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マンション(共同住宅)の物語 其の1 「井川の苦悩」

安仁屋さんが派出所を襲撃した話は、マンション担当者の井川の耳にも管理員からの連絡で入っていた。

担当者としては、24時間365日、緊張が途切れることが無い業務の中で、「お願いだから厄介なことを起こさないで!」と日々祈りながら、時間に追われ、締め切りに追われ、働いている。


担当者一人で15組合は当たり前。

土日祝の半分以上は、当たり前のように理事会、総会そして呼び出しなどで潰れる。


井川に彼女はいない。

大学を卒業して、就職して、担当物件を持ち、デートが潰れ、潰れ、潰れ…。

やがて当然に破局がやってきた。


その後、女性と会っていても、食事をしていても、仲良くなって深くなろうとしても、つまらない、どうでもいいような電話で邪魔され、雰囲気も壊れ、しらけ、破談して行った。


毎月毎月世界では類を見ない細かさで、月次なるマンション管理レポートを作成し、理事会資料や、その議事録、総会の議案書や、その議事録、重要事項説明書、重要事項調査書、委託契約書、管理事務報告書etc.どれほど作成する書類が多いことか。


それだけでも大変なのに、漏水、事故、ガラス破損、住民間トラブル、クレーマー、モンスタークレーマーと、時間が無くてピリピリしているときのそれらは、担当者を絶望の縁に追いやる。


安仁屋さんが、マンションに戻ってきたら、また、対応に追われそうだなと覚悟するのであった。


生まれ変わったら、二度とこんな仕事に就くものか!

井川の心の中の口癖であった。


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