第501話・大成長! 執行者テオドール
「おいおいマジ!? 君こんな強かったっけ!?」
――――大天使ガブリエルVS執行者テオドール。
第4エリアでは実力に明確な差があった2人だが、現在の戦況は当時と真逆。
激しい魔力を纏ったテオドールが、両手を空中で突き出した。
「40.6センチ――――『二連装・ショックカノン』!!!」
「ッ!!」
とっさに回避機動。
流れて行ったショックカノンは、ビルを一瞬で粉砕してしまった。
前回の戦いでは、まともに受けても大したダメージにはならなかった。
だが今は違う。
食らえば致命傷は不可避、明らかに威力が向上していた。
「さっきから避けてばかりですね、第4エリアの時みたいにワザと受けてくれないのですか?」
幼い顔が、挑発気味に笑う。
ガブリエル自身、不思議でしょうがなかった。
「君、この数週間でなにがあったのさ? 明らかに強くなってない?」
「おや、知りたいですか?」
ニッと笑ったテオドールが、瞬時に姿を消す。
否、目で捉えられない速度で肉薄してきたのだ。
「ヤ〇ト新章の本予告を見たからです!!!」
接近した自称”宇宙戦艦の主砲系女子”は、アニメから得た知見を元に新たな魔法を開発した。
「魔力回路、臨界稼働!!!」
テオドールの銀髪が、淡さを飛び越えて一気に光り輝いた。
魔力出力が爆発的に上昇し、打ち込まれた拳の威力も通常時の比ではない。
「ぐぉあああッ!!?」
吹っ飛んだガブリエルは、基地を数百メートル転がった。
これこそ、彼女が対格上用に開発した新技だ。
「私の中にある魔力回路を、一瞬だけ臨界状態まで持っていく。負担は大きいですが……」
眼前に降り立つ。
血を流しながら起き上がるガブリエルを見て、彼女は不敵に笑う。
「それなりに見返りはありますね」
「ふんっ、大層な名前だけどやってることは一時的なオーバークロック。仕組みさえわかれば脅威じゃないよ」
「おや、いつわたしの芸がこれだけだと思いましたか?」
「ッ!!」
この数週間、執行者テオドールの生活は怠惰の極みだった。
自由時間さえあればアニメかマンガをずっと見て、たまにタブレットでソシャゲ。
普通の人間であればヒッキーと言われても良いレベルだが、これが功を奏した。
「第4エリアでは貴方の硬さに押し負けましたが、それももう通じません」
もう知っての通り、テオドールの魔法は日本のカルチャーに影響を強く受けている。
ただの消費行動も、彼女にとっては新技開発の勉強となっていたのだ。
「よっ」
飛び上がったテオドールは光の剣を3本出現させると、先端を大天使に向ける。
「『波動カートリッジ・ソード』! 発射!!!」
底部で炸裂魔法を発生させ、爆炎と共に剣を撃ち出す。
ガブリエルは即座に防御の体勢を取った。
「『イージス・ディフェンス』!!」
第4エリアでは、全力のショックカノンすら軽く防いだ魔法。
案の定、光の剣は防壁にアッサリ突き刺さってしまう。
爆発の威力で速度を稼いでの貫通を狙ったのだろうが、所詮は女児の小細工。
笑止千万と思った瞬間だった。
「なっ……にぃっ!??」
――――ギャリギャリギャリッ――――!!!
剣の勢いは全く止まっていなかった。
高速回転しながら、防御魔法を削り始めたのだ。
「魔力回路、臨界稼働!!!」
再びテオドールの銀髪がまぶしく輝く。
直後に、刺さっていた剣へ彼女の魔力が共鳴。
臨界状態の魔力を通して、ガブリエルの防御魔法に対して逆の振動波を発生。
結果――――
「ぐぅお!!!」
相殺された防御魔法に穴が開き、ガブリエルの体へ突き刺さった。
鮮血がボタボタと流れ落ち、あの硬かった宿敵へ大ダメージを与える。
「第4エリアであれだけ貴方にボコられたのです、対策を複数用意してメタるのは当然では?」
「ッ……!!」
剣を抜き、すぐさま治癒魔法で傷を塞ぐ。
だが、この大ダメージをそう何度も回復はできない。
「錠前が出るまでもありません、そうですね」
数歩前に出たテオドールは、笑みを隠さなかった。
「別にもうここで倒してしまって構わないでしょう」




