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~マンション(共同住宅)の物語 其の1 「KITAKU」
安仁屋さんがタクシーに乗ってマンション前に降り立った。
あれほど仲が良かった沖縄カップルの夫婦が、今や、妻に
包丁で追い回され、派出所に逃げ込んだ旦那は、もう、
安仁屋さんに会う気力を失っていた。
今は、風呂トイレなし四畳半の家賃2万円/月の木造アパート
を借りて住んでいた。
安仁屋さんは精神科のある病院に半月入院し、退院してきた。
身元引受人は沖縄から実母が来て手続きをしてくれた。
安仁屋さん退院~マンション帰還は、すぐにマンション自警団
を自負する副理事長江川から、管理会社井川のもとに知らされた。
「知りたくなかった。江川も遭遇するなよ。」
井川は思った。
2日だけ実母が一緒にマンションに泊まるようであった。
安仁屋さんは久しぶりの我が家に、旦那のいない寂しさも
あったが、それ以上に自分の隠れ家に戻れたような安心感
にしばし浸っていた。
そんな頃、副理事長江川の夫人(実質当人が副理事長)が、
マンション内の自警夫人部隊を招集していた。
「安仁屋帰還」は、瞬く間にマンションやや近隣小学校の
親に広まった…。




