原爆と竹槍25話
一軒の農家が空襲に遭い無残な姿を晒し、爆薬の匂いが立ち籠める中で、怪我をした少女が一人で泣いていた。
(さっきの爆発音は、この家が空襲された時の音だったんだ。どうして、何の武器を持たない者までも殺す飛行機の空軍兵は、異常な人間としか思えない)
雪は、異常者に、少女の家が壊されたと思うと悔しくてならない。
自転車を下りた雪は、鈴子を背負ったまま、少女に駆け寄って言った。
「どうしたの」
少女が泣きながら、破壊された家を指差さした。
「中に誰がいるのね」
「うん」
夢が見ると、爆破跡には、無惨に引き裂かれた人らしき姿があった。
「あつ!」
雪は正視出来ずに、思わず悲鳴を上げた雪は眼を瞑り地面に座り込んだ。
すると、雪の肩に手が触れるものがいる。
鈴子と思って振り向くと、少女の疵だらけの顔があった。
「可哀相に」
雪は疵だらけの少女を力一杯、抱きしめた。
少女は、人の優しさが欲しいのか、痛さを我慢して抱かれて言った。
「あの人は誰なの?」
「母さん」
「お父さんは?」
「居ない」
何故と、尋ねようとしたが、止めた。
なぜなら、今の日本の町、農家や漁師の家に居る者は、夫のような障害者や老人か女、子供だけだった。
雪は一分一秒でも早く広島へ行きたいが、この少女の悲しげな顔をみると、とても、見捨てることができなくなった。
(この子を預ける家は)
涙に曇った眼で人気がないか、探した。
すると、一キロ先に農家らしき家が一軒あった。
雪は鈴子を背負い、少女を抱いて農家を訪れた。
「ごめんください」
何度も声を掛けたが、応じる声がないため、家の中をのぞくと、一人の老婆がいた。
「ごめんください」
応えない様子から、老婆は耳が悪いと判断した。
雪は老婆の所へ行き、大声で挨拶した。
すると、老婆が驚いたように雪を見ていたが、隣に居る少女を見て言った。
「どうしたの、静子ちゃん!」
老婆は驚きの声を上げた。
「この子を知っているのですか」




