、どうせ、まだ死神になれんし……」

 

「わかった……絶対来いよ」



 

 二人は一旦空き家を後にした。

 雨花の家が近くなので、そこで夕方になるのを待つことにした。

 ラオはずっと押し黙ったまま、考え込んでいるようだった。

 雨花はかける言葉が見つからず、それを見守ることしかできなかった……。



 

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