~マンション(共同住宅)の物語 其の1 「モンスター役員からの圧力」
マンション管理会社の担当者井川は、西宮の大型物件である当マンションの役員、特に副理事長である江川からの度重なる連絡に、内心うんざりしていた。
土日祝昼夜関係なく、携帯に直接連絡が入ってくる。
管理員より、安仁屋さんが室内で奇声を上げたリ、つい先日は窓からママ友たちに向かって暴言を吐く奇行については連絡を受けていた。
次回の理事会にて「特定居住者の問題行動について」と銘を打ち、議案化しないと江川副理事長から「一体この一カ月何を巡回してきたの!?」等指摘される。
そう思いながら、来る日も来る日も圧し掛かってくる担当物件の問題や、自然災害の保険申請等で、本当に心身休まることなく、半ば何も考えず惰性で動けるように心を守っていた。
そんなときだった。
「井川さん、大事件!うちの娘の眼球に、安仁屋さんの吐いた痰が落ちたの!直ぐに眼下に行ったけどとても待たされ、その間にも失明しないかと心配で心配でならなかったわ。私は安仁屋さんを赦しません。このような身体を脅かす行為についての対処法を明日までに調べて、書面で届けて頂戴。いいわね!」と、一方的に捲し立て、江川は電話を切った。
「明日までに、ヤングチームの取り組み発表のパワーポイントを作らないといけないときに、明日までにだと…。」と、少し周りに聞こえるように、井川は嘆いた。
江川のこと、理事長に報告済で、1を10に、10を100に誇張して眼球が腐りそうになったとでも言っていることだろうと思った。
理事長は77歳の高齢男性。くじ引きで理事長になった。
江川が理事長に立候補したが、前回江川が理事長をしたときのマンション内の軋轢勃発を知っている古参の居住者が、「理事長未経験者の方々で互選ください。」と発言し、多くの役員候補がそれに賛同した。
結果的に、その高齢者が理事長になったものの、「わしは何もできひん。わかりはしまへん。」と大阪出身色を醸し出し、他の女性役員からは、毛嫌いされた。
副理事長に立候補し、認めさせた江川の傀儡理事会となっているのが現状であった。
その江川からの指示命令は、当マンションからの指示に等しかった。
井川は安仁屋さんの奇行が憎かった。




