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~マンション(共同住宅)の物語 其の1 「体内のマグマ」
安仁屋さんが外に出かけると、マンションでは
有名人なのですれ違う人が標的にされないよう
愛想笑いでそそくさとすれ違った。
安仁屋さんは、もう、その辺りは気にしなく
なっていた。
昔のおどおどと怯える安仁屋さんではなくなって
いた。
包丁を持って亭主を追い、逃げ込んだポリボックス
を襲撃してから、もう弱く震える安仁屋さんでは
なかった。
今は、あらたな標的を、自ら作り始めていた。
実際に地域や、警察から観察はされている。
それを敏感に感じる安仁屋さんは、それらを
拡大して、イメージを膨らましてしまっていた。
「監視されている…。また私を虐めようと
している。」
安仁屋さんの被害妄想が加速しようとしていた。
マンションの植栽にマトリックスのような
黒いスーツに黒いサングラスの男がいるように
見えた。
そう思うと、部屋の中にいても、何度も何度も
カーテンを開け、外を見た。
電話が鳴る。
スパイかと思った。
マンション内の防犯カメラが全て自分を録って
いるように思えた。
安仁屋さんの体内のマグマが沸騰し始めていた。




