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原爆と竹槍  作者: サイシ
24/93

原爆と竹槍24話

「どうやら、よい話でないようだ。どんな辛い話でも私たちは聞かずにはおれません。どうか話してください」

「分かりました。でもこの話は、綾さんの顔を見た訳ではないので、私が見た女性が、綾さんだと、絶対に言い切れませんので、その心算でお聞きください」

 雪は、有明海で無惨に撃ち殺された女性の話をした、

 その話をしている間、両親は何度も泣き崩れた。

 その都度、雪は話を止めようとしたが両親が最後まで聞きたいと言うので、話した。

 無論、雪とて、涙なくしては語れなかったが、語り終えた雪が言った。

「必ずしも、綾さんとだとは断言できませんので、お気を落とさないでください」

「お心つかいありがとう。でも、この辺りに若い女は、綾しか居ないのです。慰めはいいですから、綾が撃ち殺された所へ連れて行ってくれませんか」

 雪は、花を持った両親を連れて行った。

「無念だろうが、安らかに眠ってくれ」

 老夫婦は、涙を流しながら言うと、花を干潟に投げ込んだ。雪もそれに見習った。

「じゃあこれで」

 雪が別れを告げると。

「どうか、今夜だけでも、我が家に泊まってください」

 老女が涙を流し、懇願するように言った。

 先を急ぐ雪には、その招待は受けられないため断るしかない。

 しかし、断る理由に母親のことを持ち出すと、老夫婦に余計な心配をさせると思い嘘をついた。

「お受けしたいのですが、今夜、鹿島市で会う人がいるのです」

「仕方ないですね。もし、この近くを通るようなことがあれば、お寄りして下さい」

「はい、お伺いします。でも、お気を落とさないでください。もしかしたら、今日にも長女の淑子さんが帰ってくるかもしれませんよ」

「慰めてくれてありがとう」

「じゃあ、お名残惜しいですが、失礼します」

 雪は、老夫婦を後にしたが、後を振り向くと、老夫婦は哀しげな姿で立っていた。

 その姿から、夫婦は、自分も撃たれたいと思っているように見えた。

 しかし、それを阻止する時間はない。

「さあ、鈴子、行くわよ」

 雪は、気持ちを奮い立たせるように言って、自転車を漕いだ。

 鹿島市に入った直後、大きな爆発音が聞こえた。

 何の音かと思いながら走っていると、急に飛行機の音が大きくなってきた。

 雪は急いで竹薮の中へ逃げ込み、飛行機が飛び去るのを確認してから、自転車を走らせたが、すぐ、飛行機が何をしたのかを目にすることとなった。


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